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魔法召いのブレェス
リキの災難6
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「押されてるぜ。キルさんよ」
リキが平常心を取り戻した時にはそんな声が聞こえた。まるで悪人のようである。
赤髪の男子生徒ともう一人の男はどちらも接近戦の武器使い。
接近戦だと二対一。不利である。
(私の代わりに誰かがいてくれれば)
未だ震えを覚えている体で考える。
ーー本はどこ。
周囲を見ると本はあるページで開かれていた。
本に全て目を通していたのだが、最初はなんのことかと思って飛ばしたページ。
こんなこと可能なのかわならないがやってみるしかない。この二日でわかったこと。それは魔法はやってみなければわからないということ。
これしかない。相棒を増やす方法。
思いきり目を瞑って、念じて。
「召喚魔法! ……とにかく何でもいいからでてきて!」
召喚魔法という言葉に二人の男が驚きつつも、その後の適当な台詞に拍子抜けをする。
「なんだよ。驚かせやがって」
が、突風が吹き荒れた。
風が収まるとともに出てきたのは一匹の兎だった。
小さな手足でぴょんぴょんと近寄ってくる兎。
「ご主人様、これからヨロシクぴょん」
「よ、よろしくお願いします」
先程の登場の仕方を見て驚きを隠せないリキは、尻もちをついたまま畏った態度を見せた。
「リキ・ユナテッド。力C協力性C。ファウンズ・キル。協力性Bに昇格」
戦闘は途中で止められた。もういい、データは取れたと。表示される残りライフはそれぞれまだあったのだが、戦いの見極めをサラビエル講師はつけたようだ。
協力性がBならば力評価はどうなのだろう。
リキはファウンズにお礼をしてから教室に戻ることにした。
午後の授業は基本自由時間。演習室で一度戦闘を終えれば後は何をしていても良いのである。
「Sよ。一番最高評価」
教室にいたフウコに聞くとファウンズの力評価はSだという。すごい人だったんだ。と感嘆する。フウコとライハルトを一人で相手にするようだから納得もいく。
「それより聞きたいことがあるんだけど……その頭に乗ってるウサギは何?」
フウコの視線の先にいるのはリキの頭に乗っている小さな兎。
「最初、髪飾りかなんかか思ったんだけど動くし。どこで拾ってきたの、それ」
「失礼ぴょん! 私は動物じゃなく召喚獣ぴょん!」
「召喚獣? てか喋った」
先ほどまで肩に乗っていたのだがいつの間にか頭に乗っていた。
「いつの間に召喚獣なんて出せるようになったの」
「さっきの演習試験時になんとなく叫んでみたらこんな可愛いコが出てきた」
「出てきたって……」
ーー魔法もまともに使えなかったはずなのに、こんな。
「召喚獣か。初めてこんな近くで見た」
「いつ湧いて出てきた」
「人聞きの悪い」
なんともない顔でライハルトはじっと兎を見つめる。
「召喚獣なんて出せる人は少ないし、出せる人は皆戦闘以外で連れていないから貴重だな。……けど一番気になるのは大きさ。どうしてこんなに小さい」
「失礼極まりないぴょん! ひとを大きさで判断してはいけないぴょん。ご主人様、この人たち一体なんなんだぴょん」
「何って、クラスメートだよ」
「クラスメートっていうより友達でしょ」
当然のようにフウコが言う。
「こんな人たちがご主人様の友達なんてありえないぴょん! 悪影響を受けるぴょん」
「うさぴょん。そんな酷いこと言っちゃ駄目だよ。人との関わりはとても大事なんだから。二人とも良い人たちだよ」
「うさぴょん……?」
「ここに来て最初にできた友達なの。うさぴょんにも二人と仲良くしてほしい」
「うさぴょんって言ったよね?」
