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魔法召いのブレェス
和解
しおりを挟む地上ではサラビエル講師と黒ドラゴンとリキが話をしていた。
ルーファースと赤ドラゴンが戻ってきたことにより視線が集まる。
そんな中ルーファースはリキの前まで行き、話があると言い二人で離れた場所にやってきた。
「ユナテッド。その、すまなかった」
俯き加減に目の前にいるルーファースにリキは不思議そうにする。
「学園でのこと、いろいろと」
言い訳にすらならないかもしれない。と、ルーファースは自分のことを話し出す。
自分を含むぜんぶが無くなればいいんだ
そう自暴自棄になっていた頃。
誰彼構わず酷いことをしていた。
そうなってしまった原因かもしれない過去。
それを聞いたリキは黙ってしまったルーファースのかわりに口を開く。
「私も魔物に両親を殺されてしまったの。でも見てはなくて、それを見てしまったルーファースは辛かったよね。自暴自棄になったりしてもおかしくないと思う。だからとは言わないけどもう気にしないよ。ありがとう」
「……なにが」
「ルーファースの過去とかいろいろ、本当のこと言ってくれてありがとう」
「二度も言うな。そんなに俺のこと知るのが嬉しいのか」
「うーん、まあ、嬉しいよ」
答えてからルーファースの冗談だと知る。
「微妙な返事だな。にしては笑顔」
「ごめんね。なんだろう、まだちょっと抵抗があるというか」
「俺のこと?」
「……ごめん」
「別に、そうなるのが当然だろ」
伏し目がちになったリキを見てルーファースは視線を横に逸らす。
「俺は許されることを知らなかった。だから一度そういうことをしたやつにはとことん同じ、いや、それ以上のことをした。むかついたんだ、そういうことをしたはずの相手が何食わぬ顔で近づいてきて。なんで? って。そのくせ自分から離れていったと思ったら壊してしまおうと思った」
最初は演習中の些細な攻撃だった。ある人をかばったためにリキはルーファースの怒りをかったようで、パートナーになるよう言われ演習中に手がすべったなどと大鎌を飛ばしてきたりした。
それでも、そのときはまだ良い。
仲が縮まっていたほう。
「捻くれてんのかな、俺」
「それがルーファースなんだと思うよ」
魔物との戦いで一緒になったときのことだ。戦闘後にルーファースの悪いところを自身に指摘した。すると押し倒されあざになるほどの力で手首を掴まれ、敵意むき出しの目で悲惨なことを言われたのだ。
その後の関係は良くならず。
そこから悪い方向へ一変した。
「いやえっと、嫌な意味じゃなくて。複雑な心境だけどそう思うルーファースがルーファースなんだよって話で。捻くれているとかそんなことは言ってないよ」
演習中に踏みつけられたり、任務中には蹴飛ばされたり。いろいろと酷かった。
それでも目の前にいる人は今は反省している。
彼もいろいろと事情があるのだ、また同じようなことが起きないことを望んでリキは許すことにした。
「あのときはごめんね」
ルーファースとの話が終わり橋へ戻ってくるとリキは赤ドラゴンに話しかけた。
洞穴の赤ドラゴン。
よく見れば彼は、初めての任務出撃のときに会った赤ドラゴンだった。見間違えはしない。体に無数の傷がある。ファウンズがつけた傷だ。
「ううん、あのときはボクも病んでたし。君は最初にあったときの約束を守ってくれたでしょ? だから、お姉さんのことは好きになれそうだよ」
「ありがとう。嬉しいな」
「ボクも」
突然登場した赤ドラゴンにリキは傷つけたりしないと約束した。相手は無言でもちろんドラゴンが喋るものではないと思っていたリキは一方的なものだと思っていたが、次に洞穴で会ったとき何もできなかったと後悔した。傷つけないと言いながら、自分の仲間が赤ドラゴンを傷つける行為を止められなかったのだから。
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