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魔法召いのブレェス

赤ドラゴンとの仲直り4

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「いいよ」

 静寂から聞こえてきたのはありえもしない返答だった。
 思わずルーファースは「は?」とこぼす。
 顔を上げ初めて成長した赤ドラゴンの瞳をちゃんと見て、信じられないというような声で問いかける。

「許してくれるのか?」
「もういい。あのとき君は子供でボクも子供でお互いに許し合えなかった。それだけだったんだ。ボクも酷いこと言ってごめんなさい。謝ってくれてありがとう」
「なんで礼なんか言うんだ」

 礼を言われたことにルーファースは心底驚いた。

「嬉しかったから。これで仲直り」
「なか、なおり……」

 誰かと喧嘩をし、謝り、仲直りするなんてことルーファースはしたことがなかった。

 いけないことをしてしまって、もう絶対に戻らないと思っていた。
 別に元の関係に戻りたいとかは思っていなかった。
 それでも初めてのことに知らずに胸が高鳴った。

 ーー赤ドラゴンとまた普通に話せることが嬉しいのか?

 錆びた鎖が解けて、半透明の壁がなくなったようだ。
 この高鳴りはなんなのかルーファースは考えたが答えがでない。

「話を聞いていれば……」

 聞きなれない声を耳にしてルーファースは我にかえる。ファウンズたちもそうだろう。
 赤ドラゴンの後ろを見ると黒ドラゴンがこちらを見ていた。
 当然だ、さっきまで戦っていた相手なのだから。

 ドラゴンやら人間やらの乱入で黒ドラゴンは忘れさられていた。

 学園を壊しにやってきた脅威的なドラゴンを端においてのんきに話をしていたなんてとんだ笑い話だ。黒ドラゴンもよく終わるのを待っていてくれた。

 怒って攻撃でもしてくるのだろうと全員身構える。
 黒ドラゴン一体に対してドラゴン二体に男四人。どちらかといえば黒ドラゴンの方が不利だ。しかし力の力量の差はわからない。
 警戒するにこしたことはない。

「お前は我の息子か?」
「……とうさん?」

 落ち着いた黒ドラゴンの問いかけと赤ドラゴンの返答にその場の空気が静まった。
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