魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

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魔法召いのブレェス

それぞれの3

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 西にある『ブリゲイド』にはフウコとシルビアが所属しているのだが、そこへある人物が現れた。

「やっほ~。ひさしぶり」
「なっ。なんでここに……」

 青色の髪をした人物はにこやかに笑い顔の横で手を振りながらフウコに近寄る。

「あいつはどうしたの」
「リキと一緒だと思うよ」
「一緒って、ドラゴンとの旅?」

 ライハルトは頷くかわりに呆れたように笑う。任務中にも関わらずあのファウンズは『力を貸す』なんて言ってなぜかリキとの同行を決めたようで、自分もと微かに思ったがそんな現実味のない話についていけるわけもなくーーこうしてフウコとシルビアのいる安全地帯にやってきた。

「僕だけ一人だとつまらないから、やっぱりフウコと一緒がいいなって」
「……」

 フウコは顔を青くする。即浮かんだ五文字の単語は、おぞましい。
 いつもこんなことを言うやつではない。幼馴染ーー腐れ縁な関係だからわかる。さりげなさすぎたから素で言ったぽかったがそうではないだろう。冗談で言ったとしてもフウコには大ダメージだ。

「仲良しなんだね」

 ライハルトはフウコの近くにいた金髪の男子と目が合う。自分より一年早く卒業したから、フウコより再開するのがその期間分遅いのだろう。

「もちろん、シルビアもいたからここにしたんだ。フォースには苦手なお兄さんとモンキーさんがいるから。ここが一番安全地帯だと思って」
「あそこにいるのはユークとロキだよねーー?」
「そういうところ、すぐにわからないところが純粋でいいと思うよ」

 お兄さんがユークで、モンキーがロキ。不思議そうにいったシルビアがそれを理解していないことがわかって、自分より年上なのに純粋っていうかなんていうか、といい意味でいっても呆れてしまう。

「あそこが嫌ならトループにすればよかったじゃない」
「トループ……?」

 フウコの言ったものを復唱し、それに関してのことを思い出す。

「ああ、キラーのいるところか。あそこは何かとブラックだよね。一人で駆り出されることもあるみたいだし。わざわざ命を危機に放り出すような真似はしないよ。恐いじゃん」

 おどけて言うライハルトだが、トループは本当に怖いところだ。
 出撃には最低二人、援護と攻撃が行くことになっている。三人の場合は援護二人、攻撃一人か……援護一人、攻撃二人の組み合わせ。必ずどちらのタイプも選ばれるのだ。任務の難易度に合わせて、グループなんてことも多々ある。
 そうしているところがあるのに関わらず、難易度は考慮されず一人で行かされる。これでは単なるソロだ。隊に所属している意味がない。
 そんなところにルーファースはいるのだ。

「好きで入ったのかしらね。そうじゃなかったら教えておくんだったわ」

 関わりないけど、好きじゃないけど。

「報酬もいいし、たぶんちゃんと考えて入ったんじゃない。早急にお金を貯めておきたいとか。ともかく僕たちが心配する必要ないよ」

 ライハルトの言葉にフウコは、ん? と理解してない顔をしてから察した。

「心配してないわよ」
「してるじゃん」



 ライハルトとフウコの噂している南にある『トループ』に所属するルーファースには、難解な任務が与えられていた。そこには派遣であるロザントの姿もある。

「なんでこんなところにしたのよ」
「なんでって、報酬がいいから?」
「こんな大物相手に二人って、馬鹿なんじゃないの」
「本当はお前がディスパッチでこなきゃ俺が一人で相手するはずだったんだけどな」
「あなたハゲたいの? こんな超過酷なこと続けてたらいつか死ぬわよ」
「死ぬのもわるくないかもな」

 話しているうちに敵はノックアウト。ルーファースが鎌を振り回しての、ロザントの魔法攻撃での援護。派遣として北南西東にある機関に所属するメンバー全員と戦闘を共にしたが、一番連携プレーができていた。不覚にもロザントはそう思った。

「こんなつまらない世界、魔物を倒すことしか楽しみのない世界で生きていても意味ないのかもな」

 おかしなことを言うルーファースをロザントは哀れんだ目で見る。
 かわいそうな人……魔物を倒すことでしか楽しみを感じることのできないなんて、そんなの魔物と同じじゃない。
 魔物が何かを考えて人間に害をなしているように見えない。そこに目の前に敵がいるからただ襲っているだけ。そう知能なんてないのだ。
 それと同じ、ルーファースは何も考えていない。
 何も考えたくないのだろうか。

「あなたって、意外と子供なのね」

 残酷なことばかりしてきた、大人で、窮屈な思いをしてきたから子供である自分の殻に耐えかねて暴走しているのだと思っていた。だが、そうではなかった。ただの幼稚(コドモ)だったのだ。

「七歳並の身長のやつに言われたくねえよ」
「誰が七歳並よ! せめて十……いえ、私はもう二十一よ!」
「ふっ……かわいそうだな」
「七歳並の神経しているあなたこそかわいそうだわ」
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