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第四章 ドラゴンハンター04 本田敦也
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「やばい。もう6時過ぎだ」
ドラゴン研究所を後にした敦也は、家に向かって走っていた。圭吾と祐太、美鈴の三人も一緒だ。一人でいいと断ったのに、結局みんなついてきてしまった。
ドラゴンの入ったビンが揺れて、胸に何度も当たる。1秒でも早く、身守りドラゴンを手に入れたかったが、やはり時間がかかってしまった。
「隼人、待ってろよ。すぐに助けてやるからな」
敦也は走るスピードを上げた。
「ただいま」
玄関を開けると、中からお母さんが飛び出してきた。
「遅かったわね。隼人は?」
「えっ、隼人、家にいないの?」
敦也の言葉に、お母さんの顔が青ざめる
「敦也と一緒じゃなかったの?」
敦也は首を横に振った。
「公園に行ってみる」
敦也はすぐに玄関を飛び出した。
「わたしたちも一緒に行く」
玄関の外で話を聞いていた三人も、後をついてきた。
◇
夕方といっても、外はまだ明るい。だが、青い空には薄くオレンジ色が混ざってきている。もう30分もすれば、だいぶ暗くなるだろう。
敦也たちが公園を見回していると、少し遅れてお母さんが到着した。息を切らしている。
「誰もいないね」
敦也がつぶやくと、お母さんが泣きそうな顔をした。
「どうしよう。まさか隼人、誘拐されたんじゃ……」
お母さんは今にもその場に倒れそうだ。
「まさか……」
敦也は家の前にいた、あやしい二人組の男を思い出してぞっとした。
「お母さんは、家に帰って、友だちの家に電話して。ぼくはもう少し外を探すから」
「ぼくたちも一緒に探します」
圭吾たちにありがとうと言うのが精いっぱいの様子で、お母さんは家に戻っていった。
「ぼくが学校から帰った時、あやしい男が二人、ぼくの家をジロジロ見ていたんだ。もしかしたらあいつらかもしれない」
「どんな格好してた?」
祐太が身を乗り出す。敦也が説明すると、祐太は考えこむように腕を組んだ。
「誘拐されたって、まだ決まったわけじゃないでしょ?」
美鈴が言うと、
「でも、その可能性は高い」
と、祐太が言った。
「どういうこと?」
「その二人組、オレを誘拐しようとしたやつらと同じかもしれない」
「けど、祐太はドラゴンに寄生されてなんかいなかっただろう?」
そう言う敦也に、祐太は首を横に振った。
「その時オレ、寄生されていたんだ」
「えっ、どういうこと? ドラゴンが見える人には寄生しないんじゃないの?」
美鈴が、祐太につめよる。
「それが、さぁ」
祐太が助けを求めるように、圭吾を見る。
「自分で言えよ」
圭吾が先をうながした。
「オレ、実は最初、ドラゴンが見えるって嘘ついてたんだ。それで田中さんに、ドラゴン研究所の8階に連れて行ってもらったんだ」
「マジで?」
「そこで寄生されちゃって、その帰りに全身黒ずくめの男二人組に誘拐されそうになったんだ」
「大丈夫だったのか?」
敦也が聞くと、祐太はうなずいた。
「圭吾が助けに来てくれて二人組は逃げて行ったし、おまけにドラゴンも捕まえてくれて、な?」
祐太が圭吾に顔を向ける。
「オレに寄生してたのが、ファイなんだけど」
祐太は、胸に下げているビンを持ち上げた。
「圭吾が捕まえたとたんに、本当に見えるようになったんだ」
「ぼくも、隼人くんを誘拐したのは、その二人組の可能性が高いと思う」
圭吾がみんなを見回した。
「隼人くんが、ドラゴンに寄生されたせいで誘拐されたのなら、探し出す方法が一つある」
祐太が震える声で言った。
「どうやって隼人くんを探し出すつもりなの?」
美鈴が首をかしげた。
「オレが寄生されたフリして、おとりになる」
意を決したように祐太は言った。
「どうやって?」
「下敷き使って静電気でも起こせばだませるだろ、そんなやつらくらい」
「静電気でだませるとしても、そんなにうまく犯人に見つけてもらえるかなぁ」
敦也は首をひねった。
「わかった。犯人が行きそうな場所でやればいいのよ」
美鈴が手を叩く。
「心当たりがあるの?」
圭吾がたずねる。
「うん。ルイちゃんと一緒の塾の子が行方不明になったって言ったでしょ? 塾の帰りにいなくなったらしいの。多分、犯人は子どもたちが集まる場所で待ち伏せして、ドラゴンに寄生されている子を探しているんじゃないかな」
