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第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴
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「てゆうか、なんでここに来たんだっけ? あれ? 圭吾くん話があるとか言ってなかった?」
ルイが首をかしげた。
「ルイちゃん、ずいぶんひどいことを美鈴ちゃんに言ってたから、謝った方がいいんじゃないかなーって思って」
圭吾がおどけた調子で言った。その表情に、ドラゴンと戦った時のような鋭さはもうない。
「あっ。そうだよね。わたし、美鈴ちゃんにひどいこと言っちゃったよね? ごめんね」
ルイが、真っ直ぐに美鈴を見た。いつものルイに戻っている。
「ううん。わたしも悪かったし。バレー行けなくてごめんね」
「美鈴ちゃんが謝ることないよ。わたし、土曜日だって約束破っちゃったし。本当にごめんね」
ルイが目に涙をためた。
「よかった。いつものルイちゃんだ」
美鈴はルイをギュッと抱きしめた。
「どうしてかな。最近のわたし、自分のことしか考えられなかった。美鈴ちゃんの気持ち、考えてみることがどうしてできなかったんだろう」
「きっとドラゴンのせいだよ」
美鈴はいつのまにかそう答えていた。
ルイは不思議そうな顔をしている。
「そうだ、ルイちゃん。今日スイミングの日じゃない?」
美鈴が言うと、ルイがはっとした。
「そうだ、いけない。わたし、先帰るね」
ルイが笑顔で手を振り、走っていく。
「ドラゴンの、せいだったの?」
ルイが行ってしまうと、美鈴は圭吾にたずねた。
圭吾が深くうなずいた。
「ドラゴンは、子どもに寄生しやすいんだ。ドラゴンは、寄生した人の想像力を吸い取って成長する」
「そっか。想像力がなくなると、人の気持ちがわからなくなっちゃうんだね。怖いな」
美鈴は身震いした。
「でも、どうしてわかったの? ルイにドラゴンが寄生しているって」
「ルイちゃんの様子がいつもと違うなぁとは思ったけど、決め手は火花。ほら、美鈴ちゃんも見たでしょ?」
圭吾が美鈴に問いかける。
「うん、びっくりした。最初は静電気かなぁって思ったんだけど、ルイの体からバチバチすごい火花が散ってるんだもん」
「それ、ドラゴンに寄生された人の特徴なんだ」
「まさか、人に寄生することがあるなんて……。ドラゴンって危険な生き物だったんだ」
美鈴は足元を見つめた。
「でも、ドラゴンに寄生された人を助けることもあるよ。サリューみたいにね」
美鈴が顔を上げると、圭吾が笑っていた。
「でもそれは、圭吾くんが操っていたからでしょ?」
「そうだけど、そうじゃない」
圭吾が少し怒ったように言った。
「どういう意味?」
「ぼくには、サリューの気持ちがわかるんだ。そうでなければ、ドラゴンを操ることなんてできない。つまりサリューは、ぼくに無理やり操られているわけじゃないってこと。サリューはぼくの友だちなんだ」
圭吾が、胸元にいるドラゴンをTシャツの上からなでた。
「圭吾くんはいつもこうやって、ドラゴンと戦ってるの?」
美鈴がたずねると、とんでもない、と圭吾は首を横に振った。
「人に寄生しているドラゴンと戦ったのは、これが初めて。正直捕まえるまで、心臓がバクバクだった」
「えっ、そうなの? すごくかっこよかったよ」
思わず言ってしまってから、美鈴は顔が熱くなった。
「ドラゴン研究所の橋本さんのおかげかな」
そう言いながら、圭吾も顔を赤くしている。
「実はドラゴンを初めて見たのも、おとといのことなんだ。昨日の午後、ドラゴンがゾロゾロいる場所で、ドラゴンを操るための猛特訓を受けたけど」
圭吾が目を輝かせて言った。
姿を見たことがあるだけで、美鈴はドラゴンのことをなにも知らなかった。そして今、もっと知りたいと思った。ドラゴンのことをもっともっと知りたい。
「ねぇ、圭吾くん。わたしも、ドラゴンハンターになれるかな?」
「なれるよ、絶対。美鈴ちゃんなら」
圭吾が嬉しそうにうなずいた。
「決めた。わたし、ドラゴンハンターになる!」
美鈴は勢いよく言った。
「じゃぁ、今日からぼくと一緒に特訓を受ける?」
「ドラゴンがゾロゾロいる場所で?」
美鈴の問いに、圭吾がうなずいた。
美鈴は大量のドラゴンを想像したら、体中がかゆくなってきた。
「それはちょっと、心の準備がまだ」
美鈴の決心は、早くも揺らぎそうだった。
「じゃぁ、夏休みになったら一緒にドラゴン研究所に行こう。この夏休みに、学校を通して、ドラゴンハンターを募集するんだって。それなら他の子たちもいるから、行きやすいでしょ?」
美鈴はうなずいた。
