魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

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魔法召いのブレェス

黒ドラゴンとの戦い5

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 それはユークの見知ったものではなかった。
 ロキとユーク二人して振り返ったがどちらかといえばロキと面識がある人物。白髪のパープルの瞳をしたロキと同い年のルーファース。
 ルーファースの発言にイラっとしたロキだがユークも同様、彼の存在を異様に感じた。

「馬鹿すぎて何も言えないな。敵を前にして芸でも披露しているつもりか?」

 ルーファースの後ろからファウンズも現れ、軽くロキと会話を交わす。

「ずいぶん会わないうちに口が悪くなったなファウンズ」
「お前にそう言われるとは驚きだ」

 ファウンズは、ロキの後ろ……ドラゴンに一番近い所でしゃがみ込んでいるユークに視線をやりいつもと様子が違うことに気づく。

「ファウンズ、リキが……」

 縋るような瞳に弱々しい声。ユークが体を横にずらすと意識を失っているであろうリキの姿が目に映る。くったりとしたリキのことをユークはずっと抱えていたのだ。

「死んでんじゃねえの」
「おまっ、何言いやがる」
「その女そっちのけで口喧嘩してたやつがいまさら心配してたとか言うつもりかよ」

 空気の読まないルーファースの発言にロキは噛みつくが、言ってのけて鼻で笑ったルーファースにそれ以上ロキは何も言えなかった。
 図星だったから。
 心配していたのは本当のことだ。けれどリキが気絶してその原因であるドラゴンと自分の弱さに苛々して、大事なことを忘れユークに当たってしまっていた。

「息がある」
「早く安静な場所へ連れて行かないと」

 リキに近寄り息があることを確かめたファウンズをユークは見上げる。その言葉を解釈したルーファースは他人事のように言う。

「ドラゴンをなんとかしろってことか。その女の召喚獣も使えないのにな」

 自分たちをドラゴンが見逃すとは思えない。気絶した女がいてもだ。抹消しようとでもしているのだろう。そうであれば倒すしかないのだが、魔法なしでそれができるかと言われれば簡単には頷けない。
 なにせ相手は空飛ぶドラゴンだ。

「ルーファース。手助けしろ」
「なんで俺が」
「言うことを聞け」
「俺は何でも言うことを聞く犬じゃねえ」
「お前は、ロキに似ている」
「そいつと一緒にするな」

 ファウンズに見据えられて睨みをきかすが、ルーファースは呆れたように溜め息をする。

「あーわかったよ。貸しだからな」

 もともとこうなることはわかっていた。ドラゴンの前に来て何もしないなんてことできるわけがない。

 ファウンズとルーファースの会話に何を思ったか、リキを抱き上げ皆を通り過ぎ後方にいったユークはまた先ほどと同じくしゃがみ込む。

「ごめん、リキ。少しだけここにいて。俺たちの勝敗祈ってて」

 そしてリキを地面におろそうとした。

「ユーク、あんたはリキのそばにいろ」
「はあ? そんな余裕ねえだろ」
「動かないやつが近くにいられたら集中できない」
「それは言えてる。ユーク、ちゃんと守れよ」

 ファウンズの指図にユークが何かを言うより先にルーファースが否定的な態度をとるが、最終的にはファウンズとロキに言いくるめられる。
 ユークはドラゴンを退治するなら一人でも多くなければならないと思いリキを比較的安全な所へおろし、自分も戦いに加わろうとした。だがそれを止めたファウンズは賛成ではないらしい。ロキも同様。

 そんな彼らを頼もしく思いながら笑みをこぼしたユークは「わかった」と頷いた。

 攻撃を仕掛けたファウンズ、ルーファース、ロキとドラゴンの戦闘が始まる。やはりリキの召喚獣がいないのは戦力としてないのは大きかった。
 何も倒そうっていうわけではない。
 ここからドラゴンが去ってくくればリキを学園に運べて安静な所で寝かせることができる。

「うおっ」
「なにをしている」

 ドラゴンがサラビエルとの戦闘のときに破損させた石橋の手すり。
 そこにちょうど吹き飛ばされたロキは足を外し崖に落ちそうになったが、それをファウンズが止める。
 腕を掴み引き上げると珍しくもロキは「助かった」と素直に礼を言った。

 そのとき、もう一匹のドラゴンが現れた。皆の視線がそちらに向く。
 そのドラゴンはフェリスだった。
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