ドラゴンハンター

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第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾

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 圭吾は無理やり話を結衣のことに戻した。

「あぁ、そうそう」

 橋本がパチンと手を打った。

「彩芽さんから話は聞いたよ。妹さんがドラゴンにキセイされたらしいね」

 橋本の優しい目が、一瞬で鋭くなった。

「キセイって?」

「寄生というのは、ある生物が別の生物の体内に入りこみ、一方的に栄養などを吸い取ってしまうこと。つまり、ドラゴンが妹さんの体に入りこみ、その栄養を吸って成長しようとしているんだ」

「そんなことしたら結衣が死んじゃう!」

 圭吾は叫んだ。涙が出そうだった。

「大丈夫よ。死んでしまうことはないわ。ドラゴンは子どもに寄生しやすいの」

 彩芽が柔らかい声で言った。

「彩芽さんの言うとおり、死んでしまうことはない。というのは、ドラゴンが吸い取るのは、人の肉や血液ではないからだ」

「いったい何を吸い取るんですか?」

 圭吾の声が震えた。

「想像力だよ。ドラゴンは人の、特に子どもの想像力を吸い取って成長する」

「想像力を吸い取られると、どうなるんですか?」

「たいていの場合は特に問題はない。人の想像力が空っぽになってしまうことは、めったにないからね」

 そう言う橋本に、
「しかしドラゴンに寄生された人が、偉大な発明や発見をすることは無理でしょうね。科学の進歩には想像力が欠かせない」
と田中が口をはさんだ。

「逆にそれほどの能力のある人間なら、たとえドラゴンに寄生されたとしても、想像力は有り余るくらいだとぼくは考えるけどね。ドラゴンは一生、人間の体に寄生するわけではない」

「ある程度の大きさになったら、ドラゴンは人間の体から飛び立つんですよね?」

「その通りだ」

 橋本と田中が、二人だけで話し始めてしまう。圭吾の存在を忘れてしまったかのようだ。

「ちょっといいですか」

 圭吾は大きな声で言った。

「話は戻りますけど、たいていの場合は問題ないということは、問題がある場合もあるってことですよね?」

「まれに、徹底的に想像力を吸いつくされてしまうケースがあるんだよ」

 橋本が眉間に皺を寄せた。

「そうすると普段の生活にも問題が出る。想像力っていうのは、偉大な発明をするためのものだけじゃない。なにげない日常にも、想像力は必要なものなんだよ」

「どんな問題が出るんですか?」

 圭吾の質問に、今度は彩芽が答えた。

「たとえば人の気持ち。想像力がなければ相手の気持ちになって考えることもできない。人が嫌がることを平気でしてしまうようになるかもしれないの」

「たいていの場合は、自己中心的な考え方しかできなくなる。時にそれは、いじめにつながり、最悪の場合犯罪にもつながっていく」

 橋本が後を続けた。

「だから、寄生されたまま放っておいたら危険なんだ」

 橋本の顔は真剣そのものだった。

「結衣を助けてください。お願いします」

 圭吾は頭を下げた。

「もちろん、そのつもりだ。説明しなければならないことは山ほどあるが、ドラゴンから妹さんを助け出すのが先だ。一緒に行こう」

 橋本が立ち上がった。
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