ドラゴンハンター

ことは

文字の大きさ
上 下
33 / 43
第三章 ドラゴンハンター03 後藤祐太

3-4

しおりを挟む
 祐太は、すぐには言葉が出てこなかった。全身が硬直する。

 まだ嘘をつきとおすのか。それとも本当のことを白状するのか。祐太の心は揺れる。

「ばれてたか」

 言ってしまうと、体の力がふっと抜けて、気持ちが楽になった。祐太は、ごまかすように頭をかいた。

 バチバチバチっと髪の毛に静電気がおきた。

「それから」

 圭吾が、真剣な目を向けてくる。

「寄生されてるよ、祐太。ドラゴンに」

 祐太の心臓が、ドクンと音を立てた。

「まさか……」

 足が小刻みに震え出す。

「大丈夫。ぼくが捕まえるから」

 圭吾が静かに言った。圭吾の目つきが鋭くなる。

「来い、サリュー」

 圭吾の声が殺気立っている。圭吾が祐太に向かって突進してきた。

「わぁっ!」

 思わず祐太は、その場にしりもちをつく。圭吾はぶつかる寸前で、祐太の横を通り過ぎた。耳元でビュンと風がうなった。圭吾は素早く、祐太の前に周りこんでくる。

「出てこい、ドラゴン」

 圭吾の人差し指が、祐太の鼻先をかすめた。

 祐太の喉から、ゴホンと大きな咳が出た。喉がイガイガしている。祐太は咳払いしながら、圭吾を見た。

「そのまま進め! サリュー」

 圭吾は叫びながら、走り回っている。

 祐太には、圭吾が一人で動き回っているようにしか見えない。

 圭吾が空を見上げた。

 青い空。ほんのり夕焼け色にそまる白い雲。そこにドラゴンがいるのだろうか。だが、祐太には見えなかった。

 咳が止まらず、息が苦しい。祐太はゼーゼーいいながら、圭吾の姿を目で追った。

 圭吾の顔が険しくなる。

「今だ!」

 圭吾が腕を振り上げた。

「行け、サリュー」

 ドラゴンは見えないが、空中に閃光が走ったのが見えた。

 圭吾の動きがゆっくりになった。

「来い、ドラゴン」

 圭吾がガラスのビンを高く持ち上げている。

「戻れ、サリュー」

 そう言ってしばらくすると、圭吾が祐太の元に来た。

 祐太はしりもちをついたまま、圭吾を見上げた。圭吾が手を差し出す。祐太はその手を取って、起き上がった。いつの間にか、咳も止まっている。

「もう大丈夫。祐太に寄生していたドラゴンはこの中だ」

 圭吾がビンを差し出してきた。

「あっ」

 ビンの中には、小さな生き物がいた。トカゲのような体は、炎のように真っ赤だ。瞳も燃えるように赤い。背中には黒いタテガミと翼がある。

「見える。ドラゴンが見える」

 祐太はつぶやいた。

 はっとして顔を上げる。

「本当だよ。今度は嘘じゃない」

 祐太は必死になって言った。

「もちろん、信じるよ。祐太のこと」

 圭吾がにっこり笑って、祐太の手にビンを握らせた。

「でも、かわいそうだな、このドラゴン」

 祐太はほっとすると同時に、胸が痛かった。

「どうして? ドラゴン研究所に戻るだけだよ」

「だって、人に寄生しないと成長できないんだろう?」

「けど、死ぬわけじゃない。永遠に年を取らないってだけだ」

 祐太は赤いドラゴンを見つめた。

「今からドラゴン研究所に返しに行くの? 一緒に行ってもいい? このドラゴンを、おれの身守りドラゴンにしたいんだ」

 祐太は一気に言った。

「じゃぁ、一緒に行って、橋本さんに頼んでみよう」

 圭吾が爽やかに言った。

「それからこのことだけど、おれが嘘ついてたっていうか……」

「わかってるって。みんなには言わないから」

 圭吾に背中をバンッと叩かれた。

「イッテー」

 飛び上がる祐太に、圭吾が声を立てて笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...