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第二章 ドラゴンハンター02 良知美鈴
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「ドラゴン?」
「そう、これのこと」
そう言って圭吾はビンを軽く振った。
「ドラゴンが見える人って、あまりいないんだよ」
「けどそれ、たまにその辺で見かけるよ。背中が金色で、目が青いのは初めて見たけど。他の色のやつはよくいる」
圭吾が目を丸くする。
「美鈴ちゃんは、ドラゴンがいつから見えてたの?」
「いつからって、小さいころからよく見かけるけど」
「えっ! すごい。小さいころからドラゴンが見えてたなんて、美鈴ちゃんそれ、すごいよ」
圭吾が興奮した様子で、目を輝かせる。美鈴はなにがすごいのかわけがわからない。
「てゆうか、ドラゴン? 翼が生えたトカゲでしょ、それ」
美鈴は首をかしげた。圭吾の言っていることは、はっきり言っておかしい。だが、美鈴をからかっているようにも見えなかった。
「違うんだ。ドラゴンは見える人と見えない人がいる。そして、美鈴ちゃんは見える人」
圭吾がビンを美鈴に近づけてくる。中にいる生き物は、目が宝石のように青く光っている。一瞬、きれいだな、と思ってしまう。青い目をしているトカゲはめずらしい。
だが、やっぱりトカゲはトカゲだ。気持ちが悪い。美鈴は、一歩後ろに下がった。
「わかったから、あんまりこっちに近づかないでくれない? わたし、そういうの苦手なの」
「あぁ、ごめん」
圭吾が、申し訳なさそうな顔をした。
圭吾の話は、すぐには信じることができなかった。
だが確かにそう言われてみれば、トカゲよりドラゴンに姿形が似ている。
(けど、ドラゴンって空想上の生き物じゃなかったっけ?)
美鈴はわけがわからなかった。
しかもこんなにはっきりと存在しているのに、見えない人がいるなんて本当だろうか。
「そういえば」
美鈴は思い当たることがあった。
「幼稚園の時、砂場にそれがいたの。トカゲがいるってわたし、大泣きしたんだけど、他の子たちや先生はなにもいないよって平気で砂場で遊んでるの。わたし一人だけ、その場を離れてブランコで遊んだんだ。それって、ほかのみんなには本当に見えてなかったってことなの?」
「その通りだよ」
圭吾がうなずいた。
「土曜日、祐太の家に行ったんだ」
「そういえば朝、祐太くん言ってたね。何しにおれんちに来たんだって」
美鈴は朝のやり取りを思い出した。
「ドラゴンを見せに行ったんだ」
「それで?」
美鈴は先をうながした。
「祐太には見えなかった。土曜日、美鈴ちゃんに会う前のことだよ」
「わたしに会った後、本田敦也くんにも見せたの? 公園で」
「うん。やっぱり敦也にも見えなかった。敦也の弟とその友達二人にも見えなかったんだ」
「不思議……」
美鈴は首をひねった。
「ドラゴンが見えること? ぼくも初めて見えた時、本当に驚いたんだ」
圭吾が興奮したように声を大きくした。
「違うよ。ドラゴンが見えないことがだよ。だってわたしには、ずっと見えていたんだもん」
美鈴は不思議でしかたがなかった。ドラゴンが他の人に見えないことが、不思議でたまらない。
「どうして、わたしと圭吾くんには見えるの?」
「想像力なんだって。ちょっとした想像力があれば誰にでも見えるようになるんだけど、コツが必要なんだ」
「ふーん」
わかったような、わからないような感じだった。
「訓練すれば、ドラゴンを操ることができるようになるんだ」
圭吾が夢中で話す。
「へー」
美鈴はあまり興味がわかなかった。
「美鈴ちゃんも、ドラゴンハンターにならない?」
圭吾が身を乗り出してくる。美鈴は一歩下がる。
「ドラゴンハンターってなに?」
「ドラゴンを捕まえる人のことだよ」
(うわ、お断りだよ)
美鈴はあからさまに嫌そうな顔をしたが、圭吾は気づく様子がない。夢中で話し続ける。
「ドラゴンハンターになるには、ほんのちょっとの想像力と勇気があればいい。美鈴ちゃんにはドラゴンが見えるんだ。ドラゴンハンターになるための、一つ目の条件はクリアしている」
圭吾が美鈴に握手を求めてくる。
「わたし、ドラゴンなんとかになりたいなんて、一言も言ってないし」
美鈴は両手を後ろに隠した。がっつり手でも握られてしまったら、強引にドラゴンなんとかの仲間にされてしまいそうだ。
「ドラゴン研究所に、橋本さんって人がいるんだ。その人に、もしかしたら友達にドラゴンが見える子がいるかもしれないって話したら、ぜひ、ドラゴンハンターになるべきだって」
圭吾はどんどん美鈴に迫ってくる。
「誰それ? 橋本さんなんて、わたし知らないし」
美鈴は声のトーンを落として言った。ちょっと冷たいかな、とも思ったが、断るべきことははっきり断った方がいい。
「ねぇ、美鈴ちゃん。ドラゴンハンターになって、一緒に戦おうよ」
美鈴は後ずさった。
「戦うってなに? 戦隊ヒーローものの見すぎじゃない?」
美鈴はあきれて言った。
「ドラゴンって、子どもにキセイするんだ」
圭吾の顔つきが、さらに真剣なものになる。
「キセイ? なにしゃべってるかわからないんだけど」
「説明するの難しいなぁ」
圭吾が頭をかいている。
「まぁいいや。すぐじゃなくてもいいから、夏休みくらいまでには考えておいてよ。あっ、チャイムだ」
昼休みが終了してしまった。
「じゃ、考えておいてね」
