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母娘の再会11
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「今も私にどうにか助けて貰おうとしか、考えていないのではありませんか?違うと言えますか?」
「…それは、エミ「エミアンのために」」
エミアンローズはララシャの言葉に被せ、ララシャは驚いて、目を大きくした。
「お母様の思考もよく分かるんです。自分はこんな生活をするような人間ではない、価値ある人間だ、きっと元に戻れると…だから、反省もしない。だって私は悪くないから、直そうなんて思わない」
「でも本当にエミアンのためにと思っているのよ」
「だったら、エミアンのために迷惑を掛けないように、引き下がる、いえ、関わらないようにするべきではありませんか?」
娘に縋ろうとすること自体がおかしい、しかも引き下がろうともせず、自分のことばかり考えている。せめて反省していたら、願いは叶えられなくても、新しい関係を築けるのではないかと思っていた。
「…な」
「でなければ、ララシャのためにとなってしまいますよ?そうなのですか?」
「ち、違うわ」
「だったら、自業自得なのですから、しっかり生きてください。私はこれ以上、お母様を嫌いになりたくはありません」
「嫌いだなんて…」
エミアンローズが親は子を愛するのが当たり前だと思っていたように、ララシャも子が親を大事に思うのは当たり前だと思っていた。
平民の普通の家庭なら、二人の関係はまた違っただろう。
文句を言いながらも、良くも悪くも、断ち切れない縁があっただろう。
だが、今となってはララシャは一応、ロアンスラー公爵家に籍はあるが、いない者として扱われている。そして、エミアンローズも王弟の娘で、王女ではあるが、立場は弱く、扱いに困っている。
ララシャはもう捨てるものがないような状況だが、二人が何もかも捨ててどこかでひっそりと一緒に暮らすことは可能かもしれない。
だが、ララシャの望みはそんな暮らしではなく、エミアンローズも今更、ララシャと暮らしたいとも思っていない。
共通するのは期待されていないことだが、ララシャと違って、まだエミアンローズはやれることがある。
「最後に聞きたいのですが、王宮でお母様は何をしていたのではなく、何を考えて生きていたのですか?」
「え?」
「お母様の話は色々聞きましたが、本人に聞いてみたかったのです。何もせず、王子妃であったお母様は、毎日何を考えていたのか」
言い換えれば、どういうつもりで王子妃だと居座っていたのか。
「だからリベルとエミアンローズのことを考えて」
「そういうのはもういいですから」
「本当よ!」
ララシャは本気だった。リベルとエミアンローズのことだけを考えていたわけではないが、二人のことくらいしか考えることしかなかった。
「輝く場所もない、痩せていた体もない、過去にあったものは何もなくなったのに、何もしなかったのですか?」
「っな!私はリベルにどうしてもと言われて、嫁いだのだから!」
「だから何もしなくていいと、そう考えていたのですか?」
「そうよ」
ララシャは王子妃教育はリベルに見初められたのだからと、真面目に受けなかった。ララシャにとってそれが、誇りで驕らせたのである。
「分かりました、それがお母様の答えなんですね」
「リベルに聞いたら分かるわ」
「お祖父様、お祖母様、もういいです。終わりましょう」
「分かった」
キリスとマルシャが立ち上がり、二人の方へ向かうと、終わってしまうと焦ったララシャが大きな声を上げた。
「ちょっと待って!エミアン、もう一度ちゃんと考えて頂戴。ママと暮らせるのよ?」
「いい加減にしろ!」
「お父様は黙ってて!」
「何度も言いました、お母様とは暮らしません」
まだ言うのかと、エミアンローズは心底呆れた。今までの話の中で、どこに一緒に暮らしたいと思える要素があると思ったのだろうか。
「…それは、エミ「エミアンのために」」
エミアンローズはララシャの言葉に被せ、ララシャは驚いて、目を大きくした。
「お母様の思考もよく分かるんです。自分はこんな生活をするような人間ではない、価値ある人間だ、きっと元に戻れると…だから、反省もしない。だって私は悪くないから、直そうなんて思わない」
「でも本当にエミアンのためにと思っているのよ」
「だったら、エミアンのために迷惑を掛けないように、引き下がる、いえ、関わらないようにするべきではありませんか?」
娘に縋ろうとすること自体がおかしい、しかも引き下がろうともせず、自分のことばかり考えている。せめて反省していたら、願いは叶えられなくても、新しい関係を築けるのではないかと思っていた。
「…な」
「でなければ、ララシャのためにとなってしまいますよ?そうなのですか?」
「ち、違うわ」
「だったら、自業自得なのですから、しっかり生きてください。私はこれ以上、お母様を嫌いになりたくはありません」
「嫌いだなんて…」
エミアンローズが親は子を愛するのが当たり前だと思っていたように、ララシャも子が親を大事に思うのは当たり前だと思っていた。
平民の普通の家庭なら、二人の関係はまた違っただろう。
文句を言いながらも、良くも悪くも、断ち切れない縁があっただろう。
だが、今となってはララシャは一応、ロアンスラー公爵家に籍はあるが、いない者として扱われている。そして、エミアンローズも王弟の娘で、王女ではあるが、立場は弱く、扱いに困っている。
ララシャはもう捨てるものがないような状況だが、二人が何もかも捨ててどこかでひっそりと一緒に暮らすことは可能かもしれない。
だが、ララシャの望みはそんな暮らしではなく、エミアンローズも今更、ララシャと暮らしたいとも思っていない。
共通するのは期待されていないことだが、ララシャと違って、まだエミアンローズはやれることがある。
「最後に聞きたいのですが、王宮でお母様は何をしていたのではなく、何を考えて生きていたのですか?」
「え?」
「お母様の話は色々聞きましたが、本人に聞いてみたかったのです。何もせず、王子妃であったお母様は、毎日何を考えていたのか」
言い換えれば、どういうつもりで王子妃だと居座っていたのか。
「だからリベルとエミアンローズのことを考えて」
「そういうのはもういいですから」
「本当よ!」
ララシャは本気だった。リベルとエミアンローズのことだけを考えていたわけではないが、二人のことくらいしか考えることしかなかった。
「輝く場所もない、痩せていた体もない、過去にあったものは何もなくなったのに、何もしなかったのですか?」
「っな!私はリベルにどうしてもと言われて、嫁いだのだから!」
「だから何もしなくていいと、そう考えていたのですか?」
「そうよ」
ララシャは王子妃教育はリベルに見初められたのだからと、真面目に受けなかった。ララシャにとってそれが、誇りで驕らせたのである。
「分かりました、それがお母様の答えなんですね」
「リベルに聞いたら分かるわ」
「お祖父様、お祖母様、もういいです。終わりましょう」
「分かった」
キリスとマルシャが立ち上がり、二人の方へ向かうと、終わってしまうと焦ったララシャが大きな声を上げた。
「ちょっと待って!エミアン、もう一度ちゃんと考えて頂戴。ママと暮らせるのよ?」
「いい加減にしろ!」
「お父様は黙ってて!」
「何度も言いました、お母様とは暮らしません」
まだ言うのかと、エミアンローズは心底呆れた。今までの話の中で、どこに一緒に暮らしたいと思える要素があると思ったのだろうか。
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