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王女の茶会4
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「ええ、王女ですから、相応しいお相手になると思いますわ」
「まあ、どんな方かしら」
「楽しみですわね」
「ええ、楽しみにして置いてくださいませ」
エミアンローズは、きっと二度と会わないだろうから、ひと時の優越感に浸るつもりでいた。
「従姉がピデム王国に嫁いでおりますの。きっと喜ぶでしょう」
「新聞に載るはずだから、私たちも目に出来るはずよ」
王女の結婚ともなれば、新聞には必ず載ることになる。だが、今のエミアンローズでは大きく掲載されるかは分からない。
「そうね、失礼いたしました」
「い、いえ」
エミアンローズは、まだ結婚しないのかと思われているのは嫌だとは思ったが、会うわけでもないから、まあいいかと思うことにした。
「楽しみですわね、ドレスもきっと素晴らしいんでしょうね」
「ええ、そうでしょうね」
令嬢たちはララシャの娘であることは知っているが、気位が高いところがある、だがマナーは粗が目立つが、目を瞑って欲しいと話してあった。詳しい事情を知っているのはアリルだけで、素直に楽しみにしている。
「だって、アリル様もエクル様も、ミフル様だって素晴らしかったでしょう?」
「とても素敵でしたわ。ルルエ王太子妃殿下も、エクシアーヌ殿下だって」
「そうよ、しかも今日のケイト殿下のドレス、見ました?」
噂のイチゴのケーキのドレスである。
皆、令嬢と王女殿下であるため、駆け寄って大騒ぎするようなことはないが、心の中では何あれ、可愛いとなっていたのである。
「ええ、私は初めて食べてしまいたいほど可愛いという言葉が、どういう意味か分かりましたもの」
「本当に」
皆、深く頷いている。ケイトはその間も、食べ続けており、周りの夫人たちはその愛らしい姿だけで、お茶が飲めると言って、見続けている。
ただ、ソアリスは何個目と、しっかり数を数えている。
「アリル様、他にもありますの?」
「ええ、そうみたいなの。あの子はあまりドレスを好まないんだけど、珍しく気に入っているそうよ」
「まあ!他のドレスも見たいですわ」
「またお見せできると思いますわ」
嬉しいと悶えている令嬢たちに面白くないのは、エミアンローズである。エミアンローズも、こういった時のためにドレスをわざわざ持って来ていた。
それなのに、誰もドレスを褒めない。
それもそのはず、エミアンローズは淡いピンクのドレスを着ており、余計に大きく見えてしまっており、童顔ではあるのだが、年齢的にも可愛らしい方なら、似合っていただろうというドレスであった。
褒めるところがなかったので、誰も互いのドレスには触れなかった。だが、ケイトは年齢が違うので、無条件に褒めてしまうというところだった。
さらにテーブルから挨拶に向かう方も現れて、やはりやってくるのは王妃であるソアリスのテーブルである。
「王妃陛下、ご挨拶申し上げます」
「わざわざありがとう」
「王女殿下のドレスに見惚れてしまって…皆で話しておりましたのよ」
「はい、ずっとその話でもちきりでしたの」
その声が聞こえて、エミアンローズはほら、このテーブルの令嬢は嫉妬して褒めなかったのか、見る目がなかったのだろうと思い、きっとソアリスから声を掛けられるだろうと思って、準備をしていた。
「ケイト、立ってドレスをお見せてしてあげなさい」
「はい!」
ケイトは立ち上がって、夫人方にくるりと回って、カーテシーをして見せた。
「まあまあ」
「ありがとうございます。長生き出来そうですわ」
「おおお」
「可愛い…」
寿命が延びたり、嗚咽に似た何かを洩らしている夫人もいたが、その様子に両手を強く握りしめたのはエミアンローズであった。
王女殿下というのは、自分だと思い込んでいた。
だが、エミアンローズは王弟の娘で王女ではあるが、この場で一番位の高い王女は、国王の娘であるケイト・グレンバレンである。
「まあ、どんな方かしら」
「楽しみですわね」
「ええ、楽しみにして置いてくださいませ」
エミアンローズは、きっと二度と会わないだろうから、ひと時の優越感に浸るつもりでいた。
「従姉がピデム王国に嫁いでおりますの。きっと喜ぶでしょう」
「新聞に載るはずだから、私たちも目に出来るはずよ」
王女の結婚ともなれば、新聞には必ず載ることになる。だが、今のエミアンローズでは大きく掲載されるかは分からない。
「そうね、失礼いたしました」
「い、いえ」
エミアンローズは、まだ結婚しないのかと思われているのは嫌だとは思ったが、会うわけでもないから、まあいいかと思うことにした。
「楽しみですわね、ドレスもきっと素晴らしいんでしょうね」
「ええ、そうでしょうね」
令嬢たちはララシャの娘であることは知っているが、気位が高いところがある、だがマナーは粗が目立つが、目を瞑って欲しいと話してあった。詳しい事情を知っているのはアリルだけで、素直に楽しみにしている。
「だって、アリル様もエクル様も、ミフル様だって素晴らしかったでしょう?」
「とても素敵でしたわ。ルルエ王太子妃殿下も、エクシアーヌ殿下だって」
「そうよ、しかも今日のケイト殿下のドレス、見ました?」
噂のイチゴのケーキのドレスである。
皆、令嬢と王女殿下であるため、駆け寄って大騒ぎするようなことはないが、心の中では何あれ、可愛いとなっていたのである。
「ええ、私は初めて食べてしまいたいほど可愛いという言葉が、どういう意味か分かりましたもの」
「本当に」
皆、深く頷いている。ケイトはその間も、食べ続けており、周りの夫人たちはその愛らしい姿だけで、お茶が飲めると言って、見続けている。
ただ、ソアリスは何個目と、しっかり数を数えている。
「アリル様、他にもありますの?」
「ええ、そうみたいなの。あの子はあまりドレスを好まないんだけど、珍しく気に入っているそうよ」
「まあ!他のドレスも見たいですわ」
「またお見せできると思いますわ」
嬉しいと悶えている令嬢たちに面白くないのは、エミアンローズである。エミアンローズも、こういった時のためにドレスをわざわざ持って来ていた。
それなのに、誰もドレスを褒めない。
それもそのはず、エミアンローズは淡いピンクのドレスを着ており、余計に大きく見えてしまっており、童顔ではあるのだが、年齢的にも可愛らしい方なら、似合っていただろうというドレスであった。
褒めるところがなかったので、誰も互いのドレスには触れなかった。だが、ケイトは年齢が違うので、無条件に褒めてしまうというところだった。
さらにテーブルから挨拶に向かう方も現れて、やはりやってくるのは王妃であるソアリスのテーブルである。
「王妃陛下、ご挨拶申し上げます」
「わざわざありがとう」
「王女殿下のドレスに見惚れてしまって…皆で話しておりましたのよ」
「はい、ずっとその話でもちきりでしたの」
その声が聞こえて、エミアンローズはほら、このテーブルの令嬢は嫉妬して褒めなかったのか、見る目がなかったのだろうと思い、きっとソアリスから声を掛けられるだろうと思って、準備をしていた。
「ケイト、立ってドレスをお見せてしてあげなさい」
「はい!」
ケイトは立ち上がって、夫人方にくるりと回って、カーテシーをして見せた。
「まあまあ」
「ありがとうございます。長生き出来そうですわ」
「おおお」
「可愛い…」
寿命が延びたり、嗚咽に似た何かを洩らしている夫人もいたが、その様子に両手を強く握りしめたのはエミアンローズであった。
王女殿下というのは、自分だと思い込んでいた。
だが、エミアンローズは王弟の娘で王女ではあるが、この場で一番位の高い王女は、国王の娘であるケイト・グレンバレンである。
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