魔法召いのリキ・ユナテッド

リオ

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魔法召いのブレェス

旅のはじまりは

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 年に二度のクラス替えをし、リキ・ユナテッド、ロキ・ウォンズ、シルビア・シルフォン、ファウンズ・キル、ユーク・リフの五名が同クラスとなった。他、ライハルトにフウコ。それとなぜかロザント。
 主にクラス替えは自身の希望に添ったもので行われる。クラス替え前に配られる紙、それには『(戦闘場での)相性が良い人』と書かれていて空欄に誰かの名前を入れるようになっている。わかりやすくも単純なクラス替えの仕方だ。【書かれた名の者】が【書いてくれた相手の名】を書けば高確率で同クラスとなり、【書かれた名の者】が【書いてくれた相手の名】を書かなければ一定の確率で同クラスとなる。
 その結果が伝えられることはない。
 リキは【ロキ・ウォンズ】【シルビア・シルフォン】【ファウンズ・キル】【ユーク・リフ】の四名の名を書き込んだ。理由は召喚獣と深く関わりがあるから。スイリュウはファウンズがいなければ召喚できない、ラッキーはシルビアがいなければ召喚できない、ウインドバードはユークがいなければ召喚できない。ラピはロキと仲が良い。
 ライハルトとフウコの二名のことは友達として名を書いた。
 リキ・ユナテッドとロザントが紙に書き込んだため同クラスとなったが、そのことをリキは知らない。席も遠く離れており、同クラスだということに気づくのにも遅かった。



 サラビエル講師同行のもと任務にその五名が選ばれた。
 このことが偶然でないとすれば、それは全員一致した回答に意外性を感じたサラビエル講師が試しに行ったということ。
 リキが四名の名を書いたように他の四名もリキの名を紙に書き込んだ。理由は皆同じ、召喚獣の存在。
 確か前にちんけな召喚獣らしきものがファウンズについていたなとサラビエル講師はドラゴンとの戦いを思い出し、他の者もそれに関係したものではないのかという思いにいたった。
  つくづく珍しいメンバーだ。フウコとは女同士で友達として名を書いたのだとしたら、ライハルトのことはその幼馴染でついでに仲良くなったのだろうと二人のことは憶測できた。ロキやファウンズとは同クラスで顔を合わせることはあるだろう。しかしあのクラスの中で近寄りがたい|No.1(ナンバーワン)、|2(ツー)に親しみを示させるとは。戦闘場での、と強調しても二人は前年誰の名も書かなかった。その前の年もだ。ロキは同クラスの者と適当につるむことをしてもその【誰か】を定めることはせず、隠れ一匹狼のようだった。正真正銘の一匹狼のファウンズは、その纏う空気のおかげというべきか誰も近づくことはなく本当に一人だった。あいつらが……、という気持ちは思いがけないものでサラビエル講師はその仲が見たいと思った。戦闘場での相性が良いということだけが理由ならおもしろい。どれだけ息が合った戦いができるのか。
 シルビアとユークの場合は別クラスのためリキとどこで接触したのかわからない。任務でたまに会うくらいの仲だったはず、会う機会が滅多にないなかでどう親しんだのか。
 年に二度、前期後期にクラス替えをするのは交流を確かなものとするためだ。



 「今日からお前たち五名でドラゴンの調査に向かってもらう。もちろん、出会った魔物らは全て消滅させること」
「ーーえ? と、は? ……お前らなんか思うことないの」
 一人だけ反応していることにロキは驚いているのは自分だけかと周りをみれば、皆理解していなさそうな顔をしている。
 リキとシルビアは真のもので。ファウンズとユークはわかっていながらも平然としたようなものだ。
「魔物との交戦は見させてもらった。不足はないだろう。リキ・ユナテッド、お前は回復魔法を使えるうえ、他の者たちに力を与えることができる。何が縁かは知らんが皆ランクの高いやつのみ」
 ロキ・ウォンズ、ランク【力】A【協力性】B。シルビア・シルフォン、ランクAA。ファウンズ・キル、ランクSA。ユーク・リフ、ランクSS。
 それぞれを左から順に一瞥し、サラビエル講師は告げる。
「弱い者たちを集めるより効率がいいと考えた。これは実戦にみたてた訓練ではなく、ここの生徒として貢献してもらうため行ってもらうものである。そのことをふまえて、個人の意識を高めるように」
(弱い者たちとか言っちゃってるよ、この人)
 講師が生徒を弱い者呼ばわりしていいのか。
 ロキの正当な突っ込みは誰にも聞こえていない。



「五人でとか考えらんねえんだけど」
「まあ楽しそうでいいんじゃない」
 好天の下、太陽の光が五人を照らす。涼やかな平原を歩くなか最初に言葉を発したのはロキで、納得いっていなさそうな彼と沈黙している皆にとユークが陽気に言った。それでも沈黙は続く。
「心配?」
 不安そうなリキをシルビアが覗く。
 講師の同行もなく魔物と戦う、それもドラゴンの調査も兼ねて。それは初めてで、何かあったらーーと思うと怖くてたまらない。
「大丈夫だよ。リキちゃんは俺が守るから」
 自信のある笑顔。
 横目で見ていたユークは頼もしそうにし、ロキは無表情のまま。
「よくそんな台詞言えるよな」
「え、変?」
「変とかじゃねえけど……なあ、ファウンズ」
 隣にいるファウンズに話をふる。
「なにか言えばいいのか?」
「普通に思ったこと言えばいいんだよ」
 つまらない返しに、半端呆れた目で見返す。
 そこにユークが割り込む。
「ファウンズはそういうことできないからね。不器用だから。戦闘中は器用なんだけどなあ」
「不器用一人に器用三人か」
「不器用二人に器用三人だよ。リキ入れ忘れてる」
「こいつ不器用か?」
 ロキがリキを指差し、器用っていうほど器用じゃねえけど、不器用ってほど不器用じゃねえ、普通か?
 そう言うロキに皆が何ともいえない眼差しを向ける。
 軽い笑いをしたユークは企みのある表情で。
「(|+(プラス))不器用一人はロキに決まってるじゃない。なあ、ファウンズ」
「同意」
「そこで同意すんな。お前、不器用組なんだぞ」
「一緒にするな」
 組は一緒だろ、とロキはカチンとくる。
「ファウンズの不器用は人相手ーー全般的なもので、ロキのは人への気遣いとか優しさとかそういったのをうまく表現できないところだと俺は見解する」
「勝手に見解すんな。推測だけしとけ」
 脅すように拳をつくる。しかしその行為は無意味。
「なんか皆、楽しそうだよね」
「どこかだ!? どこをどう見たらそうなる。お前はバカか? ……ーーああ、天然(バカ)だったな」
 微笑ましそうにするシルビアを見て、今更ながら彼の第一印象を思い出す。
「ロキはシルビアのどこをどう見てそう思ったの。シルビアが天然(バカ)なんて今更のことじゃない。ねえ、ファウンズ」
「……どうして俺ばかりに振る」
「振らないと何も喋らないからだろ。バーカ」
 おふざけモードなユークを見定めるファウンズ。
 そんな皆を見ていると心配事が和む。
「皆といれば、大丈夫。そんな気がする」
 いつもと同じ。それがお気楽な気分にさせてくれる。まるで『大丈夫』と言ってくれているようで。
 一人だけ悄然(しょうぜん)としていたリキが前向きになることで、無意識にそれぞれ気を引き締めることとなった。
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