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母娘の再会13
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「そうね、私たちは間違っていたわ。口が悪いことで、そんな扱いをしたことを一生抱えて生きて行くつもりよ。許して欲しいなんて、傲慢だもの」
エミアンローズは口が悪いことで、そんな扱いをされていたことに驚いたが、ララシャと違って、本人も自覚があった。
確かに好ましいことではないが、王妃という立場は甘いものではない。ソアリス王妃陛下の場合は、マイナスにも思えなかった。
「っな」
「ソアリスの功績は素晴らしいわ、国民にも好かれて、諸外国とも親しくしていると聞いているわ。確かにあの子の周りは、本当に心の繋がった人たちばかりだもの。親なんていなくても、立派にやっているわ」
当たり前ではあるが、キリスが当主だった頃、ソアリスから頼って来られたこともなかった。ソアリスには実家でなくとも、助けてくれる人が沢山いる。
「それに比べて、あなたはその場しのぎの嘘で生きて来て、何が残ったの?」
「だから、エミアンを」
「自分の行いで手放したのに、夫の次は娘に寄生するつもり?」
マルシャもさすがにララシャと話が通じないことは理解していたので、答えが返ってこないことも想定内であった。
「何てこと言うの!私が産まなければ、エミアンは生まれなかったのよ!」
「でも、エミアンローズもあなたの娘で、良かったとは思っていないわ。感謝される、助けてあげたいと思うように生きなかった、ララシャの責任よ」
「は?」
「もしもソアリスなら、全員が引き取ると言うでしょうね」
口は悪いが、引き取りたくないと言う子どもはいないだろう。
マルシャもソアリスに母親が務まるのかと思っていた頃もあったが、7人もいて皆が仲いいということは、良い母親なのだという答えしかなかった。
「それは子どもが、多いからでしょう!」
「でもね、ソアリスはきっと拒否するわ」
マルシャはまた聞きではあるが、ソアリスだったら潔く、身を引くというのは想定が出来る。間違っても、この目の前のもう一人の娘のように、エミアンローズのためだといいわけをしながら、縋りつくようなことは絶対にしない。
「そんなこと!」
「ソアリスは迷うことなく、娘の幸せのために身を引く、いえ、きっと姿も現さないでしょうね。それなのに、あなたは何?これ以上、迷惑を掛けるの?」
「迷惑って…」
ララシャは本気で迷惑を掛けている感覚がなかった。とにかく、娘なのだから母親を助けるべきだと思って、突き進んでいる。
「あなたの存在は、エミアンローズ王女殿下の足を引っ張っているの!母親なら気付きなさい」
「…そんな、そんなことないわよね?ねえ、エミアン?」
両親に、リベルに、エミアンローズに必要とされていると思って来たララシャは、まさか自分が足を引っ張る存在だと思ったこともなかった。
「気付いていなかったのですか?王家に盾突いたのですから、お母様は静かに暮らすことが、私の、お父様の幸せに繋がるのです」
「でも、どこかで静かに暮らすことも出来るでしょう?」
「それは昔のように傅かれて、世話をして貰って、綺麗なドレスを着て、好きなだけ美味しい物を食べられるような暮らしではありませんか?」
「そうよ!だって、私には相応しいのだから」
何を当たり前のことを聞いているのか、私の生活の普通はそのような生活に決まっているではないか。
「だから王家で何の利益も生み出していない私が、そんな生活を出来るわけないと言っているではありませんか!」
「だから、リベルに」
「そんなことをすれば、お父様まで王家から追い出されます。そんなことも分からないのですか?自分の欲望のためなら、どうでもいいのですか!どこが私の幸せを考えているのですかっ!」
恥ずかしい母親の姿に、エミアンローズも怒りを向けた。
エミアンローズは口が悪いことで、そんな扱いをされていたことに驚いたが、ララシャと違って、本人も自覚があった。
確かに好ましいことではないが、王妃という立場は甘いものではない。ソアリス王妃陛下の場合は、マイナスにも思えなかった。
「っな」
「ソアリスの功績は素晴らしいわ、国民にも好かれて、諸外国とも親しくしていると聞いているわ。確かにあの子の周りは、本当に心の繋がった人たちばかりだもの。親なんていなくても、立派にやっているわ」
当たり前ではあるが、キリスが当主だった頃、ソアリスから頼って来られたこともなかった。ソアリスには実家でなくとも、助けてくれる人が沢山いる。
「それに比べて、あなたはその場しのぎの嘘で生きて来て、何が残ったの?」
「だから、エミアンを」
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「何てこと言うの!私が産まなければ、エミアンは生まれなかったのよ!」
「でも、エミアンローズもあなたの娘で、良かったとは思っていないわ。感謝される、助けてあげたいと思うように生きなかった、ララシャの責任よ」
「は?」
「もしもソアリスなら、全員が引き取ると言うでしょうね」
口は悪いが、引き取りたくないと言う子どもはいないだろう。
マルシャもソアリスに母親が務まるのかと思っていた頃もあったが、7人もいて皆が仲いいということは、良い母親なのだという答えしかなかった。
「それは子どもが、多いからでしょう!」
「でもね、ソアリスはきっと拒否するわ」
マルシャはまた聞きではあるが、ソアリスだったら潔く、身を引くというのは想定が出来る。間違っても、この目の前のもう一人の娘のように、エミアンローズのためだといいわけをしながら、縋りつくようなことは絶対にしない。
「そんなこと!」
「ソアリスは迷うことなく、娘の幸せのために身を引く、いえ、きっと姿も現さないでしょうね。それなのに、あなたは何?これ以上、迷惑を掛けるの?」
「迷惑って…」
ララシャは本気で迷惑を掛けている感覚がなかった。とにかく、娘なのだから母親を助けるべきだと思って、突き進んでいる。
「あなたの存在は、エミアンローズ王女殿下の足を引っ張っているの!母親なら気付きなさい」
「…そんな、そんなことないわよね?ねえ、エミアン?」
両親に、リベルに、エミアンローズに必要とされていると思って来たララシャは、まさか自分が足を引っ張る存在だと思ったこともなかった。
「気付いていなかったのですか?王家に盾突いたのですから、お母様は静かに暮らすことが、私の、お父様の幸せに繋がるのです」
「でも、どこかで静かに暮らすことも出来るでしょう?」
「それは昔のように傅かれて、世話をして貰って、綺麗なドレスを着て、好きなだけ美味しい物を食べられるような暮らしではありませんか?」
「そうよ!だって、私には相応しいのだから」
何を当たり前のことを聞いているのか、私の生活の普通はそのような生活に決まっているではないか。
「だから王家で何の利益も生み出していない私が、そんな生活を出来るわけないと言っているではありませんか!」
「だから、リベルに」
「そんなことをすれば、お父様まで王家から追い出されます。そんなことも分からないのですか?自分の欲望のためなら、どうでもいいのですか!どこが私の幸せを考えているのですかっ!」
恥ずかしい母親の姿に、エミアンローズも怒りを向けた。
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