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ミフルの結婚3
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グレイ王子殿下とミフル王女殿下の結婚式が、盛大に行われた。
美貌と美しいドレスに包まれたプラチナブロンドのミフルと、精悍な男性に成長したシルバーブロンドのグレイ殿下は、息を呑むほどお似合いであった。
グレイ殿下に黄色い歓声もあったが、ミフルは美しいという言葉を超えて、神々しいとまでされ、ミラン王女殿下に似ているという声も、ミフルも嬉しく思っていた。
ご褒美に闘志を燃やす、可愛らしい美味しそうなドレスに身を包んだケイトは、立派にフラワーガールを務めて、可愛いは独り占めした。
王太子夫妻はケイトのドレス姿を見ていなかったために、クート国王陛下のように妖精じゃないのかとすら言っており、王族席がざわざわしたほどである。
待っている家族のためにも写真も撮っては貰ったが、アンセム、ソアリス、ユリウス、カイルス、アリルとルーファはその姿を目に焼き付けた。
結婚式前にアンセムとソアリス、ミフルに声を掛けた。
「おめでとう」
「おめでとう」
「辛いことがあるかもしれないが、しっかりやりなさい」
「はい」
ソアリスはおめでとう以外、何も言わなかったが、ミフルがドレスを着終わって二人きりになった際に、珍しく真面目な顔をして言った。
「心が苦しいと思ったら、どんな手を使ってでも逃げて来なさい」
「え?」
ミフルは母から発されたとは思えない言葉に、素直に驚いた。
「意外?」
「ええ、そんなこと言うと思わなかったから」
「お母様が聞きたかった言葉だったの」
「そう、なの?」
「でも親はあれでしょ?聞きたかった言葉ではあるけど、あれに言われてもね。逃げて嬉しい実家でもないから、言われても微妙だった言葉だけど、誰かにそう言われていたら、違ったのかと思っていたの」
「ああ…」
親に言われたかったのかと思ったら、そうではなかったらしい。
「あなたは私以上に、大変でしょう?キャロラインのお姉様である、ミアンナ様がミレスゴート公爵家に嫁いでいるから、何かあったら頼りなさい。話はしてあるから」
「話を…?」
「ええ、なるべくではあるけど、幸せに生きて欲しいもの」
「なるべく…」
「次期王太子妃だもの、辛いこともあるでしょう。でも心が苦しくなったら…限界だわ。お母様が病気でもなんでもいいから、逃げて来なさい」
「い、いいの?」
「お母様で役に立つなら、側にはいないんだから、逃げて来た娘くらい、血でもなんでも吐いて守るわ」
ミフルがちょっと辛いからと逃げて来るような子ではないこと、余程のことがあったからこそで、国だろうが何だろうが、戦うつもりであった。
「ありがとう…」
ミフルはソアリスに泣かされるなんて思っておらず、涙を流した。
「ああ!泣いたら、化粧が取れちゃうじゃない!」
「だって~」
「だってじゃないわ、気合で引っ込めなさい」
「ええ~」
もう!と言いながら、二人は笑い合って、ミフルは結婚式へと向かった。そして、目の前で皆に笑顔を振りまく可愛い妹に、頼もしい夫に、頑張ろうと気持ちを固めたが、ソアリスの告げた言葉は一生忘れないだろうと思った。
ソアリスは万年筆をグレイ殿下に渡して、お土産をたくさん持たせて貰って、エスザール王国を後にした。
帰りの道中で、ミフル~と嘆くアンセムに、ソアリスが冷めた目で言った。
「ケイトで我慢なさい」
「見てるだけなら、可愛いんだけど…」
「耳は塞いで堪能なさい」
「うん…そうだね、そうするよ」
そのケイトはすっかり虜にした両陛下に、帰りながら食べてねと言われたお菓子を、満足そうに食べていた。
「おとしゃま、ちょんなにみちゅめても、あげまちぇんよ!これは、けいとがもらった、けいとのでしゅよ」
「う、うん」
ケイトが分けてくれることなどまずない。アンセムはその口ぶりに、すぐさま現実へと引き戻されたのであった。
美貌と美しいドレスに包まれたプラチナブロンドのミフルと、精悍な男性に成長したシルバーブロンドのグレイ殿下は、息を呑むほどお似合いであった。
グレイ殿下に黄色い歓声もあったが、ミフルは美しいという言葉を超えて、神々しいとまでされ、ミラン王女殿下に似ているという声も、ミフルも嬉しく思っていた。
ご褒美に闘志を燃やす、可愛らしい美味しそうなドレスに身を包んだケイトは、立派にフラワーガールを務めて、可愛いは独り占めした。
王太子夫妻はケイトのドレス姿を見ていなかったために、クート国王陛下のように妖精じゃないのかとすら言っており、王族席がざわざわしたほどである。
待っている家族のためにも写真も撮っては貰ったが、アンセム、ソアリス、ユリウス、カイルス、アリルとルーファはその姿を目に焼き付けた。
結婚式前にアンセムとソアリス、ミフルに声を掛けた。
「おめでとう」
「おめでとう」
「辛いことがあるかもしれないが、しっかりやりなさい」
「はい」
ソアリスはおめでとう以外、何も言わなかったが、ミフルがドレスを着終わって二人きりになった際に、珍しく真面目な顔をして言った。
「心が苦しいと思ったら、どんな手を使ってでも逃げて来なさい」
「え?」
ミフルは母から発されたとは思えない言葉に、素直に驚いた。
「意外?」
「ええ、そんなこと言うと思わなかったから」
「お母様が聞きたかった言葉だったの」
「そう、なの?」
「でも親はあれでしょ?聞きたかった言葉ではあるけど、あれに言われてもね。逃げて嬉しい実家でもないから、言われても微妙だった言葉だけど、誰かにそう言われていたら、違ったのかと思っていたの」
「ああ…」
親に言われたかったのかと思ったら、そうではなかったらしい。
「あなたは私以上に、大変でしょう?キャロラインのお姉様である、ミアンナ様がミレスゴート公爵家に嫁いでいるから、何かあったら頼りなさい。話はしてあるから」
「話を…?」
「ええ、なるべくではあるけど、幸せに生きて欲しいもの」
「なるべく…」
「次期王太子妃だもの、辛いこともあるでしょう。でも心が苦しくなったら…限界だわ。お母様が病気でもなんでもいいから、逃げて来なさい」
「い、いいの?」
「お母様で役に立つなら、側にはいないんだから、逃げて来た娘くらい、血でもなんでも吐いて守るわ」
ミフルがちょっと辛いからと逃げて来るような子ではないこと、余程のことがあったからこそで、国だろうが何だろうが、戦うつもりであった。
「ありがとう…」
ミフルはソアリスに泣かされるなんて思っておらず、涙を流した。
「ああ!泣いたら、化粧が取れちゃうじゃない!」
「だって~」
「だってじゃないわ、気合で引っ込めなさい」
「ええ~」
もう!と言いながら、二人は笑い合って、ミフルは結婚式へと向かった。そして、目の前で皆に笑顔を振りまく可愛い妹に、頼もしい夫に、頑張ろうと気持ちを固めたが、ソアリスの告げた言葉は一生忘れないだろうと思った。
ソアリスは万年筆をグレイ殿下に渡して、お土産をたくさん持たせて貰って、エスザール王国を後にした。
帰りの道中で、ミフル~と嘆くアンセムに、ソアリスが冷めた目で言った。
「ケイトで我慢なさい」
「見てるだけなら、可愛いんだけど…」
「耳は塞いで堪能なさい」
「うん…そうだね、そうするよ」
そのケイトはすっかり虜にした両陛下に、帰りながら食べてねと言われたお菓子を、満足そうに食べていた。
「おとしゃま、ちょんなにみちゅめても、あげまちぇんよ!これは、けいとがもらった、けいとのでしゅよ」
「う、うん」
ケイトが分けてくれることなどまずない。アンセムはその口ぶりに、すぐさま現実へと引き戻されたのであった。
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