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魔法召いのブレェス
赤ドラゴンとの仲直り1
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本当にフェリスは黒ドラゴンに攻撃をしかけるつもりなのか、ファウンズたちは見定めるように様子を見守る。
フェリスは一点にドラゴンのことだけを見ておりその場は沈黙に包まれていた。
一匹の赤いドラゴンが飛んで来るまでは。
「置いて行くなんてひどいことをするじゃないか」
「悪い。後ろを見ていなかった」
「見ていなかったって、ついて来いっていたのは君だ」
「ついて来いと言ったが待つとは言っていない」
突然始められたフェリスと赤ドラゴンの会話に誰もついていけない。
「……誰だ?」
ロキさえもぽかんとした顔だ。
「こいつがそいつの謝るべき相手だ」
「そいつの謝るべき相手か」
「え? 俺?」
「違う」
フェリスとファウンズに同時にロキは否定された。
こいつ、そいつ……ファウンズは理解しているようだが、ロキにとってはなんのこっちゃという話だ。
ドラゴンに誰が謝るというのか。
「そいつがあの時のやつか」
ルーファースまでもが理解しているように言う。
「お前は本当にあのときのやつなのか?」
「そうだ。君もそうなのか?」
赤ドラゴンはフェリスから話を聞かされていた。小さい頃お前を裏切ったやつが謝りたいそうだ、と。だから誰なのかふとその姿が浮かび上がった。小さい頃の記憶にしてははっきりと。
白髪の紫色の瞳をした、子供にしては少しおとなしめだった男の子。
今よりも身長はだいぶ低かった。
自分も同じように成長しているのだろうかと赤ドラゴンは思う。
「……」
ルーファースは黙ってしまった。気まずそうに視線を下に向けて。謝るんじゃないのかとファウンズが急き立てる。
それに苛ついたようルーファースは顔を上げた。もしくは自分に苛々しているのか。
「あの時……!」
歯切れ悪くも観念したようにルーファースは話し出す。
大人にドラゴンの居場所を聞かれ、小さかったルーファースは小さい赤ドラゴンに親の所在を聞いた。赤ドラゴンのことは大切であったし村で唯一の友人であったから裏切るつもりはなかった。
大人が、大きなドラゴンが必要なんだと言っていたので何か手助けでもしてもらうのかと思っていたのだ。
それでも裏切ることに繋がってしまった。
赤ドラゴンの親ドラゴンが連れて行かれてしまった。それを知ったのは月が空を照らしているときだった。
自分の居場所に帰ったはずの赤ドラゴンがルーファースの小屋に戻ってきたのだ。ルーファースがなぜ戻ってきたのかと聞くと、ボクの親が連れて行かれちゃった、と悲しげに言った。
『なんで……』
ルーファースにも理解ならなかった。
なぜ赤ドラゴンの親が連れて行かれてしまったのか。
ーー誰に。
そこまで考えて、自分が原因なのではないかと思い当たる節を思い出す。
自分が大人に赤ドラゴンの親ドラゴンの居場所を教えた。なぜって、何も考えていなかった。
フェリスは一点にドラゴンのことだけを見ておりその場は沈黙に包まれていた。
一匹の赤いドラゴンが飛んで来るまでは。
「置いて行くなんてひどいことをするじゃないか」
「悪い。後ろを見ていなかった」
「見ていなかったって、ついて来いっていたのは君だ」
「ついて来いと言ったが待つとは言っていない」
突然始められたフェリスと赤ドラゴンの会話に誰もついていけない。
「……誰だ?」
ロキさえもぽかんとした顔だ。
「こいつがそいつの謝るべき相手だ」
「そいつの謝るべき相手か」
「え? 俺?」
「違う」
フェリスとファウンズに同時にロキは否定された。
こいつ、そいつ……ファウンズは理解しているようだが、ロキにとってはなんのこっちゃという話だ。
ドラゴンに誰が謝るというのか。
「そいつがあの時のやつか」
ルーファースまでもが理解しているように言う。
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「そうだ。君もそうなのか?」
赤ドラゴンはフェリスから話を聞かされていた。小さい頃お前を裏切ったやつが謝りたいそうだ、と。だから誰なのかふとその姿が浮かび上がった。小さい頃の記憶にしてははっきりと。
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今よりも身長はだいぶ低かった。
自分も同じように成長しているのだろうかと赤ドラゴンは思う。
「……」
ルーファースは黙ってしまった。気まずそうに視線を下に向けて。謝るんじゃないのかとファウンズが急き立てる。
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「あの時……!」
歯切れ悪くも観念したようにルーファースは話し出す。
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それでも裏切ることに繋がってしまった。
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『なんで……』
ルーファースにも理解ならなかった。
なぜ赤ドラゴンの親が連れて行かれてしまったのか。
ーー誰に。
そこまで考えて、自分が原因なのではないかと思い当たる節を思い出す。
自分が大人に赤ドラゴンの親ドラゴンの居場所を教えた。なぜって、何も考えていなかった。
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