ドラゴンハンター

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第一章 ドラゴンハンター01 戸井圭吾

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 圭吾はそのまま近くの公園に向かった。

「敦也ー」

 圭吾は公園の入り口で大きく手を振った。

 敦也が小さい子ども三人を相手に、キャッチボールをしていた。その中には、小学1年生の弟、隼人もいる。他の二人は隼人の友だちだろう。

「おお、圭吾」

 圭吾が走っていくと、敦也がボールを投げながら言った。そのボールを隼人がキャッチする。うまくキャッチできたと、隼人は飛び跳ねながら喜んでいる。

 敦也は額に汗を光らせていた。短い髪がしっとりと濡れている。

「ちょっと三人でやってて」

 敦也が言うと、はーい、と元気よく隼人が答えた。敦也は隼人のことをすごく可愛がっていて、いつも一緒に遊んでいる。

「敦也はいいなぁ、弟がいて。一緒に遊べるし」

 圭吾がうらやましそうに言うと、
「圭吾だっているじゃん、妹」
と、敦也が言った。

「ハッ? 絶対妹より弟の方がいいよ。結衣なんて生意気なヤツ、どうでもいいし」

 もし弟だったら、ウォータードラゴンやナメクジを飼ってみたい圭吾の気持ちを、少しは分かってくれたかもしれない。

「本当にどうでもいい?」

 敦也が目を細めながら聞く。軽い気持ちで言っただけだったのに、そんな風に問われると、圭吾も意地になってしまう。

「あぁ、どうでもいいよ。あんなヤツ」

 そう言いながら、胸がチクリと痛む。その胸の痛みを打ち消すように、圭吾は一息に言った。

「それより、これ見てくれよ」

 圭吾は虫かごを敦也の前に突き出した。

「虫かご?」

 敦也が首をかしげた。

「すげー普通の虫かごだけど、なに?」

 圭吾は、ハァーーーーッと大きなため息をついた。

「敦也にも見えないのかよ、ドラゴン」

「は? なにドラゴンって」

「この中にいるんだぜ、本物のドラゴンが」

 圭吾は自慢げに鼻を膨らませた。

「どうやら、見える人と見えない人がいるらしいんだ」

「へぇー」

 敦也はバカにする風でもなかったが、かといって信じている風でもなかった。

「おーい! 隼人たちこっち来いよー」

 敦也が1年生三人に手招きする。

「なに、なにー?」

「あっ、虫かごだ!」

「なにかいるの?」

「ダンゴムシ? カマキリ?」

 隼人たちが、興味津々な様子で走り寄ってきた。三人が一斉に虫かごをのぞきこむ。

「なーんだ、なにもいないじゃん」

「つまんなーい」

「ホント、からっぽだ」

 三人が口々に言った。

「そういうことらしいな」

 敦也が、圭吾の肩を叩いた。

「まぁ、落ち込むな、少年よ」

 追い打ちをかけるように、5時を知らせるチャイムが鳴り響く。

「帰るぞー」

 敦也の一言で解散となった。
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