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魔法召いのブレェス

召喚獣の息抜き

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 休憩ということで野原にて足を止めた。
 何もすることがないとラピは暇を持て余す。他の召喚獣も戦闘中に喚びだされ、出現したまま。戦闘毎に喚びだすほうがコストがかかるといった考えあってのこと。
 ラピはまずラッキーと話をし、了承を得たのか背中に乗りハイな気分を味わう。猫姿をしているラッキーの三分の一程度の大きさをしているラピ。背中に乗るには丁度いい大きさで、全速力で走るラッキーとともに爽快な風を体全体に浴び大満足したラピは次にスイリュウを構うことにした。構われることにした、のほうが見ているほうとしては至当。

「なにしてるんだぴょん」
「……」
「なにしてるんだぴょん!」

 スイリュウは相変わらずの無言。傍らにはやはりファウンズの姿。木に寄りかかり座るファウンズの肩あたりにスイリュウが浮いている。
 イラッとしたラピは強硬手段をとることにした。ファウンズの腕に飛び乗り肩までよじ登るとそのままスイリュウへジャンプ&突進。スイリュウに接触することに成功した。
 しかし大きさが同じくらいなため、スイリュウのほうが少し大きいといったくらいなため浮いているスイリュウにしがみつくので精一杯。ラッキーとのように風を楽しんだりすることはできないと察するとあっけなくその手を離した。
 地に着地するのを失敗し頭から一回転する。

「つまらないぴょん。何かするぴょん」
「……」
「何でもいいから何かするぴょん!」

 不満が一瞬にして溜まりスイリュウへ叫ぶ。すると風の音とともに飛んできたバードがラピにくちばしをお見舞いする。

「なにするんだぴょん!」

 逃げ回るラピを追いかけ回す。
 スイリュウから一定の距離離れたところでウインドバードの攻撃はやんだ。攻撃といっても体に触れるだけの弱いものだ。
 ラピが抗議しようとしたところでバードが予想外な行動をとった。空中を軽やかに飛んでいたバードが地に着地したのだ。まるで背中に乗れと言っているかのような態度。意図は何なのか注意深く観察しながらもラピは恐る恐るその背中に乗った。
 ちゃんと掴まったのを確認するとバードは羽根を広げ空を飛んだ。

 ラピの機嫌を直したバードとラピの機嫌をこわしたスイリュウは互いに喋れずともいい感じの空気感ができあがり。バードとラッキーの場合はバードがラッキーに構い合わせることで知人(知獣)の壁を越えた。ラッキーはスイリュウのどうでもいい、他人(他獣)は興味ないといった態度を感じとることなくジャンプしたりしてその距離を縮めている。

 だいたい主(あるじ)と同じ関係。

 ロキの使い召喚獣は『ラピ』、ファウンズは『スイリュウ』、シルビアは『ラッキー』、ユークは『ウインドバード』。
 ラピの間接的な主人の【ロキ】は仲間ということがあるためスイリュウの間接的な主人【ファウンズ】にまとわりつこうとするがファウンズはそれを完全拒否する。
 ラッキーの間接的な主人の【シルビア】とファウンズはどちらも一定のところで距離をおいている。
 ウインドバードの間接的な主人【ユーク】とファウンズは近くもなく遠くもない、いい距離を保つも完全につくことはしない。
 シルビアとロキはなんだかんだいって調子が合う。ロキとの間にファウンズが入った場合ユークが大人な態度をとり仲を取り繕っている。シルビアとユークでは、鈍感なシルビアにユークが対応している。

「なんか自由だね」
 楽しんでいる召喚獣たちを見てシルビアは思う。
「なんだっけ、現地調査だっけ。ドラゴンがどの辺に潜んでるかって」
「出会った魔物全てと戦うっていうのは中々ハードだけど……あ、俺のバードがいればそんなハードな命令も楽々こなせる、ってね」
 苦い顔をしてロキはユークのギャグをスルーする。
「いつ学園に戻る、つか、いつ戻っていいんだ」
「ハートが砕けるまで」
「資本金を与えられた以上、それが尽きるかドラゴンを見つけ出すか。そのどちらか」
「俺のハートが砕けそうなんだけど、砕けた場合はどうする?」
「お前さっきからうるさい」
 せっかくファウンズが大事なことを言ったのに台無しだ。
「年上に向かってお前とかうるさいとかないと思うな。ライハルトはもっと年上に敬意を払う子だったよ」
「ライハルトとかいまどーでもいい。他人と比べるのはどーかと思うけどおじさん」
 ライハルトというのは同クラスの男子生徒。この場にはいない。
「いまなんつった? おじさん? お兄さんの聞き間違いだよな」
 穏やかな声が逆に恐ろしい。
「……いま何歳?」
「21」
「いい歳してるのにな」
「おかげさまで」
「そのわりに精神年齢は低いよな」
「ロキには言われたくない台詞ナンバーワンだね。ワンだけに、三回回ってワンする?」
「しねーよ。つか、しねよ」
「うん、俺が悪かったかな」
 しらけてしまったのは自分が始めた寒いジョークのせいだとユークは反省した。ジョークというものは始めてしまうとやめどきがわからない。それでもその過ちをシルビアは察していなかった。リキも同様、仲良いなとそれだけを思っていた。
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