「夏休みまで、あと2週間かぁ」
楽しみだけどちょっと怖い。知りたいけど、ちょっと不安。圭吾のように誰かを助けたいけど、本当は逃げ出したい。美鈴は複雑な気持ちだった。
ルイが首をかしげた。
「ルイちゃん、ずいぶんひどいことを美鈴ちゃんに言ってたから、謝った方がいいんじゃないかなーって思って」
圭吾がおどけた調子で言った。その表情に、ドラゴンと戦った時のような鋭さはもうない。
「あっ。そうだよね。わたし、美鈴ちゃんにひどいこと言っちゃったよね? ごめんね」
ルイが、真っ直ぐに美鈴を見た。いつものルイに戻っている。
「ううん。わたしも悪かったし。バレー行けなくてごめんね」
「美鈴ちゃんが謝ることないよ。わたし、土曜日だって約束破っちゃったし。本当にごめんね」
ルイが目に涙をためた。
「よかった。いつものルイちゃんだ」
美鈴はルイをギュッと抱きしめた。
「どうしてかな。最近のわたし、自分のことしか考えられなかった。美鈴ちゃんの気持ち、考えてみることがどうしてできなかったんだろう」
「きっとドラゴンのせいだよ」
美鈴はいつのまにかそう答えていた。
ルイは不思議そうな顔をしている。
「そうだ、ルイちゃん。今日スイミングの日じゃない?」
美鈴が言うと、ルイがはっとした。
「そうだ、いけない。わたし、先帰るね」
ルイが笑顔で手を振り、走っていく。
「ドラゴンの、せいだったの?」
ルイが行ってしまうと、美鈴は圭吾にたずねた。
圭吾が深くうなずいた。
「ドラゴンは、子どもに寄生しやすいんだ。ドラゴンは、寄生した人の想像力を吸い取って成長する」
「そっか。想像力がなくなると、人の気持ちがわからなくなっちゃうんだね。怖いな」
美鈴は身震いした。
「でも、どうしてわかったの? ルイにドラゴンが寄生しているって」
「ルイちゃんの様子がいつもと違うなぁとは思ったけど、決め手は火花。ほら、美鈴ちゃんも見たでしょ?」
圭吾が美鈴に問いかける。
「うん、びっくりした。最初は静電気かなぁって思ったんだけど、ルイの体からバチバチすごい火花が散ってるんだもん」
「それ、ドラゴンに寄生された人の特徴なんだ」
「まさか、人に寄生することがあるなんて……。ドラゴンって危険な生き物だったんだ」
美鈴は足元を見つめた。
「でも、ドラゴンに寄生された人を助けることもあるよ。サリューみたいにね」
美鈴が顔を上げると、圭吾が笑っていた。
「でもそれは、圭吾くんが操っていたからでしょ?」
「そうだけど、そうじゃない」
圭吾が少し怒ったように言った。
「どういう意味?」
「ぼくには、サリューの気持ちがわかるんだ。そうでなければ、ドラゴンを操ることなんてできない。つまりサリューは、ぼくに無理やり操られているわけじゃないってこと。サリューはぼくの友だちなんだ」
圭吾が、胸元にいるドラゴンをTシャツの上からなでた。
「圭吾くんはいつもこうやって、ドラゴンと戦ってるの?」
美鈴がたずねると、とんでもない、と圭吾は首を横に振った。
「人に寄生しているドラゴンと戦ったのは、これが初めて。正直捕まえるまで、心臓がバクバクだった」
「えっ、そうなの? すごくかっこよかったよ」
思わず言ってしまってから、美鈴は顔が熱くなった。
「ドラゴン研究所の橋本さんのおかげかな」
そう言いながら、圭吾も顔を赤くしている。
「実はドラゴンを初めて見たのも、おとといのことなんだ。昨日の午後、ドラゴンがゾロゾロいる場所で、ドラゴンを操るための猛特訓を受けたけど」
圭吾が目を輝かせて言った。
姿を見たことがあるだけで、美鈴はドラゴンのことをなにも知らなかった。そして今、もっと知りたいと思った。ドラゴンのことをもっともっと知りたい。
「ねぇ、圭吾くん。わたしも、ドラゴンハンターになれるかな?」
「なれるよ、絶対。美鈴ちゃんなら」
圭吾が嬉しそうにうなずいた。
「決めた。わたし、ドラゴンハンターになる!」
美鈴は勢いよく言った。
「じゃぁ、今日からぼくと一緒に特訓を受ける?」
「ドラゴンがゾロゾロいる場所で?」
美鈴の問いに、圭吾がうなずいた。
美鈴は大量のドラゴンを想像したら、体中がかゆくなってきた。
「それはちょっと、心の準備がまだ」
美鈴の決心は、早くも揺らぎそうだった。
「じゃぁ、夏休みになったら一緒にドラゴン研究所に行こう。この夏休みに、学校を通して、ドラゴンハンターを募集するんだって。それなら他の子たちもいるから、行きやすいでしょ?」
美鈴はうなずいた。
「夏休みまで、あと2週間かぁ」
楽しみだけどちょっと怖い。知りたいけど、ちょっと不安。圭吾のように誰かを助けたいけど、本当は逃げ出したい。美鈴は複雑な気持ちだった。
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