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魔法召いのブレェス
飛行 交渉
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「なかなか、五人となると重いものだな」
雲近い空を舞う。
ドラゴンの背中にはリキとシルビア。手の中には左から順にファウンズ、ロキ、ユーク。
小さく見える地上が恐ろしくみえ、真ん中にいるロキがドラゴンに反発する。
「それぜってえー嘘だろ。てかおろせ」
「今離されたら、終わりだろ」
「だからだよ。もうなんか落ちそうで怖えんだよ」
胸板と手に挟まれ運ばれているロキたちは、足がぶらぶらと揺れている状態で、それでも冷静な物言いをするファウンズに自然と怒りが増す。
その横で、髪をなびかせ涼しい顔して変わる景色を眺めているユークは気分上昇中。
「俺は結構この眺めいいと思うけど。爽快」
「そりゃお前の頭ん中が爽快なだけだよ」
「ロキ。誰にも黙って落としていい?」
涼やかな風を味わい聞き流していたかと思えば、その表情のままロキに顔を向けた。
「(俺がいまこの状況で落ちたら誰が落としたかフツーにわかるだろ)」
さすがのロキも黙った。
「じゃ、呼んでくる」
学園に到着し、入口で降ろされたユークは先に進む。振り返ると、同じように手から降ろされた直立しているだけのロキとファウンズを目に止めた。
「お前らもだろ。手に抱えられていた二人組」
二人は視線だけを交わし、先に目線を落としたロキはめんどくせと口にしながらも歩みを始める。
「リキたちは待ってて。そのドラゴン見張ってて」
ドラゴンの背中から降りたシルビアとリキは目を合わせた。
「ドラゴンは襲うなということか。そのかわりドラゴンには魔物たちを消し去る任務を与えるが、ちゃんとそれは果たしてもらえるんだろうな?」
サラビエル講師とドラゴンが向き合う。
ユークたちに連れて来られたサラビエル講師はドラゴンを一目見、これはどういうことだと説明を求めた。ドラゴンは好き好んで人間を襲わないということ聞いても、驚愕といったほどの反応は見せなかった。
「ドラゴンにはドラゴンである私が伝える」
「では監視としてここにいるメンバーを連れていくことを要求する」
「私は運搬屋ではない。常に背中に乗せていいと思えるのはリキのみ」
「一人だけとなるとリキ・ユナテッドの身に及ぶ危険の確率が高くなる。が、それでもいいのか?」
「心配ない。何があってもリキは私が守る」
ドラゴンのリキへ対する想いが他とは違うと察したサラビエル講師は、その条件を承諾することにした。いつどこでどんな出会い方をしたのかは知らないが偽りのない言葉だと信じることができたからだ。
一人だけ新しい任務を与えられたリキはドラゴンの背中に乗り、行ってきますと空へ消えた。心寂しい気持ちもあっただろうがドラゴンたちのことを考え、その気持ちを飲み込んだのだろう。
リキがいなくなり、シルビアは物言いたげな顔をする。
「あまり驚いていなかったようですけど、ドラゴンが喋るってこと知ってたんですか?」
「いやそれは知らなかった」
「知能があるってことは知ってたんですね」
「薄々気づいていた。だが……」
ユークの勘にさらっと答えたサラビエル講師はうつむく。
「人間とドラゴンは共存できない。いつか人間を滅ぼす元凶となるものなら、こちらが先に滅ぼすまでだ」
ああ、とユークは思った。だからこの人は知っていても何もせず、狩るという選択肢しか用意していなかったのだろうと。
それなら納得ができる。外来物であるかのように魔物を消し去ろうとする世界のシステム。その〝魔物〟とひとくくりされているドラゴン。
強大な力を持つドラゴンは攻撃しないとしても、その嘘か誠かわからないものを鵜呑みにして傷つくのならいっそ、隙をついて殲滅した方がいい。それが大人たちの考えることなのだ。
もちろん大概の魔物は知能がなく目にした者全てを襲うため、魔物の全滅は全ての者が願っている。リキを含めて。
この地上は滅びすぎた。村も町も。
だから魔物を倒す方法を学ぶ学園や、魔物を滅ぼそうとする機関、独立して狩人までいる。
ユークが子供の頃はドラゴンを狩ろうという意向はまだ確立していなかった。ファウンズの父親が亡くなったあたりからドラゴンの調査などが始まり今になってはドラゴンは魔物と同類。神秘な生物、鳥の進化か何か、そう謳われていたドラゴンが命を狙われるようになったのは人間が弱いから。
