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魔法召いのブレェス
罪滅ぼし2
しおりを挟む「あのとき私のために涙を流してくれたな。嬉しかった」
ユキがリキに近づき話し出す。
サラビエル講師に呪縛魔法をかけられたユキは首元を締め付ける黒い鎖に苦しめられていた。倒れて意識が朦朧としているように見えるユキを見て悟ったリキは涙を流した。
意識をなくしていただけで本当に良かったと思う。
「実は私の名をつけたのはシルビアだということが判明した。縁とは不思議なものだ。空を飛びながら少し話をしようと思う」
ユキは小さな男の子に名前を付けてもらったと言ったことがある。ドラゴンである自分を怖がらない子供だったと。
雪の降る日であったからユキ。単純な名前の付け方だがユキはとても嬉しかったらしい。
傍まで来ていたシルビアはユキの背中に乗り「じゃあ行ってくるね」と言い残していった。
「僕たちもそうしよっか」
「は?」
「よしそうしよう」
それを見て何を思ったか赤ドラゴンが提案する。
「どうせ〝一部のドラゴン〟って僕たちのことでしょ。魔物退治する前にこういう楽しみもいいでしょ」
理解していないルーファースを両手で持ち、赤ドラゴンは飛んでいく。
ルーファースの制止に赤ドラゴンは止まることはなかった。
青い空に近づいたのを見て諦めたルーファースは赤ドラゴンの背中によじ登る。
今自分が乗っているのは赤ドラゴン。喧嘩というか絶交していたような仲だった。
ルーファースの知っている赤ドラゴンは自分よりも小さい、背中に乗ることができるなんて考えられない子供。
そんな赤ドラゴンの背中に乗っている。
こうなったのはファウンズたちに捕まって、解放されるためにフェリスに赤ドラゴンのことまで打ち明けて、そのことについて謝罪するよう命令されーー。
謝罪し許されたからこそ今一緒にいるのだ。
それもこれもリキのせいなのだろう。
リキがドラゴンと仲良くしようと、ドラゴンが生きやすい世界にしようとしていたからまた再開することになったし。そのことがあったからフェリスは赤ドラゴンに謝れと言ったのだ。
最終的になんだかいい感じにまとまった。
周りの奴らが、奴らの力がそうさせたのかもしれない。けれどその発端はリキの発言にあった、行動にあった。
いい風に言えば、なにかもリキのおかげなのだろう。いや現実を言えばなのか。
そんなリキが大嫌いだったルーファースはリキに酷いことをした、酷いことを言っていた。学園にいた頃の話になるが。傷つけることを何でもないことのように、傷つけたことに傷つくことすらせず、それをすることをごく当然かのようにしていた。
リキはただの純粋なやつだった。それを馬鹿だと思っていたのだ。偽善者が、と。
リキが善だと思ってやったのではないのならそれはただのルーファースの思い込みで、リキが善だと思ってやったことなら本当にそれは善だったのだろう。
偽善者なんて言葉は、ふさわしくない。ふさわしいとするなら自分だとルーファースはリキへの偏見を改める。
「(今まであいつにしてきたこと、どう報いればいいんだろうな)」
ルーファースは空を茫然と見上げ考える。
全くもって考えが浮かばない。今までのことは何をしても許されはしないだろう。じゃあ何をすれば。
そう思ったとき、自然と体がふわっと動く。そんな感じがした。
ーーああこうすればいいのか。
「なにしているの」
気づけば赤ドラゴンの両手に包まれていた。
落ちてしまおうとしたルーファースを赤ドラゴンは自然とキャッチしたのだ。
遠くを見たままルーファースは答えを求める。
「今まで酷いことをした。かもしれないやつにどう報いればいいんだ」
「そんなの簡単だよ。謝ればいいんだよ」
「謝る?」
「ボクに真実を打ち明けてくれたように、本当のことを全部言うの」
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