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父娘の対話1
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「ソアリス王妃陛下は王太子妃にも、王妃にも向いていない、いや、相応しくないとおそらく、今でも思ってらっしゃる」
「そんなことは」
「ああ、誰もそんなことは思っていない。思っているのはご本人だけだ」
リベルは相応しくないならば、あのように皆が付いて来るはずがない。ララシャは皆が付いて来ると思っている節があったが、誰もいなかった。
真逆では足りないほどに、似ていない姉妹であった。
「はい、お祖父様とお祖母様にどのようなことをされているのか伺いました。お父様と話をして、手紙を書かせていただこうと思っています」
「そうか」
「お母様にも会いました」
「ああ、聞いている。ソアリス王妃陛下から会うかはエミアンローズに任せるが、見に行くことになったと手紙を貰っていた」
「そうでしたか」
エミアンローズはそういった些細な部分でも、さすが抜かりないなとすら思った。お母様が手紙を書いているところなど見たこともない。
「相変わらずだったか?」
「はい…私が迎えに来たと思い込んで、自分のことは自分でしなくてはいけない状況から抜け出せると、自分のことしか考えていませんでした」
「そうか…」
「家も見せて貰いましたが、本当に汚くて、臭くて中には入れませんでした」
エミアンローズは思い出して、渋い顔をすると、リベルも余程酷かったのだろうと同情した。
「私やお父様が迎えに来てくれると思っていたそうです」
「あり得ない」
「はい。なせそう思えるのか分からず、何度説明しても、同じことを繰り返していました」
「自分の意見が通るまで、同じことを言い続けるそうだ」
「そう、なんですね…」
そういうことだったのかと、エミアンローズは改めてララシャを軽蔑した。
「皆、諦めて言うことを聞くことがあったんだろうな。私にも覚えがある」
「お父様は今でも自分を愛していると、ずっと言っていました」
「そういう女性だろうな」
「私も偉そうに言える立場ではないですが、子どもとして情けなかったです」
「本当に変わったな」
話し方は留学で随分変わっていたが、また変わったように思えるエミアンローズに、リベルはソアリス王妃陛下の威力を感じていた。
「ソアリス王妃陛下に反面教師にすれば良かったのにと言われて、そのような目で見たら、本当にそうだなと思いました。とても恥ずかしく、最後は見てられないほどでした」
「おそらく、ソアリス王妃陛下はご自身の母親、ララシャもかもしれないな、無意識だとは思うが、反面教師にしていたのではないだろうか」
「お祖母様もですか?」
お母様は理解できるが、お祖母様までなぜだろうかと思った。
「ああ、ソアリス王妃陛下には良き母親ではなかったのは確かだ。どうやら手も上げていたそうだ」
「そんな…」
エミアンローズにとっては厳しく言われたこともない、優しい祖母であった。まさかその祖母がソアリス王妃陛下に手を上げていたなど、想像も出来なかった。
「ララシャもそう言っていたから、事実だと思う。王妃陛下は結婚してから、ご両親とはほとんど会われていないのではないかな」
「そうだったのですか、想像が出来ません」
「お転婆ではあったのだろうが、今となって叱るべきだったのは、ララシャだったと思っているだろう」
「はい、そのようにおっしゃっていました。王太子殿下の婚約者が、真面目に取り組んでいないなどと思っていなかったと」
「そうだろうな…」
まともな王太子殿下の婚約者だったら、真面目に取り組まないなどという選択肢はない。だが、ララシャはどうにかなるだろうと思っていた。
そのような女性を見初めるなど、王子として情けないとしか言いようがない。ララシャの愚かさは、今でも選んだリベルに返って来ている。
ソアリス王妃陛下は、私のことを見る目がないと思っていただろう。
「そんなことは」
「ああ、誰もそんなことは思っていない。思っているのはご本人だけだ」
リベルは相応しくないならば、あのように皆が付いて来るはずがない。ララシャは皆が付いて来ると思っている節があったが、誰もいなかった。
真逆では足りないほどに、似ていない姉妹であった。
「はい、お祖父様とお祖母様にどのようなことをされているのか伺いました。お父様と話をして、手紙を書かせていただこうと思っています」
「そうか」
「お母様にも会いました」
「ああ、聞いている。ソアリス王妃陛下から会うかはエミアンローズに任せるが、見に行くことになったと手紙を貰っていた」
「そうでしたか」
エミアンローズはそういった些細な部分でも、さすが抜かりないなとすら思った。お母様が手紙を書いているところなど見たこともない。
「相変わらずだったか?」
「はい…私が迎えに来たと思い込んで、自分のことは自分でしなくてはいけない状況から抜け出せると、自分のことしか考えていませんでした」
「そうか…」
「家も見せて貰いましたが、本当に汚くて、臭くて中には入れませんでした」
エミアンローズは思い出して、渋い顔をすると、リベルも余程酷かったのだろうと同情した。
「私やお父様が迎えに来てくれると思っていたそうです」
「あり得ない」
「はい。なせそう思えるのか分からず、何度説明しても、同じことを繰り返していました」
「自分の意見が通るまで、同じことを言い続けるそうだ」
「そう、なんですね…」
そういうことだったのかと、エミアンローズは改めてララシャを軽蔑した。
「皆、諦めて言うことを聞くことがあったんだろうな。私にも覚えがある」
「お父様は今でも自分を愛していると、ずっと言っていました」
「そういう女性だろうな」
「私も偉そうに言える立場ではないですが、子どもとして情けなかったです」
「本当に変わったな」
話し方は留学で随分変わっていたが、また変わったように思えるエミアンローズに、リベルはソアリス王妃陛下の威力を感じていた。
「ソアリス王妃陛下に反面教師にすれば良かったのにと言われて、そのような目で見たら、本当にそうだなと思いました。とても恥ずかしく、最後は見てられないほどでした」
「おそらく、ソアリス王妃陛下はご自身の母親、ララシャもかもしれないな、無意識だとは思うが、反面教師にしていたのではないだろうか」
「お祖母様もですか?」
お母様は理解できるが、お祖母様までなぜだろうかと思った。
「ああ、ソアリス王妃陛下には良き母親ではなかったのは確かだ。どうやら手も上げていたそうだ」
「そんな…」
エミアンローズにとっては厳しく言われたこともない、優しい祖母であった。まさかその祖母がソアリス王妃陛下に手を上げていたなど、想像も出来なかった。
「ララシャもそう言っていたから、事実だと思う。王妃陛下は結婚してから、ご両親とはほとんど会われていないのではないかな」
「そうだったのですか、想像が出来ません」
「お転婆ではあったのだろうが、今となって叱るべきだったのは、ララシャだったと思っているだろう」
「はい、そのようにおっしゃっていました。王太子殿下の婚約者が、真面目に取り組んでいないなどと思っていなかったと」
「そうだろうな…」
まともな王太子殿下の婚約者だったら、真面目に取り組まないなどという選択肢はない。だが、ララシャはどうにかなるだろうと思っていた。
そのような女性を見初めるなど、王子として情けないとしか言いようがない。ララシャの愚かさは、今でも選んだリベルに返って来ている。
ソアリス王妃陛下は、私のことを見る目がないと思っていただろう。
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