圭吾は念を押すように言うと、走り去っていった。
「そう、これのこと」
そう言って圭吾はビンを軽く振った。
「ドラゴンが見える人って、あまりいないんだよ」
「けどそれ、たまにその辺で見かけるよ。背中が金色で、目が青いのは初めて見たけど。他の色のやつはよくいる」
圭吾が目を丸くする。
「美鈴ちゃんは、ドラゴンがいつから見えてたの?」
「いつからって、小さいころからよく見かけるけど」
「えっ! すごい。小さいころからドラゴンが見えてたなんて、美鈴ちゃんそれ、すごいよ」
圭吾が興奮した様子で、目を輝かせる。美鈴はなにがすごいのかわけがわからない。
「てゆうか、ドラゴン? 翼が生えたトカゲでしょ、それ」
美鈴は首をかしげた。圭吾の言っていることは、はっきり言っておかしい。だが、美鈴をからかっているようにも見えなかった。
「違うんだ。ドラゴンは見える人と見えない人がいる。そして、美鈴ちゃんは見える人」
圭吾がビンを美鈴に近づけてくる。中にいる生き物は、目が宝石のように青く光っている。一瞬、きれいだな、と思ってしまう。青い目をしているトカゲはめずらしい。
だが、やっぱりトカゲはトカゲだ。気持ちが悪い。美鈴は、一歩後ろに下がった。
「わかったから、あんまりこっちに近づかないでくれない? わたし、そういうの苦手なの」
「あぁ、ごめん」
圭吾が、申し訳なさそうな顔をした。
圭吾の話は、すぐには信じることができなかった。
だが確かにそう言われてみれば、トカゲよりドラゴンに姿形が似ている。
(けど、ドラゴンって空想上の生き物じゃなかったっけ?)
美鈴はわけがわからなかった。
しかもこんなにはっきりと存在しているのに、見えない人がいるなんて本当だろうか。
「そういえば」
美鈴は思い当たることがあった。
「幼稚園の時、砂場にそれがいたの。トカゲがいるってわたし、大泣きしたんだけど、他の子たちや先生はなにもいないよって平気で砂場で遊んでるの。わたし一人だけ、その場を離れてブランコで遊んだんだ。それって、ほかのみんなには本当に見えてなかったってことなの?」
「その通りだよ」
圭吾がうなずいた。
「土曜日、祐太の家に行ったんだ」
「そういえば朝、祐太くん言ってたね。何しにおれんちに来たんだって」
美鈴は朝のやり取りを思い出した。
「ドラゴンを見せに行ったんだ」
「それで?」
美鈴は先をうながした。
「祐太には見えなかった。土曜日、美鈴ちゃんに会う前のことだよ」
「わたしに会った後、本田敦也くんにも見せたの? 公園で」
「うん。やっぱり敦也にも見えなかった。敦也の弟とその友達二人にも見えなかったんだ」
「不思議……」
美鈴は首をひねった。
「ドラゴンが見えること? ぼくも初めて見えた時、本当に驚いたんだ」
圭吾が興奮したように声を大きくした。
「違うよ。ドラゴンが見えないことがだよ。だってわたしには、ずっと見えていたんだもん」
美鈴は不思議でしかたがなかった。ドラゴンが他の人に見えないことが、不思議でたまらない。
「どうして、わたしと圭吾くんには見えるの?」
「想像力なんだって。ちょっとした想像力があれば誰にでも見えるようになるんだけど、コツが必要なんだ」
「ふーん」
わかったような、わからないような感じだった。
「訓練すれば、ドラゴンを操ることができるようになるんだ」
圭吾が夢中で話す。
「へー」
美鈴はあまり興味がわかなかった。
「美鈴ちゃんも、ドラゴンハンターにならない?」
圭吾が身を乗り出してくる。美鈴は一歩下がる。
「ドラゴンハンターってなに?」
「ドラゴンを捕まえる人のことだよ」
(うわ、お断りだよ)
美鈴はあからさまに嫌そうな顔をしたが、圭吾は気づく様子がない。夢中で話し続ける。
「ドラゴンハンターになるには、ほんのちょっとの想像力と勇気があればいい。美鈴ちゃんにはドラゴンが見えるんだ。ドラゴンハンターになるための、一つ目の条件はクリアしている」
圭吾が美鈴に握手を求めてくる。
「わたし、ドラゴンなんとかになりたいなんて、一言も言ってないし」
美鈴は両手を後ろに隠した。がっつり手でも握られてしまったら、強引にドラゴンなんとかの仲間にされてしまいそうだ。
「ドラゴン研究所に、橋本さんって人がいるんだ。その人に、もしかしたら友達にドラゴンが見える子がいるかもしれないって話したら、ぜひ、ドラゴンハンターになるべきだって」
圭吾はどんどん美鈴に迫ってくる。
「誰それ? 橋本さんなんて、わたし知らないし」
美鈴は声のトーンを落として言った。ちょっと冷たいかな、とも思ったが、断るべきことははっきり断った方がいい。
「ねぇ、美鈴ちゃん。ドラゴンハンターになって、一緒に戦おうよ」
美鈴は後ずさった。
「戦うってなに? 戦隊ヒーローものの見すぎじゃない?」
美鈴はあきれて言った。
「ドラゴンって、子どもにキセイするんだ」
圭吾の顔つきが、さらに真剣なものになる。
「キセイ? なにしゃべってるかわからないんだけど」
「説明するの難しいなぁ」
圭吾が頭をかいている。
「まぁいいや。すぐじゃなくてもいいから、夏休みくらいまでには考えておいてよ。あっ、チャイムだ」
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圭吾は念を押すように言うと、走り去っていった。
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