310 / 360
母娘の再会1
しおりを挟む
「エミアン?エミアンなの?ああ!ようやく迎えに来てくれたのね!」
「違います」
「え?もう、迎えに来る意外に訪ねて来るなんて、あり得ないじゃない!ああ、ありがとう!嬉しいわ」
「違います」
「ずっと待っていたのよ、エミアンがきっと迎えに来て、ママを救ってくれるって。ママはね、こんなところにいるべきではないの」
エミアンローズは久し振りに会ったララシャが、自分のこととも重なって、恥ずかしくもあったが、酷く苛立った。
「本当に辛かったのよ!こんな理不尽な目に遭って、こんなところに住まわされて、可哀想でしょう?もう悲しくて泣き暮らしていたの。エミアンにもずっと会いたかったのよ、早く救ってエミアンってずっと思っていたのよ」
これが、ソアリス王妃陛下の言った反面教師なのだと、どうして気付かなかったのか、過去に戻って自分に忠告したいと思うほどであった。
歓喜しながら、エミアンローズの手を握るララシャの目には、べっちょりと目ヤニが付いていた。
「迎えに来たわけではない、顔くらい洗いなさい」
目に余る姿にキリスが声を上げた。
「お父様…」
ララシャはようやくキリスに気付き、慌てて袖で目を拭い、キリスとエミアンローズはその姿に、鼻に皺を寄せた。
「エミアンローズが、お前の生活を見たいというから部屋に入らせて貰う」
「え?待って、今日は片付いていないのよ!連絡してくれていたら」
「いい、どきなさい」
キリスとエミアンローズはララシャを押し退けて、家に入った。侍女たちは家の外で騒ぎになった際の対応をすることになった。
家は少し生臭い匂いがし、使った食器が置き去りにしてあり、服も脱いだままのようで散乱している。部屋の隅にはゴミの袋らしきものが、沢山積んであった。
エミアンローズはその姿に、虫でも湧いているのではないかと、ゾッとした。
さすがに王女であるエミアンローズは寮で暮らしていたこともあり、狭い部屋は知っているが、こんなにも汚い部屋は見たことがなかった。
こんなところで人が、いや、お母様が生活をしていると思うと、信じられない気持ちだった。
「汚い…」
「違うの!今日はたまたま汚いだけで、いつもはキレイにしているのよ?」
ララシャはいくらこんな家でも、母親はキレイで美しくないといけないと思っており、エミアンローズに汚いと思われることが耐えられなかった。
「嘘なんでしょう?数日でこんなに汚くなるはずないわ」
「でも、エミアンには分からないかもしれないけど、メイドがいないのだから、仕方ないのよ」
「雇えないのだから、当たり前じゃない」
「え?」
「はあ…お祖父様、もう家はいいですわ」
「そうだな、具合が悪くなりそうだ」
ずっといるララシャは匂いに慣れて、分からないのかもしれないが、エミアンローズもキリスも耐えられそうもなかった。
「顔を洗って着替えて来なさい。邸で話をしよう」
「え?邸に?」
今の生活から抜け出せると思っているララシャに、キリスはハッキリ言って置かなければならないと思った。
「戻すわけではないからな、エミアンローズと話すために行くだけだ。終わったら、またここに戻って来るんだ」
「な、に、を言っているの?エミアンが私を迎えに来たのよ?」
「そうじゃないと言っているでしょう!ここでは話が出来ないから、邸に行くの。早く着替えて来て」
信じられないという顔のララシャに、キリスは問い掛けた。
「エミアンローズと話したくないのか?」
「そんなことあるはずないわ、でも迎えに来たわけではないって…冗談よね?」
「どうして私がお母様を迎えに来るのよ…」
「お母様?」
エミアンローズからママとしか呼ばれたことがなかったララシャは、その言葉にもショックを受けていた。
「違います」
「え?もう、迎えに来る意外に訪ねて来るなんて、あり得ないじゃない!ああ、ありがとう!嬉しいわ」
「違います」
「ずっと待っていたのよ、エミアンがきっと迎えに来て、ママを救ってくれるって。ママはね、こんなところにいるべきではないの」
エミアンローズは久し振りに会ったララシャが、自分のこととも重なって、恥ずかしくもあったが、酷く苛立った。
「本当に辛かったのよ!こんな理不尽な目に遭って、こんなところに住まわされて、可哀想でしょう?もう悲しくて泣き暮らしていたの。エミアンにもずっと会いたかったのよ、早く救ってエミアンってずっと思っていたのよ」
これが、ソアリス王妃陛下の言った反面教師なのだと、どうして気付かなかったのか、過去に戻って自分に忠告したいと思うほどであった。
歓喜しながら、エミアンローズの手を握るララシャの目には、べっちょりと目ヤニが付いていた。
「迎えに来たわけではない、顔くらい洗いなさい」
目に余る姿にキリスが声を上げた。
「お父様…」
ララシャはようやくキリスに気付き、慌てて袖で目を拭い、キリスとエミアンローズはその姿に、鼻に皺を寄せた。
「エミアンローズが、お前の生活を見たいというから部屋に入らせて貰う」
「え?待って、今日は片付いていないのよ!連絡してくれていたら」
