私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
317 / 348

母娘の再会8

しおりを挟む
「迎えに来たくても、立場があるから来られないのでしょう?苦しんでいるんじゃない?心配だわ」

 またも頬に手を当てて、少女のような仕草をしているが、エミアンローズも発言も相まって、腹が立って来ていた。

「そんな風に解釈していたのですか、すごい想像力ですね」
「エミアンには言わないのかもしれないけど、リベルは私を愛しているの」
「はあ…お父様はお母様を選んだことを、今となっては後悔していますよ」
「そんなはずないわ!いくらエミアンでも言っていいことと、悪いことがあるわ!」

 後悔しているなんてあり得ない、どうしてエミアンローズがそんなことを言うのか、留学したことで悪い影響を受けたのではないかと感じていた。

「私は事実を言っています」
「事実じゃないわ」
「そうですか、ならばお父様が迎えに来るのを、あの汚い家で、一生待っていればいいのではありませんか?」
「どうしてそんなことを言うの!ママが可哀想だと思わないの?」
「自業自得ではありませんか」

 ララシャはこんな意地悪なことを言う子ではなかった。私が離れたことで、こんな風になってしまったのだと、ショックだった。

「エミアン、どうしちゃったの?エミアンはそんなことを言う子じゃなかったわ」
「お母様が面倒だから言わなかっただけです」
「…え?」
「お母様は都合のいいことしか、聞かないじゃないですか」
「そんなことないわ、ママはいつもエミアンのことを考えて、聞いていたわ」
「そうですか…」

 指摘しても認めようとしないところも、似ているのだから、何を言っても無駄だと感じる。いつも相手はこんな気持ちだったのかと、エミアンローズは感じていた。

「そうよ!だから一緒に暮らしましょう」
「だから、無理だと言ったでしょう?私にそんな権限も、力もないわ」
「そんなことないわ、エミアンがリベルに言って、リベルが話をすればいいのよ。ね?そうしましょう!皆で一緒に暮らした方がいいじゃない」

 話を聞かない相手というのはこんなに疲れるのか、同じことを言っている自覚がないのか。ソアリスの言うララシャと特技とも言いたくない、自分の意見が通るまで、話し続けるという技である。

「叶うはずないでしょう?お父様は王弟なんですよ」
「王宮では暮らせなくても、ねえ、別のところで暮らせばいいじゃない」

 どうして離縁した妻の面倒をわざわざ看なければならないのか、お母様はニコニコしており、おかしなことを言っている感覚もないのだろう。

 叶うはずだと信じていいることも、恐ろしい。

「ピデム王国に泥を塗った人間が、暮らせるはずがないでしょう?」
「あれはエミアンのためじゃない!どうして分かってくれないのよ…エミアン、どうしてそんな風になってしまったの?」
「どうせ、私が王太子妃になれば、自慢が出来るとでも思っただけでしょう?今となっては、よくもあんなことが言えたものですよ」

 ララシャのしたことが改めて、恥ずかしいでは済まされない話ではあるが、エミアンローズの感覚としては恥ずかしいと言う言葉がピッタリだと思っていた。

「幸せになって欲しかったのよ」
「ミフル殿下を望まれているのに、幸せになれるはずがないじゃないですか」
「そんなことないわ、エミアンなら、ママに似ているのだから、愛さずにはいられないはずよ」

 本気で言っているお母様に、エミアンローズは吐き気すらした。

「ミフル殿下を見たことがないのですか?あんなに美しい方はなかなかいませんよ?」
「でも、エミアンは私に似ているのだから」
「似ていて太っているという意味ですか?」
「何を言うの!太ってないどいないわ!まさか、ソアリスに言われたの?あの子はおかしいのよ」
「太っていますよ、お腹に肉が重なってのっているではありませんか」

 ソアリスが凝視していた腹の肉を、奇しくもエミアンローズがララシャの三段腹を指さして、指摘した瞬間であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は、17時にもう1話投稿させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

婚約者の断罪

玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。 見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。 しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。 親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」 愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。 伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。 「あの女のせいです」 兄は怒り――。 「それほどの話であったのか……」 ――父は呆れた。 そして始まる貴族同士の駆け引き。 「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」 「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」 「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」 令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

処理中です...