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魔法召いのブレェス
リキの災難2
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朝のパーティー騒動は何だったのか、今度はルームに移動させられた。
間違いなく教室(ホームルーム)だろう。先生が立つであろうところを中心に、半円を描くよう長い机と椅子が綺麗に並べられている。縦三列、横三列。
会場からここへ当たり前のように移動してきた生徒たちをみれば、この異様な時間の使い方に慣れているのだろう。
席は自由なのかわからないが空いている席に座る。
「あれ会場で挨拶してた子じゃね」
「ああほんとだ」
ーー男子生徒二人に噂されてます。
「今日は授業ではなく演習をしてもらう。直ちに移動するように」
教室に入ってきた先生は早々に中心的にあるデスクの後ろに立ち、そう言った。
まだリキは入ってきたばかりだというのに。魔法も武器も扱えないのにどうしろというのか。これは色々なことに抗議するしかない。
「あの、先生」
手を挙げて、
「なんだ?」
冷たい視線をくらう。それでもめげずに立って事実を言う。
「私、魔法使えないんですけど」
沈黙する。周りの生徒たちも。
「だったら武器を手に取ればいい」
ーー武器……。それは絶対に嫌だった。ここは不満をぶちまけなくては。このままでは色々なことに流されたままである。
「……先生はどうして私を」
「無駄話はそこまでにしてくれないか」
意を決して問おうとしたのだがピシッと話の糸が切られた。
話だして数分。
「他の生徒の貴重な時間が無駄になる」
生徒たちのことを考えて発言したことだと理解できるから何とも言えない。
演習について号令をかけられた生徒たちが席を立つ中。
「リキ・ユナテッド。貴方はここに残るように」
何故か呼び止められた。
「ーー以上だ、他に質問は?」
サラビエル先生は厳しい人だと見受けられるが、それは性格がきちっとしているからなようである。生徒たちがいる中では会話自体を拒絶されていたようだが誰もいない一対一での時はちゃんと話してくれるのである。それはわかりやすく単調に。
先生の後をついていき教室を出ると先生は止まった。そこに生徒がいたからだ。
漆黒の髪をした男子生徒は向かいの壁側に立って一対一何をしていたのか。他の生徒たちは先生の言うことを聞いてどこかへ行った。……まさかの不良か。
「なんだいたのか、ファウンズ・キル」
先生はどうやら人をフルネームで呼ぶ癖があるらしい。
「どうした。何か気になることでも?」
精気の薄い目。漆黒の髪をした男子生徒は見た目からして大人な雰囲気がある。碧い瞳は意外と綺麗。
「あの時、回復魔法が使えたからいれたのか」
「目上の人には敬語を使うよう言ってるはずだが」
静かな睨み合い。威圧的な空気が二人の間に漂う。どちらも揺るがない。先生を見下ろす男子生徒は先生を見る目が変わらない。一方先生は冷たい目を武器に視線に鋭さを加え威圧感を出し、身長の高い彼を見上げている。
言い直そうとも謝ろうともしない男子生徒に呆れ、先生が息をつく。
「そうだ。それ以外にないだろう」
遮断していた質問に答えた。
「ああそうだ。丁度良い。お前がこの女と組んで演習に出てくれ」
え、と惚(ぼ)けた表情をするしかない。
「お前の腕の傷がきっかけでの新入生だ。それくらいしてもいいだろう?」
どこかで見たことある顔だなと思ったらあの時の人かと男子生徒を凝望(きょうぼう)する。あの時町に来て魔物を退治してくれた人だ。
彼は、わかったと一言。
先生と別れ、名も知らぬ男子生徒について行く。
長い廊下。彼の後を追いながら話しかけてもいいのか悩む。
「あの時は」
「すまなかった」
小さな声で重ねるように呟かれた。
