11 / 45
2友だち
2-3
しおりを挟む
昇降口を出ようとした時だ。
「未来。よかった、間に合った。ねぇ、帰ったら、駅前にアイス食べに行かない?」
息を切らした美波が追いかけてきた。
「告白は?」
「断った」
「もてる女はつらいねぇ」
「アイス、食べに行くでしょ?」
未来はどうやって断ろうか、返事に困った。
隣の恵理を見る。
「あれ、もしかして、恵理ちゃんと帰るの?」
美波が、未来の視線に気がついて言った。
「うん、まぁ……」
「じゃ、家帰って着替えたら、恵理ちゃんもアイス食べに行こうよ。駅前に出来た新しいお店、すごくおいしいの。最近のわたしたちのお気に入りなんだよね?」
未来はうなずきながら、断る理由を探していた。
嘘をつくのは、親友の美波を裏切るような気がして、なかなかうまい言い訳が思いつかない。
その時、恵理が口を開いた。
「わたし、今日は未来ちゃんのお家に伺おうかと思っているの。ちょっと勉強、教えてもらいたいところがあって」
その言い訳はありえない。未来は、雲行きが怪しくなるのを止められない、と予感した。
「未来に勉強を? 恵理ちゃんが? 逆でしょ、逆」
「そうそう、わたしが恵理ちゃんに教えてもらうんだよ」
「学期末テスト終わったばかりなのに?」
「そうだよ。早いうちから、受験勉強でも始めようかと……」
未来の声がうわずった。
「未来が勉強するなんて……。わたしも、さっさと帰って勉強しよっと」
美波が、背中を向け立ち去ろうとした。
未来はほっと肩をなでおろす。
その時美波が、クルっとこっちを振り返った。
「って、そんなわけないでしょ。絶対あやしいー。二人、わたしに何か隠しているでしょ?」
美波が大きな目に、ぐっと力を入れて未来をにらみつけてきた。
一歩一歩、踏みしめるようにして近づいてくる。
未来は思わず後ずさりした。
「みーらいっ!」
目の前で美少女が、ドアップになる。
きれい。こんな時でも、未来は美波に見とれてしまった。もう、美波に隠し通すのは無理だ。
「わかった、わかった。話すから」
未来は、春子が友だちを連れてきて欲しがっていることを美波に話した。
「それで?」
一通り話を聞き終わると、美波が言った。
「それでって?」
「何でわたしを誘わないの? 何で恵理ちゃんだけなのよ」
美波は、食べ物をほおばるリスのように、ぷぅっと頬を膨らませた。
「ごめん、ほら、美波すぐ鏡見るじゃない?」
あと、余計なこと喋っちゃうかもだし。思ったが、その言葉は、さすがに言わなかった。美波とケンカするつもりはない。
「見ないよ。見ないでって言われれば、見ないに決まってるじゃん」
「でも、今日は友だち連れて行くの初めてだから、とりあえず恵理ちゃんだけ来てもらって、様子を見たいんだ。それで、何も問題なさそうだったら、次は美波にも来てもらいたい」
そこまで言って、美波の顔が不機嫌なままだったから、
「あの、ハルちゃん色々と難しいからさ。何気ない一言にすごく怒っちゃったりするし」
と、付け加えた。
「あーぁ。わたしたちの友情なんて、そんなものか。わたし、未来のこと親友だと思っていたのに。全然信頼されていないんだね」
美波が目に涙を浮かべた。ドラマのワンシーンのように、すーっとキレイな涙が頬を伝う。
未来は、みぞおちがズキっと痛んだ。罪悪感に襲われる。
「わたしだって、美波のこと親友だと思っているよ」
「じゃ、もちろん、わたしも連れていくよね? 未来の家」
美波が、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「あー! もう、今の涙、もしかして演技?」
「あたり前じゃない。大女優、美波さんをなめんなよ」
そう言いながら、美波が未来の頭をはたいた。
「びっくりしたー」
大きなため息とともに、恵理が言う。
「いつも騙されているの、わたし」
未来は、目を丸くしている恵理に肩をすくめてみせた。
「絶対、ルール守ってね」
未来は美波に念押しした。
「わかってるって」
「未来。よかった、間に合った。ねぇ、帰ったら、駅前にアイス食べに行かない?」
息を切らした美波が追いかけてきた。
「告白は?」
「断った」
「もてる女はつらいねぇ」
「アイス、食べに行くでしょ?」
未来はどうやって断ろうか、返事に困った。
