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3幼なじみ
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未来は、三人を家の外まで見送りに出た。
「じゃ、またね。お先にー」
美波がチラっと翔太を見ると、恵理の腕を取って足早に帰っていく。
「美波、完全にハルちゃんの話、信じているよ。まったくもう」
未来は、大げさにため息を漏らした。
翔太がどんな顔をしているか気になったが、見ることができずに、帰っていく美波と恵理の後ろ姿を見つめる。
二人の姿が向こうの角に消えても、翔太が帰る気配はない。
沈黙に耐えられなくて、未来は何か話すことがないか探した。その時、はっと気がついた。
「そういえばさ。翔君は、昔からハルちゃんのこと、ハルちゃんって呼んでいるよね」
「あぁ、そうだね。おまえのじいちゃんが、ハルちゃんって呼んでいるの聞いて、真似してたんだ」
「またおまえに戻ってる」
未来がにらみつけると、
「何が?」
と、翔太は何のことか気がついていないようだ。
「じゃぁな」
もう少し話すかと思っていたのに、翔太が急に歩き出したので、未来はふいに寂しくなった。
行かないで。心で念じたら、本当に翔太が止まった。
前を向いたまま、翔太が、
「あの話」
と言った。
夕日が翔太の背中を染めあげている。
「何の話?」
「ハルちゃんが言ったこと、俺、覚えているからな」
「何のこと?」
未来は心臓が飛び出さないように、胸を押さえた。
トクトクトク、と手の平が音を感じる。
また自分だけ勘違い、だなんてことのないようにもう一度聞いた。
「何のこと?」
「あの約束、今でも有効だからな」
心臓が少し飛び出した。手の平で、ぐいっと胸を押し返す。
未来は何も答えられない。何と答えていいのかわからない。
「おまえだって、約束したんだからな。忘れんなよ」
翔太は、一度も振り返らずにそう言うと、まっすぐ歩き出した。
――わたしも、おおきくなったら翔君のお嫁さんになる!
まだ幼い自分の声が、耳の中でこだまする。
涙が、出そうだった。目を瞑って、堪えた。
「じゃ、またね。お先にー」
美波がチラっと翔太を見ると、恵理の腕を取って足早に帰っていく。
「美波、完全にハルちゃんの話、信じているよ。まったくもう」
未来は、大げさにため息を漏らした。
翔太がどんな顔をしているか気になったが、見ることができずに、帰っていく美波と恵理の後ろ姿を見つめる。
二人の姿が向こうの角に消えても、翔太が帰る気配はない。
沈黙に耐えられなくて、未来は何か話すことがないか探した。その時、はっと気がついた。
「そういえばさ。翔君は、昔からハルちゃんのこと、ハルちゃんって呼んでいるよね」
「あぁ、そうだね。おまえのじいちゃんが、ハルちゃんって呼んでいるの聞いて、真似してたんだ」
「またおまえに戻ってる」
未来がにらみつけると、
「何が?」
と、翔太は何のことか気がついていないようだ。
「じゃぁな」
もう少し話すかと思っていたのに、翔太が急に歩き出したので、未来はふいに寂しくなった。
行かないで。心で念じたら、本当に翔太が止まった。
前を向いたまま、翔太が、
「あの話」
と言った。
夕日が翔太の背中を染めあげている。
「何の話?」
「ハルちゃんが言ったこと、俺、覚えているからな」
「何のこと?」
未来は心臓が飛び出さないように、胸を押さえた。
トクトクトク、と手の平が音を感じる。
また自分だけ勘違い、だなんてことのないようにもう一度聞いた。
「何のこと?」
「あの約束、今でも有効だからな」
心臓が少し飛び出した。手の平で、ぐいっと胸を押し返す。
未来は何も答えられない。何と答えていいのかわからない。
「おまえだって、約束したんだからな。忘れんなよ」
翔太は、一度も振り返らずにそう言うと、まっすぐ歩き出した。
――わたしも、おおきくなったら翔君のお嫁さんになる!
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涙が、出そうだった。目を瞑って、堪えた。
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