「いい、どきなさい」
キリスとエミアンローズはララシャを押し退けて、家に入った。侍女たちは家の外で騒ぎになった際の対応をすることになった。
家は少し生臭い匂いがし、使った食器が置き去りにしてあり、服も脱いだままのようで散乱している。部屋の隅にはゴミの袋らしきものが、沢山積んであった。
エミアンローズはその姿に、虫でも湧いているのではないかと、ゾッとした。
さすがに王女であるエミアンローズは寮で暮らしていたこともあり、狭い部屋は知っているが、こんなにも汚い部屋は見たことがなかった。
こんなところで人が、いや、お母様が生活をしていると思うと、信じられない気持ちだった。
「汚い…」
「違うの!今日はたまたま汚いだけで、いつもはキレイにしているのよ?」
ララシャはいくらこんな家でも、母親はキレイで美しくないといけないと思っており、エミアンローズに汚いと思われることが耐えられなかった。
「嘘なんでしょう?数日でこんなに汚くなるはずないわ」
「でも、エミアンには分からないかもしれないけど、メイドがいないのだから、仕方ないのよ」
「雇えないのだから、当たり前じゃない」
「え?」
「はあ…お祖父様、もう家はいいですわ」
「そうだな、具合が悪くなりそうだ」
ずっといるララシャは匂いに慣れて、分からないのかもしれないが、エミアンローズもキリスも耐えられそうもなかった。
「顔を洗って着替えて来なさい。邸で話をしよう」
「え?邸に?」
今の生活から抜け出せると思っているララシャに、キリスはハッキリ言って置かなければならないと思った。
「戻すわけではないからな、エミアンローズと話すために行くだけだ。終わったら、またここに戻って来るんだ」
「な、に、を言っているの?エミアンが私を迎えに来たのよ?」
「そうじゃないと言っているでしょう!ここでは話が出来ないから、邸に行くの。早く着替えて来て」
信じられないという顔のララシャに、キリスは問い掛けた。
「エミアンローズと話したくないのか?」
「そんなことあるはずないわ、でも迎えに来たわけではないって…冗談よね?」
「どうして私がお母様を迎えに来るのよ…」
「お母様?」
エミアンローズからママとしか呼ばれたことがなかったララシャは、その言葉にもショックを受けていた。
3,277
お気に入りに追加
7,635
あなたにおすすめの小説
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った
mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。
学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい?
良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。
9話で完結
【完結】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」
まほりろ
恋愛
※小説家になろうにて日間総合ランキング6位まで上がった作品です!2022/07/10
私の婚約者のエドワード様は私のことを「アリーシア」と呼び、私の妹のクラウディアのことを「ディア」と愛称で呼ぶ。
エドワード様は当家を訪ねて来るたびに私には黄色い薔薇を十五本、妹のクラウディアにはピンクの薔薇を七本渡す。
エドワード様は薔薇の花言葉が色と本数によって違うことをご存知ないのかしら?
それにピンクはエドワード様の髪と瞳の色。自分の髪や瞳の色の花を異性に贈る意味をエドワード様が知らないはずがないわ。
エドワード様はクラウディアを愛しているのね。二人が愛し合っているなら私は身を引くわ。
そう思って私はエドワード様との婚約を解消した。
なのに婚約を解消したはずのエドワード様が先触れもなく当家を訪れ、私のことを「シア」と呼び迫ってきて……。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!
しずもり
恋愛
ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。
お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?
突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。
そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。
よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。
*なんちゃって異世界モノの緩い設定です。
*登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。
*ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる