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2友だち
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昇降口を出ようとした時だ。
「未来。よかった、間に合った。ねぇ、帰ったら、駅前にアイス食べに行かない?」
息を切らした美波が追いかけてきた。
「告白は?」
「断った」
「もてる女はつらいねぇ」
「アイス、食べに行くでしょ?」
未来はどうやって断ろうか、返事に困った。
隣の恵理を見る。
「あれ、もしかして、恵理ちゃんと帰るの?」
美波が、未来の視線に気がついて言った。
「うん、まぁ……」
「じゃ、家帰って着替えたら、恵理ちゃんもアイス食べに行こうよ。駅前に出来た新しいお店、すごくおいしいの。最近のわたしたちのお気に入りなんだよね?」
未来はうなずきながら、断る理由を探していた。
嘘をつくのは、親友の美波を裏切るような気がして、なかなかうまい言い訳が思いつかない。
その時、恵理が口を開いた。
「わたし、今日は未来ちゃんのお家に伺おうかと思っているの。ちょっと勉強、教えてもらいたいところがあって」
その言い訳はありえない。未来は、雲行きが怪しくなるのを止められない、と予感した。
「未来に勉強を? 恵理ちゃんが? 逆でしょ、逆」
「そうそう、わたしが恵理ちゃんに教えてもらうんだよ」
「学期末テスト終わったばかりなのに?」
「そうだよ。早いうちから、受験勉強でも始めようかと……」
未来の声がうわずった。
「未来が勉強するなんて……。わたしも、さっさと帰って勉強しよっと」
美波が、背中を向け立ち去ろうとした。
未来はほっと肩をなでおろす。
その時美波が、クルっとこっちを振り返った。
「って、そんなわけないでしょ。絶対あやしいー。二人、わたしに何か隠しているでしょ?」
美波が大きな目に、ぐっと力を入れて未来をにらみつけてきた。
一歩一歩、踏みしめるようにして近づいてくる。
未来は思わず後ずさりした。
「みーらいっ!」
目の前で美少女が、ドアップになる。
きれい。こんな時でも、未来は美波に見とれてしまった。もう、美波に隠し通すのは無理だ。
「わかった、わかった。話すから」
未来は、春子が友だちを連れてきて欲しがっていることを美波に話した。
「それで?」
一通り話を聞き終わると、美波が言った。
「それでって?」
「何でわたしを誘わないの? 何で恵理ちゃんだけなのよ」
美波は、食べ物をほおばるリスのように、ぷぅっと頬を膨らませた。
「ごめん、ほら、美波すぐ鏡見るじゃない?」
あと、余計なこと喋っちゃうかもだし。思ったが、その言葉は、さすがに言わなかった。美波とケンカするつもりはない。
「見ないよ。見ないでって言われれば、見ないに決まってるじゃん」
「でも、今日は友だち連れて行くの初めてだから、とりあえず恵理ちゃんだけ来てもらって、様子を見たいんだ。それで、何も問題なさそうだったら、次は美波にも来てもらいたい」
そこまで言って、美波の顔が不機嫌なままだったから、
「あの、ハルちゃん色々と難しいからさ。何気ない一言にすごく怒っちゃったりするし」
と、付け加えた。
「あーぁ。わたしたちの友情なんて、そんなものか。わたし、未来のこと親友だと思っていたのに。全然信頼されていないんだね」
美波が目に涙を浮かべた。ドラマのワンシーンのように、すーっとキレイな涙が頬を伝う。
未来は、みぞおちがズキっと痛んだ。罪悪感に襲われる。
「わたしだって、美波のこと親友だと思っているよ」
「じゃ、もちろん、わたしも連れていくよね? 未来の家」
美波が、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「あー! もう、今の涙、もしかして演技?」
「あたり前じゃない。大女優、美波さんをなめんなよ」
そう言いながら、美波が未来の頭をはたいた。
「びっくりしたー」
大きなため息とともに、恵理が言う。
「いつも騙されているの、わたし」
未来は、目を丸くしている恵理に肩をすくめてみせた。