フウコが首を傾げる中、リキの話は続いていた。そんな様子を見ていたライハルト。
「うさぎが語尾にぴょんを使うからうさぴょんか。可愛いところもあるんだね。見た目からしてそうだけど」
頭に乗るうさぎと話しているリキを見ては微かに笑んだ。
「そういえば試験はどうだった?」
「力Cに協力性C」
自室でベッドに横になりながら喋る。
低い評価だとは思うが、最低ランクでなかったことにはある程度満足している。フウコはどうなの? と問えば。
「私はBB。っていってもあいつのせいで協力性のランク下がったんだけどね」
溜め息をつくように言う。
『なんで私がBBであんたがBA……』
『突っかかってきたのは君だし。僕は宥めていただけだからね』
ある日の演習試験。その結果はフウコにとって納得のいくものではなかった。
「今思い出してもむかつくわ。ついいつものように口喧嘩しちゃって、私だけ下げられたのよ」
戦闘中ちゃんと話し合いながら戦略を立て、同じような戦い方をしたはずなのにライハルトの協力性の評価ランクは自分より一つ上。それはつまり、ついしてしまった口喧嘩が原因で自分だけ評価ランクが下げられたということだ。実際のところはわからないが、フウコはそうだと信じている。
ライハルトと話をしているフウコは良い感じではないがリキからしてみれば二人は仲が良く見える。喧嘩するのは相手との距離が近すぎるからか、心がよくすれ違うからか。どちらかというと前者だろう。しかし、仲が本当に悪いなら今でも一緒にいるわけない。
「二人はどういう関係?」
「幼馴染。よくある腐れ縁」
一緒に入学までしたとのこと。
「そのウサギ寝ちゃってるんじゃない」
フウコに言われ枕元を見る。その横にはちょこりんと存在するうさぎ。起きていた時はあんなにもうるさかったのに眠っているととても静か。その可愛さにふっと笑う。
眠りを覚まさせないよう静かに手元に収める。
「もしかして一緒に寝る気? 大丈夫? 潰したりしない?」
大丈夫だよと返し、おやすみ、とうさぎにも声をかけた。
リキが平常心を取り戻した時にはそんな声が聞こえた。まるで悪人のようである。
赤髪の男子生徒ともう一人の男はどちらも接近戦の武器使い。
接近戦だと二対一。不利である。
(私の代わりに誰かがいてくれれば)
未だ震えを覚えている体で考える。
ーー本はどこ。
周囲を見ると本はあるページで開かれていた。
本に全て目を通していたのだが、最初はなんのことかと思って飛ばしたページ。
こんなこと可能なのかわならないがやってみるしかない。この二日でわかったこと。それは魔法はやってみなければわからないということ。
これしかない。相棒を増やす方法。
思いきり目を瞑って、念じて。
「召喚魔法! ……とにかく何でもいいからでてきて!」
召喚魔法という言葉に二人の男が驚きつつも、その後の適当な台詞に拍子抜けをする。
「なんだよ。驚かせやがって」
が、突風が吹き荒れた。
風が収まるとともに出てきたのは一匹の兎だった。
小さな手足でぴょんぴょんと近寄ってくる兎。
「ご主人様、これからヨロシクぴょん」
「よ、よろしくお願いします」
先程の登場の仕方を見て驚きを隠せないリキは、尻もちをついたまま畏った態度を見せた。
「リキ・ユナテッド。力C協力性C。ファウンズ・キル。協力性Bに昇格」
戦闘は途中で止められた。もういい、データは取れたと。表示される残りライフはそれぞれまだあったのだが、戦いの見極めをサラビエル講師はつけたようだ。
協力性がBならば力評価はどうなのだろう。
リキはファウンズにお礼をしてから教室に戻ることにした。
午後の授業は基本自由時間。演習室で一度戦闘を終えれば後は何をしていても良いのである。
「Sよ。一番最高評価」
教室にいたフウコに聞くとファウンズの力評価はSだという。すごい人だったんだ。と感嘆する。フウコとライハルトを一人で相手にするようだから納得もいく。
