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魔法召いのブレェス
黒ドラゴンとの戦い3
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「はじめようか。平和を望む同士の戦いを」
平和を望む者同士がなぜ争いをするのかリキには理解ならなかった。
戦いをすれば平和ではなくなる、戦いをしなければ平和でいられる。
それは単純な考えなのだとわかっていながらもそれが一番の平和的解決なのではないか。と、それしか思いつかなかった。
ドラゴンが学園の方へ飛んでいくのを見てリキたちは学園へやってきた。
まさか学園を襲おうとしているとは予想していなかったが襲おうとしているらしい。サラビエル講師はすでに気絶している。ドラゴンがとどめを刺す寸前だった。
相手が敵意丸出しならこちらも立ち向かう他ない。けれどーー。
「……っ。おいリキ、召喚獣くらいだせよ」
考え込んでいたリキははっとする。ロキはドラゴンの攻撃を剣で受け止めたらしい。
打撃に顰めた顔で要望するロキに応えようと素早く兎姿のラピと鳥姿のウインドバードを召喚した。
ロキはいつも口は悪いが今回ばかりは仕方のないことだ。ドラゴンが攻撃をしてくるというこんなときにぼーっとしている人間がいれば命が惜しくないのかと問いたくなる。
ロキはともかく、剣を構えているユークを見ればもう解決方法はこれしかないのだと思い知らされた。
「お前は下がってろ」
「リキが離れすぎると私も消えちゃうぴょん」
「そういえばそうか、めんどくせ。だったらこいつが消えない範囲で下がってろ」
思いもしなかった気遣いにリキはロキの背中を見る。肩に乗せているラピが警告をしたがそれでも下がってろと言う。
ドラゴンの攻撃を防ぎドラゴンへ攻撃する。そんな二人にリキができることなんて防御魔法を発動することくらいしかない。
自分はなんて無力なんだとリキは思う。防御魔法のおかげでドラゴンの火玉などの攻撃を軽減できてはいるが、それはリキ自身が守っているわけではないのだ。
召喚獣がついてくれれば攻撃魔法を使えることもできるが、その召喚獣が他の者についているときには使えない。つまりラピがロキに付加属性としてついていればリキは炎魔法を使えないのである。
バードも同じで、バードがユークに付加属性としてついていれば使えるはずの風魔法が使えない。ユークがある程度の範囲にいてくれなければバードはでてきてくれない。だから風魔法を使えるときは炎魔法を使うときより限られている。
ラピはロキの召喚獣であるまえにリキの召喚獣。リキだけでいつでも呼びだせるラピの炎魔法はバードの風魔法と違って自由に使える。が、ラピがロキについしまっていてはリキには何もできないのだ。
便利そうで不便な面もある。単純そうで力の発揮の仕方は複雑。それがリキの召喚獣。
「は。なんかやばそうなんだけど」
「やばそうじゃなくてやばいんじゃない?」
上空を見て二人は余裕のない声を出す。
空中に舞い上がったドラゴンは口を大きくあけそこに大きなエネルギーを生み出していた。
今まで小さな火玉をはいていたりしていたがそれとは比べほどにならない。
ドラゴンは自分たちを本気で排除しようとしているのだとリキはやっと確信した。
彼らを、協力してくれている二人を傷つかせるわけにはいかない。
衝動的にユークとロキの前まで走ってドラゴンの前に立ちはだかれば、真剣味を帯びた声を背中を向けたままリキは二人にむける。
「私の背中にいて。どの範囲守れるのかわからない」
未だに溜め続けられている大きくなっていく火玉。
その火玉で橋を壊すことなど容易いこと。橋を壊されれば学園と外を繋ぐ唯一の道がなくなってしまう。それだけではない、ここにいる全員に危害が加わることは確か。それは絶対にあってはならない。
自分だけならまだいい。自分だけ傷つくなら。
「何言ってんだよ。あんなの受け止めようとしてんのか?」
「受け止めるしか助からない。そうリキは悟ったんだろう」
「つか受け止められるのかよ。いくら防御魔法が使えるからといって……」
「だから背中に隠れてろって意味なんじゃない?」
「俺たちをかばうって言うのか? 自分を犠牲にして」
「違う。ちゃんとシールドで守るから、お願いだから私の背中にいて」
もうそろそろ火玉がはかれそうだ。
ロキは酷く心配した顔でリキの背中に言われた通り移動する。ユークもそれ以上は何も言わずにリキの背中についた。
大丈夫、大丈夫。リキは自分にそう言い聞かせる。
召喚獣を戻して全ての魔力をシールドに注ぐ。できるのであれば橋の破壊も防ぎたい。できるだけ広範囲に、一点は強壁に。
ドラゴンが火玉をはく。
禍々しくメラメラと燃えている炎。直径一メートルはありそうだ。
そんな火玉がリキのシールドにぶち当たる。
大丈夫、大丈夫。もうそんなことは考えられていられなかった。
目の前の火玉をどうすればいいのか。威圧を感じながらリキは冷や汗をかく。