「塾の場所、わかる?」
圭吾が聞くと、美鈴がうなずいた。
ドラゴン研究所を後にした敦也は、家に向かって走っていた。圭吾と祐太、美鈴の三人も一緒だ。一人でいいと断ったのに、結局みんなついてきてしまった。
ドラゴンの入ったビンが揺れて、胸に何度も当たる。1秒でも早く、身守りドラゴンを手に入れたかったが、やはり時間がかかってしまった。
「隼人、待ってろよ。すぐに助けてやるからな」
敦也は走るスピードを上げた。
「ただいま」
玄関を開けると、中からお母さんが飛び出してきた。
「遅かったわね。隼人は?」
「えっ、隼人、家にいないの?」
敦也の言葉に、お母さんの顔が青ざめる
「敦也と一緒じゃなかったの?」
敦也は首を横に振った。
「公園に行ってみる」
敦也はすぐに玄関を飛び出した。
「わたしたちも一緒に行く」
玄関の外で話を聞いていた三人も、後をついてきた。
◇
夕方といっても、外はまだ明るい。だが、青い空には薄くオレンジ色が混ざってきている。もう30分もすれば、だいぶ暗くなるだろう。
敦也たちが公園を見回していると、少し遅れてお母さんが到着した。息を切らしている。
「誰もいないね」
敦也がつぶやくと、お母さんが泣きそうな顔をした。
「どうしよう。まさか隼人、誘拐されたんじゃ……」
お母さんは今にもその場に倒れそうだ。
「まさか……」
敦也は家の前にいた、あやしい二人組の男を思い出してぞっとした。
「お母さんは、家に帰って、友だちの家に電話して。ぼくはもう少し外を探すから」
「ぼくたちも一緒に探します」
圭吾たちにありがとうと言うのが精いっぱいの様子で、お母さんは家に戻っていった。
「ぼくが学校から帰った時、あやしい男が二人、ぼくの家をジロジロ見ていたんだ。もしかしたらあいつらかもしれない」
「どんな格好してた?」
祐太が身を乗り出す。敦也が説明すると、祐太は考えこむように腕を組んだ。
「誘拐されたって、まだ決まったわけじゃないでしょ?」
美鈴が言うと、
「でも、その可能性は高い」
と、祐太が言った。
「どういうこと?」
「その二人組、オレを誘拐しようとしたやつらと同じかもしれない」
「けど、祐太はドラゴンに寄生されてなんかいなかっただろう?」
そう言う敦也に、祐太は首を横に振った。
「その時オレ、寄生されていたんだ」
「えっ、どういうこと? ドラゴンが見える人には寄生しないんじゃないの?」
美鈴が、祐太につめよる。
「それが、さぁ」
祐太が助けを求めるように、圭吾を見る。
「自分で言えよ」
圭吾が先をうながした。
「オレ、実は最初、ドラゴンが見えるって嘘ついてたんだ。それで田中さんに、ドラゴン研究所の8階に連れて行ってもらったんだ」
「マジで?」
「そこで寄生されちゃって、その帰りに全身黒ずくめの男二人組に誘拐されそうになったんだ」
「大丈夫だったのか?」
敦也が聞くと、祐太はうなずいた。
「圭吾が助けに来てくれて二人組は逃げて行ったし、おまけにドラゴンも捕まえてくれて、な?」
祐太が圭吾に顔を向ける。
「オレに寄生してたのが、ファイなんだけど」
祐太は、胸に下げているビンを持ち上げた。
「圭吾が捕まえたとたんに、本当に見えるようになったんだ」
「ぼくも、隼人くんを誘拐したのは、その二人組の可能性が高いと思う」
圭吾がみんなを見回した。
「隼人くんが、ドラゴンに寄生されたせいで誘拐されたのなら、探し出す方法が一つある」
祐太が震える声で言った。
「どうやって隼人くんを探し出すつもりなの?」
美鈴が首をかしげた。
「オレが寄生されたフリして、おとりになる」
意を決したように祐太は言った。
「どうやって?」
「下敷き使って静電気でも起こせばだませるだろ、そんなやつらくらい」
「静電気でだませるとしても、そんなにうまく犯人に見つけてもらえるかなぁ」
敦也は首をひねった。
「わかった。犯人が行きそうな場所でやればいいのよ」
美鈴が手を叩く。
「心当たりがあるの?」
圭吾がたずねる。
「うん。ルイちゃんと一緒の塾の子が行方不明になったって言ったでしょ? 塾の帰りにいなくなったらしいの。多分、犯人は子どもたちが集まる場所で待ち伏せして、ドラゴンに寄生されている子を探しているんじゃないかな」
「塾の場所、わかる?」
圭吾が聞くと、美鈴がうなずいた。
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