私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
316 / 348

母娘の再会7

しおりを挟む
「幼い頃、お母様は体が弱いと聞いていましたが、それも嘘だった。私にきょうだいがいれば、誰かが助けてくれたかもしれませんものね」

 その言葉に、ララシャはハッとした。

「残念ですね、嫌がらずに子どもを産んでいれば、誰かが可哀想だと言って、お母様を引き取ってくれていたかもしれないのですから」
「だから」

 初めて他にも子どもを産んでいたらと、考えてしまったララシャだったが、唯一の子どもであるエミアンローズが引き取ってくれればいいと言い出そうとした。

「私には無理ですよ、教育もなっていない駄目な王女ですから。ピデム王国でも居場所がないんです」
「そんな!そんなことはあってはならないわ」

 ララシャは私の娘が、不遇な立場になることなど許せなかった。

「相応ですよ。教育はなっていない。母親は国の害だと離縁されたのですから」
「わ、私のせいだって言うの…」
「せいでもあると言うことです。まあ、誰もお母様の顔すら覚えていないらしいですけどね」
「っな、そんなわけないじゃない!」

 怒るのはそこなのかと、エミアンローズは思った。悲しいが、皆に祝福される、本当の中心にいたのではないかという考えと同じだ。

「お母様が離縁されたと発表されても、お母様の顔も思い出せない。それなのに、一体何をしたのかということで持ちきりだったそうです。公務をしている様子もないのに、一体何をしたのかと…ご存知でしたか?」

 ララシャもさすがに絶句した。

「当たり前ですが、ピデム王国にお母様の居場所はありませんよ」
「じゃあ、あなたが他国の方と結婚して、そこに一緒に…」

 そんなことを考えていたのかと、エミアンローズは、重い溜息を吐いた。

「お母様が再婚すればいいではありませんか」
「それは…」

 ララシャはリベルから再婚だって容易だと言ったことを聞いているのだと思い、言葉に詰まった。

「でも、エミアンもママと暮らしたいでしょう?」
「お母様は楽をしたいだけでしょう?どうせ何もしないのですから」

 エミアンローズもララシャの生態を知っているので、何もしないことは分かっている。ソアリスの言う打ち上げられた何かになるだけだろう。

「そんなことないわ、ママは今、一人で全部やっているのよ?エミアンはしたことがないでしょう?前とは違うのよ?」
「ではなぜあんなに家が汚いのですか?あんな風にされては堪りません」
「そんなことはメイドがすればいいじゃない」
「ほら、自分でする気もない」

 失言だったと気付いたララシャだったが、エミアンローズが言ったように、全部人にやって貰う暮らしに戻りたいだけであった。

「選ばれた方と再婚なさってください」
「で、でも…」

 さすがのララシャも今のままでは、再婚は難しいことは分かっている。

「あんな暮らしでは、なかなか難しいのよ…」

 こんなチャンスはないと考え、切羽詰まったララシャは本音を漏らした。それでも、出来ないではなく、難しいと言うのはララシャらしい。

「私は再婚を祝福しますから、心配なさらないでください」
「…え」
「お父様にも、戻ったら話そうと思います」
「何…を?」

 ララシャは一体、リベルに何を話すのかと、酷く不安に陥った。

「再婚したらどうかと、私にはそのくらいしか出来ませんから」
「そんなの駄目よ!」
「お母様も再婚するつもりだったのでしょう?それなのに、お父様はどうして駄目なのですか?」
「パパはね、今でもママを愛しているの。だから、そんなことを言って、困らせては駄目なの。エミアンなら分かるでしょう?」

 ララシャはどうして、エミアンローズはリベルのことを分からないのか。今でもきっと、私に会いたくてたまらないが、立場上、来ることは出来ないのだろう。

「まだそんなこと言っているんですか?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

婚約者の断罪

玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。 見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。 しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。 親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」 愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。 伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。 「あの女のせいです」 兄は怒り――。 「それほどの話であったのか……」 ――父は呆れた。 そして始まる貴族同士の駆け引き。 「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」 「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」 「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」 令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

処理中です...