彼はきっと自分のせいでこの学園に入りたいと願いもしない新入生が来てしまったと思ってる。さっきの先生の言葉で。けれど言いたいことはそんなことじゃなかった。謝ってほしいなんて思っていなかった。
ーー違うのに。腕の傷は本当になくなっていて大丈夫なのか、魔物と戦うのはどんなものなのか。他にも一つ大事なことを言おうと思ったのに、彼の〝領域に立ち入るな〟オーラに負けてしまった。
組んで早々実践になるとは。
大きいというところ以外一見普通の部屋だが、戦闘の演習をするための部屋は他のものと違うらしい。それは中に入ったらわかると。……わかった。
とても広く、所々に瓦礫(ガレキ)が無造作にあり、これは一個の作られたステージのような場所だ。
ここで戦闘の演習をするのか。戦闘の演習をする意味はここへ来て最初にあった男子生徒ーーシルビア・シルフォンに聞いている。外にいる魔物たちに立ち向かうため、力や協力性を磨くためにやるこのだと。戦闘の演習をするにもちゃんとした理由がある。
目の前にいる二人組はリキと同じように男女の組み合わせ。茶髪の女子生徒と青髪の男子生徒。女子生徒の特徴的なところ言えば短髪なところで、男子生徒の特徴的なところは眼鏡である。
「戦闘は初めてだよね」
「はい」
「じゃあ開始の合図として皆で〝戦闘(バトル)スタート〟って言うから。せーのって言って」
「せーの」
「バトルスタート」
青髪の人の言う通りにすると皆の声がはもった。しかし、隣の相棒、漆黒の彼だけ口を動かさなかったように見えたのは気のせいか。
開始の合図とともに二人組は後退する。相棒である黒髪の彼ーーファウンズ・キルは少しの間その場に立ったまま前を見据え、何かを考えている様。左手には漆黒の剣。
戦闘相手である女子生徒は短剣を両手に持ち、男子生徒は杖を持っていた。ファウンズ・キルは長剣。リキは支給品として渡された白い杖を手に持ち、本当に戦うのだと顔を怖ばせる。
漆黒の彼は動き出す。作戦とかアドバイスといったものは何もせず離れていってしまった。
間違いなく教室(ホームルーム)だろう。先生が立つであろうところを中心に、半円を描くよう長い机と椅子が綺麗に並べられている。縦三列、横三列。
会場からここへ当たり前のように移動してきた生徒たちをみれば、この異様な時間の使い方に慣れているのだろう。
席は自由なのかわからないが空いている席に座る。
「あれ会場で挨拶してた子じゃね」
「ああほんとだ」
ーー男子生徒二人に噂されてます。
「今日は授業ではなく演習をしてもらう。直ちに移動するように」
教室に入ってきた先生は早々に中心的にあるデスクの後ろに立ち、そう言った。
まだリキは入ってきたばかりだというのに。魔法も武器も扱えないのにどうしろというのか。これは色々なことに抗議するしかない。
「あの、先生」
手を挙げて、
「なんだ?」
冷たい視線をくらう。それでもめげずに立って事実を言う。
「私、魔法使えないんですけど」
沈黙する。周りの生徒たちも。
「だったら武器を手に取ればいい」
ーー武器……。それは絶対に嫌だった。ここは不満をぶちまけなくては。このままでは色々なことに流されたままである。
「……先生はどうして私を」
「無駄話はそこまでにしてくれないか」
意を決して問おうとしたのだがピシッと話の糸が切られた。
話だして数分。
「他の生徒の貴重な時間が無駄になる」
生徒たちのことを考えて発言したことだと理解できるから何とも言えない。
演習について号令をかけられた生徒たちが席を立つ中。
「リキ・ユナテッド。貴方はここに残るように」
何故か呼び止められた。
「ーー以上だ、他に質問は?」
サラビエル先生は厳しい人だと見受けられるが、それは性格がきちっとしているからなようである。生徒たちがいる中では会話自体を拒絶されていたようだが誰もいない一対一での時はちゃんと話してくれるのである。それはわかりやすく単調に。