「それより聞きたいことがあるんだけど……その頭に乗ってるウサギは何?」
フウコの視線の先にいるのはリキの頭に乗っている小さな兎。
「最初、髪飾りかなんかか思ったんだけど動くし。どこで拾ってきたの、それ」
「失礼ぴょん! 私は動物じゃなく召喚獣ぴょん!」
「召喚獣? てか喋った」
先ほどまで肩に乗っていたのだがいつの間にか頭に乗っていた。
「いつの間に召喚獣なんて出せるようになったの」
「さっきの演習試験時になんとなく叫んでみたらこんな可愛いコが出てきた」
「出てきたって……」
ーー魔法もまともに使えなかったはずなのに、こんな。
「召喚獣か。初めてこんな近くで見た」
「いつ湧いて出てきた」
「人聞きの悪い」
なんともない顔でライハルトはじっと兎を見つめる。
「召喚獣なんて出せる人は少ないし、出せる人は皆戦闘以外で連れていないから貴重だな。……けど一番気になるのは大きさ。どうしてこんなに小さい」
「失礼極まりないぴょん! ひとを大きさで判断してはいけないぴょん。ご主人様、この人たち一体なんなんだぴょん」
「何って、クラスメートだよ」
「クラスメートっていうより友達でしょ」
当然のようにフウコが言う。
「こんな人たちがご主人様の友達なんてありえないぴょん! 悪影響を受けるぴょん」
「うさぴょん。そんな酷いこと言っちゃ駄目だよ。人との関わりはとても大事なんだから。二人とも良い人たちだよ」
「うさぴょん……?」
「ここに来て最初にできた友達なの。うさぴょんにも二人と仲良くしてほしい」
「うさぴょんって言ったよね?」
フウコが首を傾げる中、リキの話は続いていた。そんな様子を見ていたライハルト。
「うさぎが語尾にぴょんを使うからうさぴょんか。可愛いところもあるんだね。見た目からしてそうだけど」
頭に乗るうさぎと話しているリキを見ては微かに笑んだ。
「そういえば試験はどうだった?」
「力Cに協力性C」
自室でベッドに横になりながら喋る。
低い評価だとは思うが、最低ランクでなかったことにはある程度満足している。フウコはどうなの? と問えば。
「私はBB。っていってもあいつのせいで協力性のランク下がったんだけどね」
溜め息をつくように言う。
『なんで私がBBであんたがBA……』
『突っかかってきたのは君だし。僕は宥めていただけだからね』
ある日の演習試験。その結果はフウコにとって納得のいくものではなかった。
「今思い出してもむかつくわ。ついいつものように口喧嘩しちゃって、私だけ下げられたのよ」
戦闘中ちゃんと話し合いながら戦略を立て、同じような戦い方をしたはずなのにライハルトの協力性の評価ランクは自分より一つ上。それはつまり、ついしてしまった口喧嘩が原因で自分だけ評価ランクが下げられたということだ。実際のところはわからないが、フウコはそうだと信じている。
ライハルトと話をしているフウコは良い感じではないがリキからしてみれば二人は仲が良く見える。喧嘩するのは相手との距離が近すぎるからか、心がよくすれ違うからか。どちらかというと前者だろう。しかし、仲が本当に悪いなら今でも一緒にいるわけない。
「二人はどういう関係?」
「幼馴染。よくある腐れ縁」
一緒に入学までしたとのこと。
「そのウサギ寝ちゃってるんじゃない」
フウコに言われ枕元を見る。その横にはちょこりんと存在するうさぎ。起きていた時はあんなにもうるさかったのに眠っているととても静か。その可愛さにふっと笑う。
眠りを覚まさせないよう静かに手元に収める。
「もしかして一緒に寝る気? 大丈夫? 潰したりしない?」
大丈夫だよと返し、おやすみ、とうさぎにも声をかけた。
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