受け止めたはいいが火玉をどうするか考えていなかった。このままではシールドでずっと受け止めたままになってしまう。それではリキのシールドがもたない。
平和を望む者同士がなぜ争いをするのかリキには理解ならなかった。
戦いをすれば平和ではなくなる、戦いをしなければ平和でいられる。
それは単純な考えなのだとわかっていながらもそれが一番の平和的解決なのではないか。と、それしか思いつかなかった。
ドラゴンが学園の方へ飛んでいくのを見てリキたちは学園へやってきた。
まさか学園を襲おうとしているとは予想していなかったが襲おうとしているらしい。サラビエル講師はすでに気絶している。ドラゴンがとどめを刺す寸前だった。
相手が敵意丸出しならこちらも立ち向かう他ない。けれどーー。
「……っ。おいリキ、召喚獣くらいだせよ」
考え込んでいたリキははっとする。ロキはドラゴンの攻撃を剣で受け止めたらしい。
打撃に顰めた顔で要望するロキに応えようと素早く兎姿のラピと鳥姿のウインドバードを召喚した。
ロキはいつも口は悪いが今回ばかりは仕方のないことだ。ドラゴンが攻撃をしてくるというこんなときにぼーっとしている人間がいれば命が惜しくないのかと問いたくなる。
ロキはともかく、剣を構えているユークを見ればもう解決方法はこれしかないのだと思い知らされた。
「お前は下がってろ」
「リキが離れすぎると私も消えちゃうぴょん」
「そういえばそうか、めんどくせ。だったらこいつが消えない範囲で下がってろ」
思いもしなかった気遣いにリキはロキの背中を見る。肩に乗せているラピが警告をしたがそれでも下がってろと言う。
ドラゴンの攻撃を防ぎドラゴンへ攻撃する。そんな二人にリキができることなんて防御魔法を発動することくらいしかない。
自分はなんて無力なんだとリキは思う。防御魔法のおかげでドラゴンの火玉などの攻撃を軽減できてはいるが、それはリキ自身が守っているわけではないのだ。
召喚獣がついてくれれば攻撃魔法を使えることもできるが、その召喚獣が他の者についているときには使えない。つまりラピがロキに付加属性としてついていればリキは炎魔法を使えないのである。
バードも同じで、バードがユークに付加属性としてついていれば使えるはずの風魔法が使えない。ユークがある程度の範囲にいてくれなければバードはでてきてくれない。だから風魔法を使えるときは炎魔法を使うときより限られている。
ラピはロキの召喚獣であるまえにリキの召喚獣。リキだけでいつでも呼びだせるラピの炎魔法はバードの風魔法と違って自由に使える。が、ラピがロキについしまっていてはリキには何もできないのだ。
便利そうで不便な面もある。単純そうで力の発揮の仕方は複雑。それがリキの召喚獣。
「は。なんかやばそうなんだけど」
「やばそうじゃなくてやばいんじゃない?」
上空を見て二人は余裕のない声を出す。
空中に舞い上がったドラゴンは口を大きくあけそこに大きなエネルギーを生み出していた。
今まで小さな火玉をはいていたりしていたがそれとは比べほどにならない。
ドラゴンは自分たちを本気で排除しようとしているのだとリキはやっと確信した。
彼らを、協力してくれている二人を傷つかせるわけにはいかない。
衝動的にユークとロキの前まで走ってドラゴンの前に立ちはだかれば、真剣味を帯びた声を背中を向けたままリキは二人にむける。
「私の背中にいて。どの範囲守れるのかわからない」
未だに溜め続けられている大きくなっていく火玉。
その火玉で橋を壊すことなど容易いこと。橋を壊されれば学園と外を繋ぐ唯一の道がなくなってしまう。それだけではない、ここにいる全員に危害が加わることは確か。それは絶対にあってはならない。
自分だけならまだいい。自分だけ傷つくなら。
「何言ってんだよ。あんなの受け止めようとしてんのか?」
「受け止めるしか助からない。そうリキは悟ったんだろう」
「つか受け止められるのかよ。いくら防御魔法が使えるからといって……」
「だから背中に隠れてろって意味なんじゃない?」
「俺たちをかばうって言うのか? 自分を犠牲にして」
「違う。ちゃんとシールドで守るから、お願いだから私の背中にいて」
もうそろそろ火玉がはかれそうだ。
ロキは酷く心配した顔でリキの背中に言われた通り移動する。ユークもそれ以上は何も言わずにリキの背中についた。
大丈夫、大丈夫。リキは自分にそう言い聞かせる。
召喚獣を戻して全ての魔力をシールドに注ぐ。できるのであれば橋の破壊も防ぎたい。できるだけ広範囲に、一点は強壁に。
ドラゴンが火玉をはく。
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そんな火玉がリキのシールドにぶち当たる。
大丈夫、大丈夫。もうそんなことは考えられていられなかった。
目の前の火玉をどうすればいいのか。威圧を感じながらリキは冷や汗をかく。
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