私のバラ色ではない人生

野村にれ

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エスザール王国へ3

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 リリスタ王女殿下、グレイの妹で、王太子夫妻の娘である。

「ご無沙汰しております」
「ご丁寧にありがとうございます。しばらくお世話になります」
「お世話になりましゅ」

 ソアリスとケイトは、先程までクレープとアンテナで揉めていたとは思えないほど、さっと立ち上がって、カーテシーを行った。

 リリスタとは、グレイとミフルの結婚式で顔を合わせているが、きちんと話をする時間はなかった。

「ううう…ミフルお義姉様、本当に愛らしい妹君ですわね」
「リリスタも可愛い妹ですわよ?」
「そ、そのようなことは」
「ケイト、愛らしいって、良かったわね…王宮では皆に逃げられちゃうものね」

 何をされるか分からないので、知っている者は遠巻きに見ていることが多い。

「ちょんなことないわよ、どれちゅはかわいいっていってくれりゅわ」
「ドレスをね…」
「ドレスはクロンデール王国でも、すっかり人気のようですわね。こちらもとても人気ですのよ」

 お菓子モチーフのドレスはケイトの宣伝もあり、クロンデール王国とエスザール王国で、デザインを共有しながら、とても人気となっている。

「ええ、黙っていれば可愛いですからね」
「ああ…本当に可愛い…」

 リリスタはミフルの横に座って、目をとろんとさせて、ケイトを見つめている。

「きょうは、ちょこちっぷくっきーですのよ?」
「ええ、とてもよく似合ってらっしゃいます。本当に愛らしい」

 チョコの部分は丸くレースになっており、揃いのリボンも付けている。

「ちょこのぶぶんがほんものだったら、ぷちぷちってたべれりゅのにね~」
「そんなところに付いていたら、溶けてベトベトになるわよ」
「おかあさまは、ゆめがないでしゅわね~」
「現実よ、ベチョベチョになるだけじゃない」
「ふふっ、まるでクロンデール王国にいるみたい」

 ミフルが微笑むと、リリスタも我慢が出来ずに口元を押さえて、笑っていた。

「陛下にケイトを連れて行って欲しいって、押し付けられたの!カイルスが良かったわ!もしくはオルファー!」
「どこの王妃が他家の孫を連れて来るのよ」
「オルファーの凛々しさを皆に見て欲しいのよ」
「バーセム公爵に似ているからでしょう?」
「ええ、さらに凛々しい顔立ちになっているのよ!ふふっ」

 ソアリスは全ての孫たちに定期的に会いに行っているが、一番いい顔をしていると断言しているのはオルファーであり、皆もこればかりは致し方ないと認めている。

「お母様の好きなお顔だものね?」
「バーセム公爵のようになるのかと思うと、浮足立ってしまうわ!ねえ、ケイト?」
「あい!おるふぁーとてもいいおかおよ」

 カイルスとケイトもオルファーはいい顔をしていると同意しており、ソアリスの洗脳なのか、アンセムが聞く度に何とも言えない顔をしている。

 リリスタは一体誰なのだろうかと、不思議な顔をしていた。

「お母様の友人の夫で、アリルお姉様の義父なの。とても恰幅の良い凛々しい方で、お母様は強い方がお好きなの。で、甥っ子がその義父に似ているのよ。それで、お気に入りなの」
「まあ、逞しい方なのですね」
「ええ、とっても」

 ソアリスはここ一番の笑顔を見せ、オルファーだけを可愛がっているということはないのが、安心が出来るところである。

「エクルお姉様の子どもは、ブルックス様に似ているのよね?」
「ええ、おかげで賢そうな顔をしているわ。ボブがね、とっても可愛がってくれているそうよ」
「ボブ…あの方ですわね?」

 ミフルもエクルから、ボブデランについては聞いている。

「ええ、リリスタ様、ボブと言えばどんなお顔を思い浮かべます?」
「そうですわね、大きな強そうな方ですかね?」

 リリスタの周りにはボブはおらず、イメージだけで答えた。

「そうでしょう!エクルの嫁ぎ先に、ザ・ボブって方がいらっしゃるの!私はあの方より、ボブって方には会えないと思っておりますの」
「まあ、大きいのですわね?」
「ええ、大きくて逞しくて、笑うと可愛らしいのだけど、勇ましい顔をしてらっしゃるの」
「まあ、お会いしてみたいわ」

 ミフルはリリスタまでも、ソアリスのペースにすっかり流されていると感じた。

 あれこれ話していると、ようやくグレイ殿下がやって来た。
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