私のバラ色ではない人生

野村にれ

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騎士団へ1

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 ケイトがソアリスの余計なことを話したおかげでもあって、クート国王陛下から騎士団の見学に許可を得ることが出来た。

 ミフルは何かあってはいけないと大事を取り、午前中は時間のあるというグレイ殿下が案内してくれることになり、ケイトも行きたいと言うので、ソアリス、ケイト、グレイ、グレイの側近二人という布陣で向かった。

 グレイがソアリスとケイトを紹介すると、皆、揃って頭を下げた。

「まあまあまあ~!」
「おかあしゃま、うれちそう」
「やっぱり鍛えられた体は素晴らしいわね」
「あい!」

 ソアリスはクロンデール王国でも、騎士団の見学に散歩がてら、お忍びでよく行っている。バーセム公爵が騎士団長なので、止められることもない。

「素振りをされますか?」
「いいの?ちょっと食べ過ぎていると思っていたところなの」

 事前に騎士団にも説明をして、ソアリスもケイトも乗馬服で来ている。女性騎士が木剣を持って、ソアリスに渡した。

 滞在している部屋の中で、柔軟や腹筋、腕立て伏せの運動はしていたが、やはり外で運動をするのがソアリスは好きである。

「子どもの用の木剣はないわよね?」
「え?」
「ございます」
「まあ、一番小さいものを貸していただけませんか?」
「ケイト王女がするのですか?」
「ええ、クロンデール王国には専用の物があるのだけど、さすがに持って来ておりませんで」
「あい!」

 ケイトはピシっと手を上げ、小さな木剣が届くと、慣れた様子で抱えて行った。

 ソアリスとケイトは、片隅で結構ですからと、訓練の邪魔にならないように、騎士団員が気兼ねのないように距離を取って、並んで素振りを始めた。キャロラインも護衛たちも、いつもの光景である。

「お腹に力を入れるのよ、やあ!」
「やあ!」

 元は騎士だったわけでもない、一国の王妃と王女とは思えない、ブレのない素振りを皆は見つめていた。

 ケイトは10回で止めたが、ソアリスは50回は行われただろうかというくらいで、ようやく剣を下ろし、今度はソアリスはケイトをひょいと肩車して、足を持って、屈伸運動を始めた。

「いち、に、さん、し!」

 慌てたのはグレイの側近たちであった。素振りは聞いていたが、肩車をして屈伸運動など聞いていなかった。

「あ、え?あれは、え?」
「な!危ない!え?」
「殿下、大丈夫なのですか」
「ああ、クロンデール王国では当たり前の日常なのだろう…」

 グレイもさすがに見たの初めてであったために驚きはしたが、ミフルから事前にソアリスのやりそうなことを聞いていた。侍女と護衛たちが一切、慌てる様子も、驚く様子もなく見つめているのが証拠である。

「女性に年齢を言うのは失礼ですが、48歳ですよね?」
「ああ、30代でも通るのではないか」
「ええ、言われなければ分かりません」

 男性騎士団員たちも、私も子どもたちが幼い頃、よくやっていたが、女性でやっているのは初めて見たと言っていた。女性騎士団員も実は家で子どもを乗せて、よくやっていると親近感が一気に沸いた。

 騎士団員たちは背筋の美しい王妃陛下だと思ったが、日々の鍛錬なのだろうと、訓練に力が入り、後から年齢を聞いて驚いたほどである。

「義母上の子どもたちとのコミュニケーションの取り方だそうだ」
「確かにケイト王女殿下が楽しそうです」

 ケイトはいつも通り、『がんばって』と嬉しそうにはしゃいでいる。

「ああ、真似するのはなかなかハードルが高いが、子どもたち全員とやってらっしゃるそうだ。しかも、今でも見ての通り、現役でおられる」
「はい…私もさすがに母に肩車はして貰ったことがありません」
「私もです」
「私もだ…だが、ミフルはある」

 ソアリスは子どもが手頃な大きさに成長すると、不可能になるまで、ここでも平等にユリウス、マイノス、アリル、エクル、ミフル、カイルス、ケイトと、肩車や背中に乗せて柔軟をしたりを続けている。

 ようやく屈伸運動も終わり、キャロラインが水とタオルを渡して、二人はいい汗をかいたと満足そうであった。

 グレイと側近たちも、ソアリスとケイトの側に近付いた。
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