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魔法召いのブレェス
黒ドラゴンとの戦い2
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「サラビエル講師!?」
驚いている人間の存在に一番驚いているのがドラゴンなのだが、ドラゴンの先に倒れているサラビエルをリキは目を見開いて見ている。
後ろから続いてやってくる者たちが声をあげる。
「急に走るんじゃねえって言ってるだろ」
「俺も静かにしようって言ったんだけど、ロキ。ほら見つかっちゃった」
様子見にちらっとドラゴンを見て目が合ってしまったユークは溜め息をついて走りを止める。
「俺のせいじゃねえだろ。リキが急に走り出して声出すから……って、サラビエル講師?」
「これはそういう状況かな」
二人ともサラビエル講師の姿を目にとめて、目の前にいるドラゴンが敵なのだと確信する。
「お前たちは何者だ?」
「俺たちのほうこそそれを聞きたいんだけど、君は俺たちの敵? ……だよね」
「お前たちがそう思うのならそうのだろう。この女はお前たちの仲間か?」
「そうといえばそうだけど。俺たちの大切な仲間を裏切った人でもあるんだよね」
「裏切り者か」
ドラゴンと冷静に会話するユークの傍で、ロキはドラゴンに対して敵対心丸出しで今にも剣を抜いてしまいそうである。が、リキの声がそれを止める。
「あなたは何をしようとしているのですか?」
「何を、か。我はここを潰そうとやってきた」
「なぜそんなことをしようとするのですか?」
「なぜ? お前は不思議なことを聞くやつだな」
はたとドラゴンは不思議そうにし、まじまじとリキを見る。その瞳は強い、けど弱い。説得を試みているが異なる相手にそれが通じるか不安なのだろうとドラゴンは推測する。
「我を襲ってきたからだ。以前と同じようにあいつらは我をここへ連れてこようとしたのだろう」
それを聞いてリキの瞳が陰る。やっぱり何もできなかった、と。
初めは、ドラゴンへ危害を与えないようにと書かれたものを討伐機関に手渡したものだと思っていた。けれどそれは違った。
サラビエル講師を疑いもなく信じていたリキだが、本人に真実を聞かされドラゴンの討伐依頼の封書を討伐機関に全て渡してしまったのだと思い知った。
必死にあれは手違いなのだと討伐機関に言い回ったが相手にされなくそれが原因で、ドラゴンが学園を潰しにやってきてしまった。
討伐機関への依頼の封書の本当の内容は今目の前にいる黒いドラゴンを学園へ連れてくることだったようだが、リキに疑問がうまれる。
なぜ特定のドラゴンを学園へ連れてこようとするのか。以前と同じように、ということはターゲットを彼に定めている確率が高いのかもしれない。
「以前もということは前にも連れてこられたということですよね? どうしてそのとき連れてこられたのかわりますか?」
「なぜだろうな。我から子を奪おうとしたのかもしれないな。けれど今回は復讐のため、だったらしい」
「復讐ーーか。君もそのためにやってきたんだよね? 俺たちは平和を望んでいる。お互いそんなものなくして穏やかに共存しようよ」
子と復讐という単語に黙ってしまったリキの代わりに、ユークは恐れたそぶりもせず何を考えているのかわからない明るい表情をドラゴンに見せた。
「無理だ。今さらそんなこと。平和を捨てたのはお前ら人自身だ。それを我が拾ってわざわざ返してやるとでも? そんなことする義理はない」
ユークはリキの思いを無下にはしたくなかった。だからリキの思っているであろうことをドラゴンに提案した。だが結果はだめだった。予想通りだ。
リキは現実を見ないと諦めない。だから真実を見せた。希望を打ち砕いたようだが仕方ないことだ。
「やっぱりだめか。まあ俺もあんたの立場だったらおんなじこと思うと思うよ。それも自分に力があればやりたい放題だろうね。気にくわないもの全て排除ーー。でも俺はそんなことさせないから」
ユークの低い声が引き金となり、その引き金をドラゴンが開始の合図として引いた。
驚いている人間の存在に一番驚いているのがドラゴンなのだが、ドラゴンの先に倒れているサラビエルをリキは目を見開いて見ている。
後ろから続いてやってくる者たちが声をあげる。
「急に走るんじゃねえって言ってるだろ」
「俺も静かにしようって言ったんだけど、ロキ。ほら見つかっちゃった」
様子見にちらっとドラゴンを見て目が合ってしまったユークは溜め息をついて走りを止める。
「俺のせいじゃねえだろ。リキが急に走り出して声出すから……って、サラビエル講師?」
「これはそういう状況かな」
二人ともサラビエル講師の姿を目にとめて、目の前にいるドラゴンが敵なのだと確信する。
「お前たちは何者だ?」
「俺たちのほうこそそれを聞きたいんだけど、君は俺たちの敵? ……だよね」
「お前たちがそう思うのならそうのだろう。この女はお前たちの仲間か?」
「そうといえばそうだけど。俺たちの大切な仲間を裏切った人でもあるんだよね」
「裏切り者か」
ドラゴンと冷静に会話するユークの傍で、ロキはドラゴンに対して敵対心丸出しで今にも剣を抜いてしまいそうである。が、リキの声がそれを止める。
「あなたは何をしようとしているのですか?」
「何を、か。我はここを潰そうとやってきた」
「なぜそんなことをしようとするのですか?」
「なぜ? お前は不思議なことを聞くやつだな」
はたとドラゴンは不思議そうにし、まじまじとリキを見る。その瞳は強い、けど弱い。説得を試みているが異なる相手にそれが通じるか不安なのだろうとドラゴンは推測する。
「我を襲ってきたからだ。以前と同じようにあいつらは我をここへ連れてこようとしたのだろう」
それを聞いてリキの瞳が陰る。やっぱり何もできなかった、と。
初めは、ドラゴンへ危害を与えないようにと書かれたものを討伐機関に手渡したものだと思っていた。けれどそれは違った。
サラビエル講師を疑いもなく信じていたリキだが、本人に真実を聞かされドラゴンの討伐依頼の封書を討伐機関に全て渡してしまったのだと思い知った。
必死にあれは手違いなのだと討伐機関に言い回ったが相手にされなくそれが原因で、ドラゴンが学園を潰しにやってきてしまった。
討伐機関への依頼の封書の本当の内容は今目の前にいる黒いドラゴンを学園へ連れてくることだったようだが、リキに疑問がうまれる。
なぜ特定のドラゴンを学園へ連れてこようとするのか。以前と同じように、ということはターゲットを彼に定めている確率が高いのかもしれない。
「以前もということは前にも連れてこられたということですよね? どうしてそのとき連れてこられたのかわりますか?」
「なぜだろうな。我から子を奪おうとしたのかもしれないな。けれど今回は復讐のため、だったらしい」
「復讐ーーか。君もそのためにやってきたんだよね? 俺たちは平和を望んでいる。お互いそんなものなくして穏やかに共存しようよ」
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「無理だ。今さらそんなこと。平和を捨てたのはお前ら人自身だ。それを我が拾ってわざわざ返してやるとでも? そんなことする義理はない」
ユークはリキの思いを無下にはしたくなかった。だからリキの思っているであろうことをドラゴンに提案した。だが結果はだめだった。予想通りだ。
リキは現実を見ないと諦めない。だから真実を見せた。希望を打ち砕いたようだが仕方ないことだ。
「やっぱりだめか。まあ俺もあんたの立場だったらおんなじこと思うと思うよ。それも自分に力があればやりたい放題だろうね。気にくわないもの全て排除ーー。でも俺はそんなことさせないから」
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