隣の恵理を見る。
「あれ、もしかして、恵理ちゃんと帰るの?」
美波が、未来の視線に気がついて言った。
「うん、まぁ……」
「じゃ、家帰って着替えたら、恵理ちゃんもアイス食べに行こうよ。駅前に出来た新しいお店、すごくおいしいの。最近のわたしたちのお気に入りなんだよね?」
未来はうなずきながら、断る理由を探していた。
嘘をつくのは、親友の美波を裏切るような気がして、なかなかうまい言い訳が思いつかない。
その時、恵理が口を開いた。
「わたし、今日は未来ちゃんのお家に伺おうかと思っているの。ちょっと勉強、教えてもらいたいところがあって」
その言い訳はありえない。未来は、雲行きが怪しくなるのを止められない、と予感した。
「未来に勉強を? 恵理ちゃんが? 逆でしょ、逆」
「そうそう、わたしが恵理ちゃんに教えてもらうんだよ」
「学期末テスト終わったばかりなのに?」
「そうだよ。早いうちから、受験勉強でも始めようかと……」
未来の声がうわずった。
「未来が勉強するなんて……。わたしも、さっさと帰って勉強しよっと」
美波が、背中を向け立ち去ろうとした。
未来はほっと肩をなでおろす。
その時美波が、クルっとこっちを振り返った。
「って、そんなわけないでしょ。絶対あやしいー。二人、わたしに何か隠しているでしょ?」
美波が大きな目に、ぐっと力を入れて未来をにらみつけてきた。
一歩一歩、踏みしめるようにして近づいてくる。
未来は思わず後ずさりした。
「みーらいっ!」
目の前で美少女が、ドアップになる。
きれい。こんな時でも、未来は美波に見とれてしまった。もう、美波に隠し通すのは無理だ。
「わかった、わかった。話すから」
未来は、春子が友だちを連れてきて欲しがっていることを美波に話した。
「それで?」
一通り話を聞き終わると、美波が言った。
「それでって?」
「何でわたしを誘わないの? 何で恵理ちゃんだけなのよ」
美波は、食べ物をほおばるリスのように、ぷぅっと頬を膨らませた。
「ごめん、ほら、美波すぐ鏡見るじゃない?」
あと、余計なこと喋っちゃうかもだし。思ったが、その言葉は、さすがに言わなかった。美波とケンカするつもりはない。
「見ないよ。見ないでって言われれば、見ないに決まってるじゃん」
「でも、今日は友だち連れて行くの初めてだから、とりあえず恵理ちゃんだけ来てもらって、様子を見たいんだ。それで、何も問題なさそうだったら、次は美波にも来てもらいたい」
そこまで言って、美波の顔が不機嫌なままだったから、
「あの、ハルちゃん色々と難しいからさ。何気ない一言にすごく怒っちゃったりするし」
と、付け加えた。
「あーぁ。わたしたちの友情なんて、そんなものか。わたし、未来のこと親友だと思っていたのに。全然信頼されていないんだね」
美波が目に涙を浮かべた。ドラマのワンシーンのように、すーっとキレイな涙が頬を伝う。
未来は、みぞおちがズキっと痛んだ。罪悪感に襲われる。
「わたしだって、美波のこと親友だと思っているよ」
「じゃ、もちろん、わたしも連れていくよね? 未来の家」
美波が、いたずらっぽい笑顔を浮かべた。
「あー! もう、今の涙、もしかして演技?」
「あたり前じゃない。大女優、美波さんをなめんなよ」
そう言いながら、美波が未来の頭をはたいた。
「びっくりしたー」
大きなため息とともに、恵理が言う。
「いつも騙されているの、わたし」
未来は、目を丸くしている恵理に肩をすくめてみせた。
「絶対、ルール守ってね」
未来は美波に念押しした。
「わかってるって」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
あの日の後悔と懺悔とそれと
ばってんがー森
ライト文芸
普通の高校生「二木 真人(にき まこと)」が母親の病気により、日常生活が180°変わってしまう。そんな中、家に座敷童子と思われる女の子が現れる。名は「ザシコ」。彼女を中心に様々な人の心の闇を強制的に解決することになる。「介護への苦悩」、「自分の無力さ」、それらを経て「マコ」は成長していく。そして、「ザシコ」の秘密とは……?実体験と妄想を掛け合わせたごちゃ混ぜストーリーです!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる