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第三章 ドラゴンハンター03 後藤祐太
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祐太は、すぐには言葉が出てこなかった。全身が硬直する。
まだ嘘をつきとおすのか。それとも本当のことを白状するのか。祐太の心は揺れる。
「ばれてたか」
言ってしまうと、体の力がふっと抜けて、気持ちが楽になった。祐太は、ごまかすように頭をかいた。
バチバチバチっと髪の毛に静電気がおきた。
「それから」
圭吾が、真剣な目を向けてくる。
「寄生されてるよ、祐太。ドラゴンに」
祐太の心臓が、ドクンと音を立てた。
「まさか……」
足が小刻みに震え出す。
「大丈夫。ぼくが捕まえるから」
圭吾が静かに言った。圭吾の目つきが鋭くなる。
「来い、サリュー」
圭吾の声が殺気立っている。圭吾が祐太に向かって突進してきた。
「わぁっ!」
思わず祐太は、その場にしりもちをつく。圭吾はぶつかる寸前で、祐太の横を通り過ぎた。耳元でビュンと風がうなった。圭吾は素早く、祐太の前に周りこんでくる。
「出てこい、ドラゴン」
圭吾の人差し指が、祐太の鼻先をかすめた。
祐太の喉から、ゴホンと大きな咳が出た。喉がイガイガしている。祐太は咳払いしながら、圭吾を見た。
「そのまま進め! サリュー」
圭吾は叫びながら、走り回っている。
祐太には、圭吾が一人で動き回っているようにしか見えない。
圭吾が空を見上げた。
青い空。ほんのり夕焼け色にそまる白い雲。そこにドラゴンがいるのだろうか。だが、祐太には見えなかった。
咳が止まらず、息が苦しい。祐太はゼーゼーいいながら、圭吾の姿を目で追った。
圭吾の顔が険しくなる。
「今だ!」
圭吾が腕を振り上げた。
「行け、サリュー」
ドラゴンは見えないが、空中に閃光が走ったのが見えた。
圭吾の動きがゆっくりになった。
「来い、ドラゴン」
圭吾がガラスのビンを高く持ち上げている。
「戻れ、サリュー」
そう言ってしばらくすると、圭吾が祐太の元に来た。
祐太はしりもちをついたまま、圭吾を見上げた。圭吾が手を差し出す。祐太はその手を取って、起き上がった。いつの間にか、咳も止まっている。
「もう大丈夫。祐太に寄生していたドラゴンはこの中だ」
圭吾がビンを差し出してきた。
「あっ」
ビンの中には、小さな生き物がいた。トカゲのような体は、炎のように真っ赤だ。瞳も燃えるように赤い。背中には黒いタテガミと翼がある。
「見える。ドラゴンが見える」
祐太はつぶやいた。
はっとして顔を上げる。
「本当だよ。今度は嘘じゃない」
祐太は必死になって言った。
「もちろん、信じるよ。祐太のこと」
圭吾がにっこり笑って、祐太の手にビンを握らせた。
「でも、かわいそうだな、このドラゴン」
祐太はほっとすると同時に、胸が痛かった。
「どうして? ドラゴン研究所に戻るだけだよ」
「だって、人に寄生しないと成長できないんだろう?」
「けど、死ぬわけじゃない。永遠に年を取らないってだけだ」
祐太は赤いドラゴンを見つめた。
「今からドラゴン研究所に返しに行くの? 一緒に行ってもいい? このドラゴンを、おれの身守りドラゴンにしたいんだ」
祐太は一気に言った。
「じゃぁ、一緒に行って、橋本さんに頼んでみよう」
圭吾が爽やかに言った。
「それからこのことだけど、おれが嘘ついてたっていうか……」
「わかってるって。みんなには言わないから」
圭吾に背中をバンッと叩かれた。
「イッテー」
飛び上がる祐太に、圭吾が声を立てて笑った。
まだ嘘をつきとおすのか。それとも本当のことを白状するのか。祐太の心は揺れる。
「ばれてたか」
言ってしまうと、体の力がふっと抜けて、気持ちが楽になった。祐太は、ごまかすように頭をかいた。
バチバチバチっと髪の毛に静電気がおきた。
「それから」
圭吾が、真剣な目を向けてくる。
「寄生されてるよ、祐太。ドラゴンに」
祐太の心臓が、ドクンと音を立てた。
「まさか……」
足が小刻みに震え出す。
「大丈夫。ぼくが捕まえるから」
圭吾が静かに言った。圭吾の目つきが鋭くなる。
「来い、サリュー」
圭吾の声が殺気立っている。圭吾が祐太に向かって突進してきた。
「わぁっ!」
思わず祐太は、その場にしりもちをつく。圭吾はぶつかる寸前で、祐太の横を通り過ぎた。耳元でビュンと風がうなった。圭吾は素早く、祐太の前に周りこんでくる。
「出てこい、ドラゴン」
圭吾の人差し指が、祐太の鼻先をかすめた。
祐太の喉から、ゴホンと大きな咳が出た。喉がイガイガしている。祐太は咳払いしながら、圭吾を見た。
「そのまま進め! サリュー」
圭吾は叫びながら、走り回っている。
祐太には、圭吾が一人で動き回っているようにしか見えない。
圭吾が空を見上げた。
青い空。ほんのり夕焼け色にそまる白い雲。そこにドラゴンがいるのだろうか。だが、祐太には見えなかった。
咳が止まらず、息が苦しい。祐太はゼーゼーいいながら、圭吾の姿を目で追った。
圭吾の顔が険しくなる。
「今だ!」
圭吾が腕を振り上げた。
「行け、サリュー」
ドラゴンは見えないが、空中に閃光が走ったのが見えた。
圭吾の動きがゆっくりになった。
「来い、ドラゴン」
圭吾がガラスのビンを高く持ち上げている。
「戻れ、サリュー」
そう言ってしばらくすると、圭吾が祐太の元に来た。
祐太はしりもちをついたまま、圭吾を見上げた。圭吾が手を差し出す。祐太はその手を取って、起き上がった。いつの間にか、咳も止まっている。
「もう大丈夫。祐太に寄生していたドラゴンはこの中だ」
圭吾がビンを差し出してきた。
「あっ」
ビンの中には、小さな生き物がいた。トカゲのような体は、炎のように真っ赤だ。瞳も燃えるように赤い。背中には黒いタテガミと翼がある。
「見える。ドラゴンが見える」
祐太はつぶやいた。
はっとして顔を上げる。
「本当だよ。今度は嘘じゃない」
祐太は必死になって言った。
「もちろん、信じるよ。祐太のこと」
圭吾がにっこり笑って、祐太の手にビンを握らせた。
「でも、かわいそうだな、このドラゴン」
祐太はほっとすると同時に、胸が痛かった。
「どうして? ドラゴン研究所に戻るだけだよ」
「だって、人に寄生しないと成長できないんだろう?」
「けど、死ぬわけじゃない。永遠に年を取らないってだけだ」
祐太は赤いドラゴンを見つめた。
「今からドラゴン研究所に返しに行くの? 一緒に行ってもいい? このドラゴンを、おれの身守りドラゴンにしたいんだ」
祐太は一気に言った。
「じゃぁ、一緒に行って、橋本さんに頼んでみよう」
圭吾が爽やかに言った。
「それからこのことだけど、おれが嘘ついてたっていうか……」
「わかってるって。みんなには言わないから」
圭吾に背中をバンッと叩かれた。
「イッテー」
飛び上がる祐太に、圭吾が声を立てて笑った。
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