魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

文字の大きさ
上 下
29 / 71
魔法召いのブレェス

召喚獣の息抜き

しおりを挟む
 休憩ということで野原にて足を止めた。
 何もすることがないとラピは暇を持て余す。他の召喚獣も戦闘中に喚びだされ、出現したまま。戦闘毎に喚びだすほうがコストがかかるといった考えあってのこと。
 ラピはまずラッキーと話をし、了承を得たのか背中に乗りハイな気分を味わう。猫姿をしているラッキーの三分の一程度の大きさをしているラピ。背中に乗るには丁度いい大きさで、全速力で走るラッキーとともに爽快な風を体全体に浴び大満足したラピは次にスイリュウを構うことにした。構われることにした、のほうが見ているほうとしては至当。

「なにしてるんだぴょん」
「……」
「なにしてるんだぴょん!」

 スイリュウは相変わらずの無言。傍らにはやはりファウンズの姿。木に寄りかかり座るファウンズの肩あたりにスイリュウが浮いている。
 イラッとしたラピは強硬手段をとることにした。ファウンズの腕に飛び乗り肩までよじ登るとそのままスイリュウへジャンプ&突進。スイリュウに接触することに成功した。
 しかし大きさが同じくらいなため、スイリュウのほうが少し大きいといったくらいなため浮いているスイリュウにしがみつくので精一杯。ラッキーとのように風を楽しんだりすることはできないと察するとあっけなくその手を離した。
 地に着地するのを失敗し頭から一回転する。

「つまらないぴょん。何かするぴょん」
「……」
「何でもいいから何かするぴょん!」

 不満が一瞬にして溜まりスイリュウへ叫ぶ。すると風の音とともに飛んできたバードがラピにくちばしをお見舞いする。

「なにするんだぴょん!」

 逃げ回るラピを追いかけ回す。
 スイリュウから一定の距離離れたところでウインドバードの攻撃はやんだ。攻撃といっても体に触れるだけの弱いものだ。
 ラピが抗議しようとしたところでバードが予想外な行動をとった。空中を軽やかに飛んでいたバードが地に着地したのだ。まるで背中に乗れと言っているかのような態度。意図は何なのか注意深く観察しながらもラピは恐る恐るその背中に乗った。
 ちゃんと掴まったのを確認するとバードは羽根を広げ空を飛んだ。

 ラピの機嫌を直したバードとラピの機嫌をこわしたスイリュウは互いに喋れずともいい感じの空気感ができあがり。バードとラッキーの場合はバードがラッキーに構い合わせることで知人(知獣)の壁を越えた。ラッキーはスイリュウのどうでもいい、他人(他獣)は興味ないといった態度を感じとることなくジャンプしたりしてその距離を縮めている。

 だいたい主(あるじ)と同じ関係。

 ロキの使い召喚獣は『ラピ』、ファウンズは『スイリュウ』、シルビアは『ラッキー』、ユークは『ウインドバード』。
 ラピの間接的な主人の【ロキ】は仲間ということがあるためスイリュウの間接的な主人【ファウンズ】にまとわりつこうとするがファウンズはそれを完全拒否する。
 ラッキーの間接的な主人の【シルビア】とファウンズはどちらも一定のところで距離をおいている。
 ウインドバードの間接的な主人【ユーク】とファウンズは近くもなく遠くもない、いい距離を保つも完全につくことはしない。
 シルビアとロキはなんだかんだいって調子が合う。ロキとの間にファウンズが入った場合ユークが大人な態度をとり仲を取り繕っている。シルビアとユークでは、鈍感なシルビアにユークが対応している。

「なんか自由だね」
 楽しんでいる召喚獣たちを見てシルビアは思う。
「なんだっけ、現地調査だっけ。ドラゴンがどの辺に潜んでるかって」
「出会った魔物全てと戦うっていうのは中々ハードだけど……あ、俺のバードがいればそんなハードな命令も楽々こなせる、ってね」
 苦い顔をしてロキはユークのギャグをスルーする。
「いつ学園に戻る、つか、いつ戻っていいんだ」
「ハートが砕けるまで」
「資本金を与えられた以上、それが尽きるかドラゴンを見つけ出すか。そのどちらか」
「俺のハートが砕けそうなんだけど、砕けた場合はどうする?」
「お前さっきからうるさい」
 せっかくファウンズが大事なことを言ったのに台無しだ。
「年上に向かってお前とかうるさいとかないと思うな。ライハルトはもっと年上に敬意を払う子だったよ」
「ライハルトとかいまどーでもいい。他人と比べるのはどーかと思うけどおじさん」
 ライハルトというのは同クラスの男子生徒。この場にはいない。
「いまなんつった? おじさん? お兄さんの聞き間違いだよな」
 穏やかな声が逆に恐ろしい。
「……いま何歳?」
「21」
「いい歳してるのにな」
「おかげさまで」
「そのわりに精神年齢は低いよな」
「ロキには言われたくない台詞ナンバーワンだね。ワンだけに、三回回ってワンする?」
「しねーよ。つか、しねよ」
「うん、俺が悪かったかな」
 しらけてしまったのは自分が始めた寒いジョークのせいだとユークは反省した。ジョークというものは始めてしまうとやめどきがわからない。それでもその過ちをシルビアは察していなかった。リキも同様、仲良いなとそれだけを思っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

処理中です...