魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

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魔法召いのブレェス

ドラゴンとの関係〈提案〉

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 茫然としたままの四人ーーロキ、ファウンズ、シルビア、ユークの前ではドラゴンとリキが親しげに話す姿。
 ドラゴンが言葉を交わすことのできる者だと衝撃をくらった後続けざまリキとドラゴンが知り合いだというありえもしない事実に動揺が隠せなかった。

「話ぶったぎるようで悪いんだけど二人とも知り合いか?」

 恐る恐るにロキは訊く。

「幼い頃に出会った大きな鳥さん」
「大きな鳥?」
「だと思ってたけど本当はドラゴンだったみたいで」

 目の前にいる純白の大きな鳥はドラゴン。それを知ったのは今。
 本当に知らなかったわけではない。大きな鳥さんのことを思い出し、なんとなくあれはドラゴンだったのではないかと考えた日があった。でもやっぱり大きな鳥さんは大きな鳥さん。
 考えが変わることはなかった。記憶の中にいるのは大きな鳥だったから。

「ドラゴンと知り合いとか。恐くなかったわけ? その小さいリキは」

 ロキ、ファウンズと続いてユークの問いにリキは少し考える。
 彼との思い出が薄れていたからこそリキは彼のことを客観的に見ることができ、ドラゴンだと認識した。だということは答えはひとつ。

「大きな鳥、だと思ってたから」
「(そのメンタルなに。……精神的なものというより、捉え方の問題か)」

 さも当然かのように言われユークは戸惑う。

「大きな鳥さんはその、人間を攻撃するつもりはないんだよね?」
「ああ」
「だったらそれをサラビエル講師に伝えるっていうのはどうかな」

 ぎこちなくドラゴンに話しかけたシルビアは名案とでもいうようにリキたちに顔を向ける。
 納得がいかないのはドラゴンだった。

「それはどいうことだ」
「他のドラゴンもそうなの? 君と同じ、人間を攻撃しない?」
「……自ら恨まられるようなことを無意味にするやつらではない」
「だったらさ、そうしようよ」
「……?」

 ドラゴンには理解ならなかった。シルビアの言っていることが。

「ドラゴンが害をなすものじゃないと伝える。そうだよね」

 リキの言ったことにドラゴンが目を見開きシルビアが頷く。
 自分が害をなすものではないと会ってもいない人間に伝わるなんて考えもみなかったドラゴンにとってその言葉は嬉しいものだった。ひとつの可能性が生まれるようでもあった。
 害をなすものではないと全ての人間に知れ渡ればこうやって隠れ過ごす意味も、ひなたに当たる場所を恐れる理由もなくなる。自由になれる。
 翼があっても自由ではない。そんな可哀想なドラゴンたちが羽ばたける世界になってくれるのではないかと。
 幾年過ぎてもいい。そんな世の中になってくれるのなら。

「送ってやろう」

 背中に乗れとドラゴンは促した。
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