先生の後をついていき教室を出ると先生は止まった。そこに生徒がいたからだ。
漆黒の髪をした男子生徒は向かいの壁側に立って一対一何をしていたのか。他の生徒たちは先生の言うことを聞いてどこかへ行った。……まさかの不良か。
「なんだいたのか、ファウンズ・キル」
先生はどうやら人をフルネームで呼ぶ癖があるらしい。
「どうした。何か気になることでも?」
精気の薄い目。漆黒の髪をした男子生徒は見た目からして大人な雰囲気がある。碧い瞳は意外と綺麗。
「あの時、回復魔法が使えたからいれたのか」
「目上の人には敬語を使うよう言ってるはずだが」
静かな睨み合い。威圧的な空気が二人の間に漂う。どちらも揺るがない。先生を見下ろす男子生徒は先生を見る目が変わらない。一方先生は冷たい目を武器に視線に鋭さを加え威圧感を出し、身長の高い彼を見上げている。
言い直そうとも謝ろうともしない男子生徒に呆れ、先生が息をつく。
「そうだ。それ以外にないだろう」
遮断していた質問に答えた。
「ああそうだ。丁度良い。お前がこの女と組んで演習に出てくれ」
え、と惚(ぼ)けた表情をするしかない。
「お前の腕の傷がきっかけでの新入生だ。それくらいしてもいいだろう?」
どこかで見たことある顔だなと思ったらあの時の人かと男子生徒を凝望(きょうぼう)する。あの時町に来て魔物を退治してくれた人だ。
彼は、わかったと一言。
先生と別れ、名も知らぬ男子生徒について行く。
長い廊下。彼の後を追いながら話しかけてもいいのか悩む。
「あの時は」
「すまなかった」
小さな声で重ねるように呟かれた。
彼はきっと自分のせいでこの学園に入りたいと願いもしない新入生が来てしまったと思ってる。さっきの先生の言葉で。けれど言いたいことはそんなことじゃなかった。謝ってほしいなんて思っていなかった。
ーー違うのに。腕の傷は本当になくなっていて大丈夫なのか、魔物と戦うのはどんなものなのか。他にも一つ大事なことを言おうと思ったのに、彼の〝領域に立ち入るな〟オーラに負けてしまった。
組んで早々実践になるとは。
大きいというところ以外一見普通の部屋だが、戦闘の演習をするための部屋は他のものと違うらしい。それは中に入ったらわかると。……わかった。
とても広く、所々に瓦礫(ガレキ)が無造作にあり、これは一個の作られたステージのような場所だ。
ここで戦闘の演習をするのか。戦闘の演習をする意味はここへ来て最初にあった男子生徒ーーシルビア・シルフォンに聞いている。外にいる魔物たちに立ち向かうため、力や協力性を磨くためにやるこのだと。戦闘の演習をするにもちゃんとした理由がある。
目の前にいる二人組はリキと同じように男女の組み合わせ。茶髪の女子生徒と青髪の男子生徒。女子生徒の特徴的なところ言えば短髪なところで、男子生徒の特徴的なところは眼鏡である。
「戦闘は初めてだよね」
「はい」
「じゃあ開始の合図として皆で〝戦闘(バトル)スタート〟って言うから。せーのって言って」
「せーの」
「バトルスタート」
青髪の人の言う通りにすると皆の声がはもった。しかし、隣の相棒、漆黒の彼だけ口を動かさなかったように見えたのは気のせいか。
開始の合図とともに二人組は後退する。相棒である黒髪の彼ーーファウンズ・キルは少しの間その場に立ったまま前を見据え、何かを考えている様。左手には漆黒の剣。
戦闘相手である女子生徒は短剣を両手に持ち、男子生徒は杖を持っていた。ファウンズ・キルは長剣。リキは支給品として渡された白い杖を手に持ち、本当に戦うのだと顔を怖ばせる。
漆黒の彼は動き出す。作戦とかアドバイスといったものは何もせず離れていってしまった。
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