8 / 43
第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾
1-8
しおりを挟む
その日の夜9時。
「結衣、やっと寝ついたわ」
お母さんがあくびをしながら、リビングに入ってきた。
圭吾はリビングのソファに座り、テレビを見ていた。
「あら、もうこんな時間。圭吾も早く寝なさい」
今、寝ようと思っていたのに。いつもならそう口ごたえをする圭吾だが、今日は怒られたばかりだ。文句を言うのはやめておいた方がいいことはよくわかっていた。
それに、そんな気分でもなかった。消えてしまったドラゴンのことが気がかりで、テレビをつけていてもずっと上の空だった。
お母さんが毎週楽しみにしているドラマが、もう始まっている。今日は1秒でも早く席をゆずるのが一番だ。
「おやすみなさい」
圭吾はすぐに立ち上がり、自分の部屋に行った。電気をつけたまま、ベッドに寝ころがる。まだ眠れそうになかった。
マンガでも読もうかと起き上がろうとした時だ。視界のすみでなにかが動いた。
ベッドのすぐ下の暗がりになにかいる。圭吾はベッドに座ったまま、頭をさかさまにした。
ベッドの下をのぞきこむ。青く光る瞳と目が合った。
圭吾は一瞬息を止めた。下手に動いたらまた逃げられる。
圭吾はそっとベッドから降りようとした。ゆっくり右足を降ろす。続いて左足。ゆっくり静かに。そっと。
ベッドがギシリと音を立てた。それを合図に、ドラゴンがスタートダッシュを切った。
ドラゴンが一直線に部屋を横切る。圭吾はベッドから飛び起き、ドラゴンを追いかけた。
「待て」
ドラゴンが部屋のドアに向かって行く。
「しまった」
ドアが数センチ開いたままだった。ドラゴンは素早くその隙間を通り抜けていく。
圭吾は足をもつれさせながら部屋のドアを開けた。廊下の電気をつける。
「どこだ?」
ドラゴンが隣の部屋に消えていくのが見えた。ほんの5ミリ程度の隙間から、スルリと入ってしまった。
隣の部屋は、両親の寝室だ。今は、お父さんはお風呂、お母さんはテレビを見ている。部屋の中にいるのは、いつも両親と一緒に寝ている結衣だけだ。
圭吾は隣の部屋に入り、電気のスイッチをつけた。ドラゴンを探したが、どこにも見当たらない。
ダブルベッドの真ん中には、結衣が口を開けたまま寝ている。顔の横で両手をグーにしていた。いつも生意気な結衣も、寝顔はかわいい。
「赤ちゃんみたいだな」
圭吾は自然と微笑んだ。
その時だ。
「いたぞ!」
ドラゴンを見つけた瞬間、圭吾の体に電流が走った。
いつの間にか、ドラゴンがベッドにのぼっていた。ものすごいスピードで結衣の方に向かって行く。
圭吾は反射的にベッドにダイブした。だが、ドラゴンの方が圧倒的に速かった。
次の瞬間、恐ろしいことが起きた。
まるでスローモーションのように、すべての出来事がゆっくりと見えた。圭吾は、体を動かせなかった。
ほんの数秒の事だった。
ドラゴンは消えた。消えた。消えてしまったのだ! 結衣の口の中に!
圭吾は、結衣の口を乱暴にこじあけた。起きてもかまうものか。
だが、結衣は起きなかったし、ドラゴンはどこにもいなかった。目に見える場所には、すでにいなかった。
結衣なんてどうでもいい。昼間そう言ってしまったことを死ぬほど後悔した。どうでもいいわけなんか、ないじゃないか!
「結衣、やっと寝ついたわ」
お母さんがあくびをしながら、リビングに入ってきた。
圭吾はリビングのソファに座り、テレビを見ていた。
「あら、もうこんな時間。圭吾も早く寝なさい」
今、寝ようと思っていたのに。いつもならそう口ごたえをする圭吾だが、今日は怒られたばかりだ。文句を言うのはやめておいた方がいいことはよくわかっていた。
それに、そんな気分でもなかった。消えてしまったドラゴンのことが気がかりで、テレビをつけていてもずっと上の空だった。
お母さんが毎週楽しみにしているドラマが、もう始まっている。今日は1秒でも早く席をゆずるのが一番だ。
「おやすみなさい」
圭吾はすぐに立ち上がり、自分の部屋に行った。電気をつけたまま、ベッドに寝ころがる。まだ眠れそうになかった。
マンガでも読もうかと起き上がろうとした時だ。視界のすみでなにかが動いた。
ベッドのすぐ下の暗がりになにかいる。圭吾はベッドに座ったまま、頭をさかさまにした。
ベッドの下をのぞきこむ。青く光る瞳と目が合った。
圭吾は一瞬息を止めた。下手に動いたらまた逃げられる。
圭吾はそっとベッドから降りようとした。ゆっくり右足を降ろす。続いて左足。ゆっくり静かに。そっと。
ベッドがギシリと音を立てた。それを合図に、ドラゴンがスタートダッシュを切った。
ドラゴンが一直線に部屋を横切る。圭吾はベッドから飛び起き、ドラゴンを追いかけた。
「待て」
ドラゴンが部屋のドアに向かって行く。
「しまった」
ドアが数センチ開いたままだった。ドラゴンは素早くその隙間を通り抜けていく。
圭吾は足をもつれさせながら部屋のドアを開けた。廊下の電気をつける。
「どこだ?」
ドラゴンが隣の部屋に消えていくのが見えた。ほんの5ミリ程度の隙間から、スルリと入ってしまった。
隣の部屋は、両親の寝室だ。今は、お父さんはお風呂、お母さんはテレビを見ている。部屋の中にいるのは、いつも両親と一緒に寝ている結衣だけだ。
圭吾は隣の部屋に入り、電気のスイッチをつけた。ドラゴンを探したが、どこにも見当たらない。
ダブルベッドの真ん中には、結衣が口を開けたまま寝ている。顔の横で両手をグーにしていた。いつも生意気な結衣も、寝顔はかわいい。
「赤ちゃんみたいだな」
圭吾は自然と微笑んだ。
その時だ。
「いたぞ!」
ドラゴンを見つけた瞬間、圭吾の体に電流が走った。
いつの間にか、ドラゴンがベッドにのぼっていた。ものすごいスピードで結衣の方に向かって行く。
圭吾は反射的にベッドにダイブした。だが、ドラゴンの方が圧倒的に速かった。
次の瞬間、恐ろしいことが起きた。
まるでスローモーションのように、すべての出来事がゆっくりと見えた。圭吾は、体を動かせなかった。
ほんの数秒の事だった。
ドラゴンは消えた。消えた。消えてしまったのだ! 結衣の口の中に!
圭吾は、結衣の口を乱暴にこじあけた。起きてもかまうものか。
だが、結衣は起きなかったし、ドラゴンはどこにもいなかった。目に見える場所には、すでにいなかった。
結衣なんてどうでもいい。昼間そう言ってしまったことを死ぬほど後悔した。どうでもいいわけなんか、ないじゃないか!
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる