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魔法召いのブレェス
四人目と召喚獣①
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「俺にも召喚獣ちょうだい」
それはそれはにこやかに前触れもなくリキの元へやってきたのはユーク・リフ。お互い中庭でファウンズのことについて話して以来。
銀髪に特徴的なエメラルドグリーンの瞳は好奇心に満たされている。といっても大人としての落ち着いた雰囲気は持ち合わせており、シルビアのような一方的な物言いではない。
ユークはファウンズが小さな竜を連れているところを見た。次会ったときに興味本位で問いてみれば関係ないと一言で済まされ、逆に興味が湧いてしまい。
とある任務の話を聞いてユークは確信した。ファウンズの傍にいたのは召喚獣だったのだと。それも女子生徒が言うには長髪の女の子が喚び出したとのことで、淡い紅色の瞳といえばリキだろうと核心にいたったのだ。ちび竜をファウンズが連れていたとき、傍はリキがいた。
「召喚獣ってそんな簡単に新しいのが次々と生まれるとは思えないけど」
「だれ?」
それまでいたライハルトに今気づいたかのようにするユークに、ライハルトは無表情のまま「この人と同じクラス」と答えた。
中庭まで来たユークはガゼボを覗き、そこにいないと思ったら辺りを確認し、やっぱいないと半端残念そうに言う。
「ファウンズがいればコツとか教えてもらったのに」
前に同じようなことを誰かが言っていた。召喚獣がついてくれることにより使える必殺技。その特別な技を自分より先にそれも″新入り″のようなやつに使われたロキは、コツを教えろと上から目線で頼んだ。だがファウンズから返ってきた言葉は意味不明なものであまり役に立たなかった。
「その必要はないぴょん。召喚獣が欲しいならリキと仲良くなることが第一だぴょん」
「リキと仲良く? なるほど」
自分に仕える召喚獣が欲しいのならコツはいらない。ライハルトの肩に乗っているラピからそう聞くと、ユークは納得したようにどこかへ視線を向け、歩む。
「そう簡単に生まれるわけないよ。ってなにやってるんですか」
「いや仲良くしようと思って」
リキの頭を撫でるユークに突っ込みを入れるライハルトだが、安易な答えに呆れる。
おとなしく撫でられているリキは手懐けられている小動物のようでそれにも呆れる。急な急すぎることに対処できていないということは不思議そうな瞳から伝わるが、やめてくださいの一言は言えるだろう。それか、嫌がる素振りでもいい。
それをしないのがリキ。嫌ではないことを指している。それでは止める必要がない。
「それ仲良くしようとしてる行為ですか」
一瞬の触れ合いだけで親しい関係を築けるわけがない、自分のように比較的長く一緒にいるようではないと。仲良くなることができたとしても召喚獣が生まれるかは別の話。
「意外。君は年上と感じた人に対しても敬語とか使わない子かと思ってたのに」
驚きの表情を一変させ、偉い偉いなんて言いながらライハルトの頭を撫でる。どうやらライハルトはこういうタイプが苦手なようだ。いつも無表情に近い穏やかな顔をしているのに今ではわかりやすいほどゆがんでいる。
「殴りますよ、本気で」
本気と書いてマジと読む。ライハルトにとって基本中の基本のことで、そう言って殴ならないのも偉いね、なんて年下扱い全開なユークに対しライハルトの両手は拳をつくっていた。
実際ライハルトの方が年下なのだがどうも気に食わない。それはユークが、同年代より友好的で年下のようだが纏う雰囲気は大人、というなんとも支離滅裂な第一印象を抱いたから。
「リキの召喚獣が欲しいとか言う人現れた」
「リキとは初対面?」
「まあそれなりに」
授業中に無駄話をするのは日課に近いことで、ユークの名を告げずにライハルトは幼馴染であるフウコに報告する。
仲良くなろうとしていたところを見ると、それほど仲の良い関係ではなかった。
「まじふざけんなって言ってやれば良かったじゃん。こっちが先だ、って」
「それが年上っぽくてそう言えなかったり。それにペットとかよく考えてみたら最後まで面倒みるとか責任取れないし、潔く諦めようかなって」
「……ペットってまさか召喚獣のこと? アンタ本当例えが何ていうか……」
ヘタといより独創的。その前に例える意味。
ライハルトは子供の頃からそうだったからフウコは慣れている。慣れてはいるが馬鹿さ加減に呆れることはある。
「彼女から離れるとそれまで存在していた召喚獣は消える。彼女の傍に寄れば召喚可能となりその召喚獣は喚び出すことができるーーけど、離れてしまえば消えてしまう。そんなの悲しいだろ。生まれてきた召喚獣の自由がない」
今までと同じ真面目なトーンなのだが話の内容から真剣さが伝わり、フウコは書く手を止め黙考する。
召喚獣は共存することはできるが単独では存在することができない。簡単にいうとそういうことで、もっと簡単にいえば召喚獣はある者がいなければ召喚されることは叶わず、生まれた″だけ″となってしまう。
ある者というのは二人を示す。例えていうならばスイリュウーー『スイリュウが好いているファウンズ』と『召喚師であるリキ』が互いに傍にいないとスイリュウは出現しない。ラッキーも同様、ラッキーが好いているシルビアと召喚師であるリキが互いに傍にいないとラッキーの召喚は失敗する。
三匹のうち一匹、ラピは例外だ。ラピはリキの召喚獣。
認識している主人が召喚師なら必要とするのはその召喚師だけであって、リキがいる限りラピはいつでもどこでも自由に出現することができる。
「確かにそうだけど、悲しいってだけじゃないんじゃない? それにしても不思議よね、そういうシステムっていうの? なんで共鳴したもの同士が近くにいないと召喚できないのかしら」
わりと早くフウコの答えは出た。メリットがあればデメリットもある。楽しい日があればそれが終わる日もあるということだ。
それよりもリキの出す召喚獣の仕組みについてフウコは納得がいかなかった。
一度生まれたからといって永遠と存在し続けるわけではない。
そういう仕組みは、便利なものだからこそあるハンデなのか。
それはそれはにこやかに前触れもなくリキの元へやってきたのはユーク・リフ。お互い中庭でファウンズのことについて話して以来。
銀髪に特徴的なエメラルドグリーンの瞳は好奇心に満たされている。といっても大人としての落ち着いた雰囲気は持ち合わせており、シルビアのような一方的な物言いではない。
ユークはファウンズが小さな竜を連れているところを見た。次会ったときに興味本位で問いてみれば関係ないと一言で済まされ、逆に興味が湧いてしまい。
とある任務の話を聞いてユークは確信した。ファウンズの傍にいたのは召喚獣だったのだと。それも女子生徒が言うには長髪の女の子が喚び出したとのことで、淡い紅色の瞳といえばリキだろうと核心にいたったのだ。ちび竜をファウンズが連れていたとき、傍はリキがいた。
「召喚獣ってそんな簡単に新しいのが次々と生まれるとは思えないけど」
「だれ?」
それまでいたライハルトに今気づいたかのようにするユークに、ライハルトは無表情のまま「この人と同じクラス」と答えた。
中庭まで来たユークはガゼボを覗き、そこにいないと思ったら辺りを確認し、やっぱいないと半端残念そうに言う。
「ファウンズがいればコツとか教えてもらったのに」
前に同じようなことを誰かが言っていた。召喚獣がついてくれることにより使える必殺技。その特別な技を自分より先にそれも″新入り″のようなやつに使われたロキは、コツを教えろと上から目線で頼んだ。だがファウンズから返ってきた言葉は意味不明なものであまり役に立たなかった。
「その必要はないぴょん。召喚獣が欲しいならリキと仲良くなることが第一だぴょん」
「リキと仲良く? なるほど」
自分に仕える召喚獣が欲しいのならコツはいらない。ライハルトの肩に乗っているラピからそう聞くと、ユークは納得したようにどこかへ視線を向け、歩む。
「そう簡単に生まれるわけないよ。ってなにやってるんですか」
「いや仲良くしようと思って」
リキの頭を撫でるユークに突っ込みを入れるライハルトだが、安易な答えに呆れる。
おとなしく撫でられているリキは手懐けられている小動物のようでそれにも呆れる。急な急すぎることに対処できていないということは不思議そうな瞳から伝わるが、やめてくださいの一言は言えるだろう。それか、嫌がる素振りでもいい。
それをしないのがリキ。嫌ではないことを指している。それでは止める必要がない。
「それ仲良くしようとしてる行為ですか」
一瞬の触れ合いだけで親しい関係を築けるわけがない、自分のように比較的長く一緒にいるようではないと。仲良くなることができたとしても召喚獣が生まれるかは別の話。
「意外。君は年上と感じた人に対しても敬語とか使わない子かと思ってたのに」
驚きの表情を一変させ、偉い偉いなんて言いながらライハルトの頭を撫でる。どうやらライハルトはこういうタイプが苦手なようだ。いつも無表情に近い穏やかな顔をしているのに今ではわかりやすいほどゆがんでいる。
「殴りますよ、本気で」
本気と書いてマジと読む。ライハルトにとって基本中の基本のことで、そう言って殴ならないのも偉いね、なんて年下扱い全開なユークに対しライハルトの両手は拳をつくっていた。
実際ライハルトの方が年下なのだがどうも気に食わない。それはユークが、同年代より友好的で年下のようだが纏う雰囲気は大人、というなんとも支離滅裂な第一印象を抱いたから。
「リキの召喚獣が欲しいとか言う人現れた」
「リキとは初対面?」
「まあそれなりに」
授業中に無駄話をするのは日課に近いことで、ユークの名を告げずにライハルトは幼馴染であるフウコに報告する。
仲良くなろうとしていたところを見ると、それほど仲の良い関係ではなかった。
「まじふざけんなって言ってやれば良かったじゃん。こっちが先だ、って」
「それが年上っぽくてそう言えなかったり。それにペットとかよく考えてみたら最後まで面倒みるとか責任取れないし、潔く諦めようかなって」
「……ペットってまさか召喚獣のこと? アンタ本当例えが何ていうか……」
ヘタといより独創的。その前に例える意味。
ライハルトは子供の頃からそうだったからフウコは慣れている。慣れてはいるが馬鹿さ加減に呆れることはある。
「彼女から離れるとそれまで存在していた召喚獣は消える。彼女の傍に寄れば召喚可能となりその召喚獣は喚び出すことができるーーけど、離れてしまえば消えてしまう。そんなの悲しいだろ。生まれてきた召喚獣の自由がない」
今までと同じ真面目なトーンなのだが話の内容から真剣さが伝わり、フウコは書く手を止め黙考する。
召喚獣は共存することはできるが単独では存在することができない。簡単にいうとそういうことで、もっと簡単にいえば召喚獣はある者がいなければ召喚されることは叶わず、生まれた″だけ″となってしまう。
ある者というのは二人を示す。例えていうならばスイリュウーー『スイリュウが好いているファウンズ』と『召喚師であるリキ』が互いに傍にいないとスイリュウは出現しない。ラッキーも同様、ラッキーが好いているシルビアと召喚師であるリキが互いに傍にいないとラッキーの召喚は失敗する。
三匹のうち一匹、ラピは例外だ。ラピはリキの召喚獣。
認識している主人が召喚師なら必要とするのはその召喚師だけであって、リキがいる限りラピはいつでもどこでも自由に出現することができる。
「確かにそうだけど、悲しいってだけじゃないんじゃない? それにしても不思議よね、そういうシステムっていうの? なんで共鳴したもの同士が近くにいないと召喚できないのかしら」
わりと早くフウコの答えは出た。メリットがあればデメリットもある。楽しい日があればそれが終わる日もあるということだ。
それよりもリキの出す召喚獣の仕組みについてフウコは納得がいかなかった。
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