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魔法召いのブレェス
夢ではない1
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とても深く短い夢を見ていた。
暖かい光が自分を起こそうとしている。
起こされるかのようにリキは瞼を開けた。
それに気づいたのだろう。誰かがリキの名を呼ぶ。
そちらに視線をやると窓から差し込む白い光に包まれるようにユキがいた。
確かユキはサラビエルの鎖の呪縛魔法によっていなくなってしまったはずだ。
幽霊として自分の前に現れてくれたんだろうか。
ーーいや違う。
自分がここへ来てしまったのではないかと思う。
ユキだけが白い光に包まれているのかと思えば、空間全てが白かった。
「ユキ? ここは……天国?」
そうリキが聞くと灰色のドラゴンーーユキは声を出して小さく笑った。
「私は天国に行けそうもないんだがな」
こうして眠りにつく前の出来事を思い出してリキは自分は死んでしまったのではないかと思った。
黒ドラゴンの吐く大きな炎の塊を受け止めきれなかった。だからこんな所にいるんだろうと。
しかし違うらしい。
だとしたら後ろにいたロキとユークは無事だろうか。肩にいたラピは召喚獣で消えてしまったとしても召喚すればまた出てくる。だから心配はしていない。
けれど人間であるロキとユークはひとつの命しか持っていない。
もし運良く自分だけが助かってロキたちがなくなってしまっていたら。
そう考えると心臓が波打つ。
あの炎玉を遮れたとしてその後に黒ドラゴンとの戦闘が続いたはずだ。
自分だけがーー。
自分だけが助かったとしたならそれは、間違った運命。
「ロキとユークは……無事?」
息を呑んで聞いたリキの声は震えていた。
リキの心配を感じとったかのようにユキは暖かく笑う。
「全員、お前の傍にいるだろう」
ーー全員?
はっきりとしてきた目で横になったまま見渡すが、掛け布団が邪魔をしているせいで誰も視界に入らない。
重たく感じる体を動かし上半身だけ起き上らせる。
ある人物の赤い髪が目に入った途端驚くほど安心した。
「ロキ……と、シルビア?」
なぜ彼がここにいのだろうとリキは理解ならなかった。
綺麗な金髪がさらりと顔に垂れる。
あの時あの場にいたのはロキとユークで。
そういえばユークはどこにいるのだろう。
上半身を起き上がらせた状態で、先ほどより見える辺りを見回す。けれどユークがいない。
なぜシルビアがいてユークがいないのだろう。
「……ユーク」
絞り出すように名を呼ぶ。
すると反応したのはシルビアだった。
目を開けたシルビアの蒼い瞳がリキを映す。
暖かい光が自分を起こそうとしている。
起こされるかのようにリキは瞼を開けた。
それに気づいたのだろう。誰かがリキの名を呼ぶ。
そちらに視線をやると窓から差し込む白い光に包まれるようにユキがいた。
確かユキはサラビエルの鎖の呪縛魔法によっていなくなってしまったはずだ。
幽霊として自分の前に現れてくれたんだろうか。
ーーいや違う。
自分がここへ来てしまったのではないかと思う。
ユキだけが白い光に包まれているのかと思えば、空間全てが白かった。
「ユキ? ここは……天国?」
そうリキが聞くと灰色のドラゴンーーユキは声を出して小さく笑った。
「私は天国に行けそうもないんだがな」
こうして眠りにつく前の出来事を思い出してリキは自分は死んでしまったのではないかと思った。
黒ドラゴンの吐く大きな炎の塊を受け止めきれなかった。だからこんな所にいるんだろうと。
しかし違うらしい。
だとしたら後ろにいたロキとユークは無事だろうか。肩にいたラピは召喚獣で消えてしまったとしても召喚すればまた出てくる。だから心配はしていない。
けれど人間であるロキとユークはひとつの命しか持っていない。
もし運良く自分だけが助かってロキたちがなくなってしまっていたら。
そう考えると心臓が波打つ。
あの炎玉を遮れたとしてその後に黒ドラゴンとの戦闘が続いたはずだ。
自分だけがーー。
自分だけが助かったとしたならそれは、間違った運命。
「ロキとユークは……無事?」
息を呑んで聞いたリキの声は震えていた。
リキの心配を感じとったかのようにユキは暖かく笑う。
「全員、お前の傍にいるだろう」
ーー全員?
はっきりとしてきた目で横になったまま見渡すが、掛け布団が邪魔をしているせいで誰も視界に入らない。
重たく感じる体を動かし上半身だけ起き上らせる。
ある人物の赤い髪が目に入った途端驚くほど安心した。
「ロキ……と、シルビア?」
なぜ彼がここにいのだろうとリキは理解ならなかった。
綺麗な金髪がさらりと顔に垂れる。
あの時あの場にいたのはロキとユークで。
そういえばユークはどこにいるのだろう。
上半身を起き上がらせた状態で、先ほどより見える辺りを見回す。けれどユークがいない。
なぜシルビアがいてユークがいないのだろう。
「……ユーク」
絞り出すように名を呼ぶ。
すると反応したのはシルビアだった。
目を開けたシルビアの蒼い瞳がリキを映す。
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