弱いから傷つくまえに〝ソレ〟を消そうとする。
雲近い空を舞う。
ドラゴンの背中にはリキとシルビア。手の中には左から順にファウンズ、ロキ、ユーク。
小さく見える地上が恐ろしくみえ、真ん中にいるロキがドラゴンに反発する。
「それぜってえー嘘だろ。てかおろせ」
「今離されたら、終わりだろ」
「だからだよ。もうなんか落ちそうで怖えんだよ」
胸板と手に挟まれ運ばれているロキたちは、足がぶらぶらと揺れている状態で、それでも冷静な物言いをするファウンズに自然と怒りが増す。
その横で、髪をなびかせ涼しい顔して変わる景色を眺めているユークは気分上昇中。
「俺は結構この眺めいいと思うけど。爽快」
「そりゃお前の頭ん中が爽快なだけだよ」
「ロキ。誰にも黙って落としていい?」
涼やかな風を味わい聞き流していたかと思えば、その表情のままロキに顔を向けた。
「(俺がいまこの状況で落ちたら誰が落としたかフツーにわかるだろ)」
さすがのロキも黙った。
「じゃ、呼んでくる」
学園に到着し、入口で降ろされたユークは先に進む。振り返ると、同じように手から降ろされた直立しているだけのロキとファウンズを目に止めた。
「お前らもだろ。手に抱えられていた二人組」
二人は視線だけを交わし、先に目線を落としたロキはめんどくせと口にしながらも歩みを始める。
「リキたちは待ってて。そのドラゴン見張ってて」
ドラゴンの背中から降りたシルビアとリキは目を合わせた。
「ドラゴンは襲うなということか。そのかわりドラゴンには魔物たちを消し去る任務を与えるが、ちゃんとそれは果たしてもらえるんだろうな?」
サラビエル講師とドラゴンが向き合う。
ユークたちに連れて来られたサラビエル講師はドラゴンを一目見、これはどういうことだと説明を求めた。ドラゴンは好き好んで人間を襲わないということ聞いても、驚愕といったほどの反応は見せなかった。
「ドラゴンにはドラゴンである私が伝える」
「では監視としてここにいるメンバーを連れていくことを要求する」
「私は運搬屋ではない。常に背中に乗せていいと思えるのはリキのみ」
「一人だけとなるとリキ・ユナテッドの身に及ぶ危険の確率が高くなる。が、それでもいいのか?」
「心配ない。何があってもリキは私が守る」
ドラゴンのリキへ対する想いが他とは違うと察したサラビエル講師は、その条件を承諾することにした。いつどこでどんな出会い方をしたのかは知らないが偽りのない言葉だと信じることができたからだ。
一人だけ新しい任務を与えられたリキはドラゴンの背中に乗り、行ってきますと空へ消えた。心寂しい気持ちもあっただろうがドラゴンたちのことを考え、その気持ちを飲み込んだのだろう。
リキがいなくなり、シルビアは物言いたげな顔をする。
「あまり驚いていなかったようですけど、ドラゴンが喋るってこと知ってたんですか?」
「いやそれは知らなかった」
「知能があるってことは知ってたんですね」
「薄々気づいていた。だが……」
ユークの勘にさらっと答えたサラビエル講師はうつむく。
「人間とドラゴンは共存できない。いつか人間を滅ぼす元凶となるものなら、こちらが先に滅ぼすまでだ」
ああ、とユークは思った。だからこの人は知っていても何もせず、狩るという選択肢しか用意していなかったのだろうと。
それなら納得ができる。外来物であるかのように魔物を消し去ろうとする世界のシステム。その〝魔物〟とひとくくりされているドラゴン。
強大な力を持つドラゴンは攻撃しないとしても、その嘘か誠かわからないものを鵜呑みにして傷つくのならいっそ、隙をついて殲滅した方がいい。それが大人たちの考えることなのだ。
もちろん大概の魔物は知能がなく目にした者全てを襲うため、魔物の全滅は全ての者が願っている。リキを含めて。
この地上は滅びすぎた。村も町も。
だから魔物を倒す方法を学ぶ学園や、魔物を滅ぼそうとする機関、独立して狩人までいる。
ユークが子供の頃はドラゴンを狩ろうという意向はまだ確立していなかった。ファウンズの父親が亡くなったあたりからドラゴンの調査などが始まり今になってはドラゴンは魔物と同類。神秘な生物、鳥の進化か何か、そう謳われていたドラゴンが命を狙われるようになったのは人間が弱いから。
弱いから傷つくまえに〝ソレ〟を消そうとする。
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