魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

文字の大きさ
上 下
31 / 71
魔法召いのブレェス

ドラゴンの吐息

しおりを挟む
 完全に意識を取り戻したドラゴンは起き上がり自分の足元にいるリキたちを見下ろした。

「どうして魔物は人々を攻撃しようとするの」

 いままで渦巻いていた疑問が口をついて出る。
 魔物を前にして直接聞きたかったのだ。答えがないとしても。
 ドラゴンの瞳が光る。真剣な表情で瞳で自分のことを捉えているリキが、姿形の違う自分を〝感情のある者〝として見ていると感じた。

「人間は魔物を消そうとし、魔物も人間に危害を加える。どちらが正しいのか私にはわからない。ただ私は、人間が魔物の範囲内である私を消そうとしてくるから身を守る。それだけの話」

 それだけ、が、重いように聞こえた。

「ドラゴンが……」
「喋った……」

 ロキとシルビアが驚愕とした顔でドラゴンを見つめる。ファウンズとユークもそれ相応に驚き。紅色の目でドラゴンを目視したままのリキも瞳孔を一瞬開いた。
 ドラゴンと魔物をひとくくりにしてはならない。単純にいえばそういうことだろう。
 知能があり人の言葉を喋るドラゴンは他の獣などの魔物とは違う。そう気づくことに目のあたりにした。気持ちを伝える機能があり、感情がある。それ以上に必要なものはない。
 彼(ドラゴン)とは戦わなくていい。

「少なくとも私たちは貴方を攻撃したりしない」
「だとしてもきっと他の人間(やつら)が殺しにくる。そこにいる者が私を攻撃してきたように」

 そう言ってファウンズに視線を移す。
 なんでかわからなかった。

「この人は何もしてないよ。ただ鎖を解くために近寄っただけで」
「前の話だ」

 誤解しているのだ、そう理解して弁明しようとしたところファウンズ自身が認めるような発言をした。それははっきりと、悪気なく。
 当然リキは愕然とする。他の者も。ユークを省いて。

「そっちの者も、他のドラゴンを攻撃しているところを見た」

 次に視線の的となった彼は都合が悪そうに軽く冷嘲する。

「わからなかったから、じゃ、言い訳にならないかな。俺はドラゴンが喋るなんて思ってもみなかったし気持ちがあるとも思っていなかった。ドラゴンが人間を攻撃する知能のない魔物だと思っていたから駆除しようとしていただけ」
「おい、言い方」

 ユークの苛烈な皮肉にロキが制す。
 いつもなら逆の立場。ロキがきついことを言ってそれをユークが留める。それがお決まり。二人の性格上それが決まった形だった。

「人間もドラゴンも互いを知らないんだね。互いを知らないから衝突し合う」

 シルビアの言った通りもう止められないのかもしれない。これまで攻撃しあっていたから。でも……とリキは思う。こうやって戦わなくてすむこともあるのだからそれを繰り返していくうちに知り合うことができるのではないか、と。
 リキは去ろうとするドラゴンを呼び止める。

「どこへ行くの?」
「願っているのは安息の地。ずっと探しているがそんな場所はない。私は命が尽きるまでその場所を探そうと思っている」

 懐かしい、なぜ。
 何か、思い当たる。

「さらば」
「待って」

 思わず口にした。

「もしかしてーー大きな、鳥さん……?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

処理中です...