魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

文字の大きさ
上 下
62 / 71
魔法召いのブレェス

夢ではない3

しおりを挟む
 最初はシルビアもリキたちと行動を共にしていた。
 ある街でドラゴンを飛ぶ姿を見かけ追いかけることにしたのだが、丁度ファウンズとルーファースを見かけシルビアはそちらを追うことになったのだ。

 手違いで討伐機関に渡してしまったドラゴンの討伐依頼。どうすればそれを破棄することができるのか。

 ファウンズたちと対面できたシルビアはそのことについて話した。
 リキたちがドラゴンを追って行ったことも言い、一緒に早く追いかけようと提案したのだがそれどころではなかったらしい。
 ファウンズとルーファースは姿をなくしたフェリスを探していた。

 いなくなったフェリスを探さなければならない。ドラゴンを追ったリキたちも追わなければならない。

 フェリス探しよりもドラゴンを追ったリキたちと合流する方が何かと危険で二人で行く必要がある。シルビアとファウンズで行くのが一番良いがそれは駄目だとファウンズは言った。ルーファースを一人にするのは信用できないと。
 そうなると必然にシルビアとルーファースで行くことになるが組み合わせとしては今まで一緒にいたファウンズとルーファースが良い。

 二つを天秤にかけてシルビアはフェリス探し、ファウンズとルーファースにリキたちを追ってもらうことにした。

 それでシルビアはフェリスと赤ドラゴンに出会い、ドラゴンが向かった方角ーー学園にフェリスの背中に乗り赤ドラゴンを連れて来たらしい。

 部屋が定員オーバーでここにいないフェリスは、ファウンズたちと同行していたのだが休憩中に離れているとき、赤ドラゴンの姿を見つけこの機はないと自分だけで追ってしまったと。

 それでばらばらになってしまった皆はこうして医務室に集まった。

 シルビアの話を聞いていて未だベッドの上にいるリキの前にルーファースが姿を現わす。「起きたんだ」とユークが言う。他のベッドで寝ていたらしい。

「ルーファース……ドラゴンへの謝罪は済んだの?」
「ああ、まあな。それより、お前が呑気に寝てるときに俺たちがあの黒ドラゴンを始末してやったんだぞ」
「図々しい。少し手合わせしただけだろ」

 気をそらすように視線を外し話題を変えたルーファースの隣へファウンズがやってくる。
 あの時、リキは寝ていたのではなく気絶していたのだ。

「あのドラゴンは殺してしまったの?」

 ルーファースの『始末した』という発言。
 確かに黒ドラゴンは始末しなければならない存在だったのかもしれない。学園を滅ぼしにやってきたと決意を心に決めていたようだったから。
 それでもーー黒ドラゴンを始末した、という言葉とユキが殺されてしまったことが重なってそうであってほしくないとリキは微かに思った。

 サラビエルに殺されてしまったと思っていたユキはなぜか目の前にいるけれど、亡くなってしまったという喪失感は未だ覚えている。自分のせいであったからこそそれは大きかった。
 だから黒ドラゴンもユキのように生きていてほしいと思う。

「こいつの謝るべきドラゴンが何の縁があってか黒ドラゴンの生き別れの子供で、そいつのおかげで平和的解決をした」
「ということは黒ドラゴンは生きてる?」

 ファウンズが肯定するのを見てリキは安心し、別に視線を移す。
 ユキを見上げ、疑問に思っていたことを問う。

「それでユキはどうして……。あの時死んでしまったんだって思った」
「私もそう思った。しかし眠っていただけらしい」

 ユキが言うには、あの首を鎖で締め苦しめる魔法をサラビエルは力を抑えて使った。黒ドラゴンをやっつけるのにユキの存在が邪魔になるのではないか、と心配してやったことなのだとサラビエルは言ったと。

 サラビエルと直接話がしたいとリキが切り出すと、サラビエルは講師たちと会議中で話せないようだ。やっと本格的にドラゴンとの共存する世界を考えられているとのこと。
 あまりリキは深く考えてはいなかったが、学園を中心に世界は回っているらしい。討伐機関が重要な所だと思っていたが一番は身近な学園だった。

 ここは窮屈だ、とのことでユキは医務室から出ていく。

 リキは考えがあってサラビエルの会議室に向かうことにした。なんでとロキに聞かれる。自分に関係のあることだからと答えると次にユークが「サラビエル講師は一度、ドラゴンと共存できる世界を一緒につくる、なんていう約束をしながら裏切った。だから今度は本当にその世界を、サラビエル講師に何があっても必ず実現させてもらう。そういう形で報いを受けてもらうことにしたんだ」と。

 ユークの口からそんな言葉がでてくるなんて思わなかった。
 裏切られたこともあったから、これを機に力を貸してもらえたらなんて期待した。

「それでも私は微力かもしれないけど力になりたい。フェリスの生きやすい世界にするって約束したから、ユキにものびのびと暮らせるようになってほしいから。サラビエル講師だけには任せられない」

 会議室に行くと決めたリキを止める者はいなかった。外で待っているとファウンズが出て行く。
 シルビアたちはリキの背中を見送ってからファウンズに続いていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...