私のバラ色ではない人生

ミレスゴート公爵家の夜会３

「王妃様は教育に関与していないの？」

　エミアンローズの指導をしてくれた王妃が、側妃の娘とは言え、あのような王女を良しとするのかと、ソアリスは疑問に思った。

「いえ、されたようですが、見ていないところではあの様子なのでしょう」
「なるほどね…離縁の理由は？」
「分かりませんが、結婚して１年ですからね」

　フローラは自国の侯爵家に嫁いだが、１年で離縁した。その後は婚約も結婚もしないまま、現在２４歳となっている。

「詳しいことは分かりませんが、余程のことがあったのだろうと言われております。あのような感じですから、無理もないと言いますか」

　今もキズラー侯爵なのだろう男性に、食って掛かっており、キズラー侯爵は側妃の遠縁ということで、滞在している。

「酷いわね…王女って、みんな妙なのが一人ずつ現れるの？ケイトもあんな風になったらどうしようかしら…」
「そのようなことはないとは思いますが…」

　まずあり得ないが、万が一があってもソアリス様がどうにでもするだろうと、キャロラインは思っていた。

「ああ！私の息子のところへ！」

　フローラ王女が、ミアンナの息子で、嫡男であるリクフォードが妻と一緒にいるのに、押し掛けている。

「キャロライン、キャロライン、この中で一番、地位が高いのは私かしら？」
「はい、勿論にございます」

　童話のような言い方で、ミアンナは不思議そうな顔をしたが、キャロラインはソアリス節には慣れている。

「キャロライン、キャロライン、この中で一番、咎めるのに向いているの誰かしら？」
「ソアリス王妃陛下でございます」

　ミアンナはその様子を、驚きながらも見つめてしまっていた。

「ミアンナ、先程の応接室をお借りしてもいいかしら？いくら公爵夫人でも、王女は注意しにくいでしょう？」
「ですが」
「いいの、ご馳走になったお礼をさせて貰うわ。王宮には連絡して置いて貰えるかしら？」

　キャロラインはミアンナに向かって、強く頷いた。

「ありがとうございます、すぐに連絡させます」
「お願いね。キャロライン、私の名前を使って呼んできてくれる？」
「は！かしこまりました」
「ミアンナ、食って掛かった相手に話を聞いて、キャロラインに護衛を付けてくれる？」
「承知いたしました」

　ソアリスは先に自身の護衛たちと応接室に向かい、キャロラインとミアンナはフローラ王女のところへ向かうことになった。

「大丈夫かしら？こんなご迷惑を掛けて」
「このまま、野放しにすることは、ロンド王国のためにもならないと判断しておいでだと思います」
「それはそうね」

　他国のこととはいえ、王女を野放しにすることは出来ないと判断したのかと、頭が下がる思いだった。

「ソアリス様は、自身の身分を使うことに躊躇がないのです。ガンガン使って行こうぜくらいに思っておいでだと思います」
「まあ、ふふっ。キャロがソアリス様のことを、必ず手紙に書いて来る気持ちがよく分かるわ」

　国に関わることは書くようなことはないが、ソアリスのことばかりが書かれており、家族のことより多い時すらある。

「そうでしょう？先程、ソアリス様に、お姉様の返事の仕方が私にそっくりだと言われたのですよ。この年でそんな似たところがあったなんてと、嬉しくなりましたの」
「まあ！それは新たな発見ね」

　ミアンナとキャロラインは２つしか離れていないので、幼い頃は喧嘩もよくしたが、喧嘩するほど仲のいい姉妹であった。

　キャロラインはフローラ王女の後ろで、何も出来ないでいる侍女に声を掛けた。

「あなたが王女殿下の侍女かしら？」
「は、はい」
「どうして止めないの？」
「私では無理です」
「こういった時は、羽交い絞めでもして収めるべきではないかしら」

　キャロラインはソアリスに、間違っていると思ったら、羽交い絞めにでも、口にパンを突っ込んでも、何でもしていいと言われている。