「絶対、ルール守ってね」
未来は美波に念押しした。
「わかってるって」
「未来。よかった、間に合った。ねぇ、帰ったら、駅前にアイス食べに行かない?」
息を切らした美波が追いかけてきた。
「告白は?」
「断った」
「もてる女はつらいねぇ」
「アイス、食べに行くでしょ?」
未来はどうやって断ろうか、返事に困った。
隣の恵理を見る。
「あれ、もしかして、恵理ちゃんと帰るの?」
美波が、未来の視線に気がついて言った。
「うん、まぁ……」
「じゃ、家帰って着替えたら、恵理ちゃんもアイス食べに行こうよ。駅前に出来た新しいお店、すごくおいしいの。最近のわたしたちのお気に入りなんだよね?」
未来はうなずきながら、断る理由を探していた。
嘘をつくのは、親友の美波を裏切るような気がして、なかなかうまい言い訳が思いつかない。
その時、恵理が口を開いた。
「わたし、今日は未来ちゃんのお家に伺おうかと思っているの。ちょっと勉強、教えてもらいたいところがあって」
その言い訳はありえない。未来は、雲行きが怪しくなるのを止められない、と予感した。
「未来に勉強を? 恵理ちゃんが? 逆でしょ、逆」
「そうそう、わたしが恵理ちゃんに教えてもらうんだよ」
「学期末テスト終わったばかりなのに?」
「そうだよ。早いうちから、受験勉強でも始めようかと……」
未来の声がうわずった。
「未来が勉強するなんて……。わたしも、さっさと帰って勉強しよっと」
美波が、背中を向け立ち去ろうとした。
未来はほっと肩をなでおろす。
その時美波が、クルっとこっちを振り返った。
「って、そんなわけないでしょ。絶対あやしいー。二人、わたしに何か隠しているでしょ?」
美波が大きな目に、ぐっと力を入れて未来をにらみつけてきた。
一歩一歩、踏みしめるようにして近づいてくる。
未来は思わず後ずさりした。
「みーらいっ!」
目の前で美少女が、ドアップになる。
きれい。こんな時でも、未来は美波に見とれてしまった。もう、美波に隠し通すのは無理だ。
「わかった、わかった。話すから」
未来は、春子が友だちを連れてきて欲しがっていることを美波に話した。
「それで?」
一通り話を聞き終わると、美波が言った。
「それでって?」
「何でわたしを誘わないの? 何で恵理ちゃんだけなのよ」
美波は、食べ物をほおばるリスのように、ぷぅっと頬を膨らませた。
「ごめん、ほら、美波すぐ鏡見るじゃない?」
あと、余計なこと喋っちゃうかもだし。思ったが、その言葉は、さすがに言わなかった。美波とケンカするつもりはない。
「見ないよ。見ないでって言われれば、見ないに決まってるじゃん」
「でも、今日は友だち連れて行くの初めてだから、とりあえず恵理ちゃんだけ来てもらって、様子を見たいんだ。それで、何も問題なさそうだったら、次は美波にも来てもらいたい」
そこまで言って、美波の顔が不機嫌なままだったから、
「あの、ハルちゃん色々と難しいからさ。何気ない一言にすごく怒っちゃったりするし」
と、付け加えた。
「あーぁ。わたしたちの友情なんて、そんなものか。わたし、未来のこと親友だと思っていたのに。全然信頼されていないんだね」
美波が目に涙を浮かべた。ドラマのワンシーンのように、すーっとキレイな涙が頬を伝う。
未来は、みぞおちがズキっと痛んだ。罪悪感に襲われる。
「わたしだって、美波のこと親友だと思っているよ」
「じゃ、もちろん、わたしも連れていくよね? 未来の家」
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「あー! もう、今の涙、もしかして演技?」
「あたり前じゃない。大女優、美波さんをなめんなよ」
そう言いながら、美波が未来の頭をはたいた。
「びっくりしたー」
大きなため息とともに、恵理が言う。
「いつも騙されているの、わたし」
未来は、目を丸くしている恵理に肩をすくめてみせた。
「絶対、ルール守ってね」
未来は美波に念押しした。
「わかってるって」
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