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第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾
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ショッピングセンターに着いたのは、午前9時50分。まだ開店前だった。
圭吾はイライラしながら、ショッピングセンターの入り口でドアが開くのを待った。他にも数人が自動ドアの前で待っている。
午前10時。ドアが開くのと同時に、圭吾は他の人を押しのけるようにして中に入った。
「いらっしゃいませー」
ショップ店員のさわやかな声も、今はわずらわしかった。
圭吾は、真っ直ぐペットショップ「ワクワクランド」に向かう。そのまま爬虫類売り場へ突入する。
ドラゴンが入っていたガラスケースは空っぽのままだった。本当になにもいないのに、『ドラゴンがいるよ!』なんて書かれている。本当の本当に嘘っぱちだ。
ドラゴン担当の女性店員がすぐ側にいた。床の掃き掃除をしている。
「すみません」
圭吾は店員に声をかけた。
「いらっしゃいま……あなたは昨日の……」
「ドラゴンのガラスケースを置いて行った女の人に、会いたいんです」
圭吾は早口で言った。
「あぁ、ジュエル社の人のことね」
ジュエル社。圭吾はその名前を耳にしたことがあった。
(なんだっけ?)
圭吾は頭の隅々まで記憶をたどった。
かがやくような笑顔の女の子が、圭吾の頭に浮かぶ。人気アイドルの女の子だ。彼女がテレビCMで言っていた。『想像力をのばそっ』。カメラ目線でにっこり微笑む。
CMの最後に、ゴールドの文字で出てくるのが確か『ジュエル社』だ。
「ジュエル社って通信教育の会社の?」
圭吾がたずねると、店員はそうそう、とうなずいた。
ジュエル社という会社は、圭吾の住んでいる街にはないはずだ。
するとあの女の人は、どこか遠くから来ていたのだろうか。もしかしたら東京かもしれない。だとしたら、そこまで行く交通費がない。行くのが無理なら、ここに来るのを待つしかない。
「ジュエル社の人、今日はこの店に来ませんか?」
「その予定はないわねぇ」
店員の返事に、圭吾はがっかりした。
「会いたいなら会社に行ってみたら? 日曜日もやっているはずよ」
「でも、ジュエル社ってどこにあるんですか? 東京ですか?」
店員が笑った。
「駅の反対側よ。この春に、全面鏡張りの大きなビルが完成したのを知らない?」
「知ってる知ってる! 10階建ての、すごいピカピカのやつですよね?」
そのビルは、圭吾の住む小さな街では、結構目立つ。小学生の間でも、デザインがかっこいいと話題になっていた。
「あの女性がいるのは、あのビルの中よ」
「本当ですか?」
そのビルなら、自転車でここから2、3分で行ける。
「ジュエル社の本社は東京だけどね。あのビルに入っているのは、研究部門らしいわ。通信教育だけじゃなくて、色々やっているみたい、あの会社」
「あのビルの何階に、ジュエル社が入っているんですか?」
「それがね、あのビル全部がジュエル社なのよ」
「すげー」
圭吾は目を丸くした。
「入口がオートロックになっていて、1階でインターフォンを鳴らさないと、ビルの中には入れないそうよ」
「店員さんは中に入ったことがあるんですか?」
ないわ、と店員が首を横に振った。
「でも、前に彼女がそう言ってたの。セキュリティが完璧だって」
圭吾はイライラしながら、ショッピングセンターの入り口でドアが開くのを待った。他にも数人が自動ドアの前で待っている。
午前10時。ドアが開くのと同時に、圭吾は他の人を押しのけるようにして中に入った。
「いらっしゃいませー」
ショップ店員のさわやかな声も、今はわずらわしかった。
圭吾は、真っ直ぐペットショップ「ワクワクランド」に向かう。そのまま爬虫類売り場へ突入する。
ドラゴンが入っていたガラスケースは空っぽのままだった。本当になにもいないのに、『ドラゴンがいるよ!』なんて書かれている。本当の本当に嘘っぱちだ。
ドラゴン担当の女性店員がすぐ側にいた。床の掃き掃除をしている。
「すみません」
圭吾は店員に声をかけた。
「いらっしゃいま……あなたは昨日の……」
「ドラゴンのガラスケースを置いて行った女の人に、会いたいんです」
圭吾は早口で言った。
「あぁ、ジュエル社の人のことね」
ジュエル社。圭吾はその名前を耳にしたことがあった。
(なんだっけ?)
圭吾は頭の隅々まで記憶をたどった。
かがやくような笑顔の女の子が、圭吾の頭に浮かぶ。人気アイドルの女の子だ。彼女がテレビCMで言っていた。『想像力をのばそっ』。カメラ目線でにっこり微笑む。
CMの最後に、ゴールドの文字で出てくるのが確か『ジュエル社』だ。
「ジュエル社って通信教育の会社の?」
圭吾がたずねると、店員はそうそう、とうなずいた。
ジュエル社という会社は、圭吾の住んでいる街にはないはずだ。
するとあの女の人は、どこか遠くから来ていたのだろうか。もしかしたら東京かもしれない。だとしたら、そこまで行く交通費がない。行くのが無理なら、ここに来るのを待つしかない。
「ジュエル社の人、今日はこの店に来ませんか?」
「その予定はないわねぇ」
店員の返事に、圭吾はがっかりした。
「会いたいなら会社に行ってみたら? 日曜日もやっているはずよ」
「でも、ジュエル社ってどこにあるんですか? 東京ですか?」
店員が笑った。
「駅の反対側よ。この春に、全面鏡張りの大きなビルが完成したのを知らない?」
「知ってる知ってる! 10階建ての、すごいピカピカのやつですよね?」
そのビルは、圭吾の住む小さな街では、結構目立つ。小学生の間でも、デザインがかっこいいと話題になっていた。
「あの女性がいるのは、あのビルの中よ」
「本当ですか?」
そのビルなら、自転車でここから2、3分で行ける。
「ジュエル社の本社は東京だけどね。あのビルに入っているのは、研究部門らしいわ。通信教育だけじゃなくて、色々やっているみたい、あの会社」
「あのビルの何階に、ジュエル社が入っているんですか?」
「それがね、あのビル全部がジュエル社なのよ」
「すげー」
圭吾は目を丸くした。
「入口がオートロックになっていて、1階でインターフォンを鳴らさないと、ビルの中には入れないそうよ」
「店員さんは中に入ったことがあるんですか?」
ないわ、と店員が首を横に振った。
「でも、前に彼女がそう言ってたの。セキュリティが完璧だって」
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