私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
283 / 360

祖母と孫2

しおりを挟む
 ソアリスはカイルスと、一緒に行くと言い出したケイトを連れて、オルファーに会いにバーセム公爵家に来ていた。

 ミオトとルーファは不在で、リズとアリルとお茶会である。

「今日も凛々しいお顔だわ~素晴らしい造形、愛らしい~ねえ、カイルス」
「はい、凛々しいと思います」

 ソアリスが抱き上げているのは、アリルとルーファの息子で、バーセム公爵に似ているオルファーである。

 今日も、堀の深い顔で抱き上げられて、逞しく微笑んでいる。

「ソアリスが一番、褒めるわね」
「リズ、可愛くないの?」
「いいえ、可愛いわ。入るならば目の中に入れても痛くないって、本当だと思っているくらいよ」
「でしょう?」

 二人の祖母はうんうんと頷いて、満足そうにしている。

「たまに既視感のある凄まじい眼力を感じる時があるわ」
「それはあるわね」

 アリルの言葉に、リズが激しく同意した。言わずもがな、ミオト・バーセムに似ているからである。

「けいともめにいれちぇもいいのよ?」

 オルファーににこにこしているソアリス向かって、ケイトが言い放った。

「お母様は全面的に遠慮するわ」
「ちょんな~」
「私は入れれるものなら、入れてもいいと思っているよ?」

 にっこりと笑って、ケイトを慰めているのは、優しいカイルスである。

「おにしゃま~」
「あなたを目に入れたら、目からおやつはまだか~食事はまだか~足りない足りない~もっと寄こせって、うるさくて堪らないわ」
「おかしゃま、ちょんないいかたよくないわ」
「ふん、絶対言うわよ!私とケイトが合体したら、皆への迷惑が倍になってしまうわ!ああ、恐ろしい」

 いーだと言わんばかりに、二人は顔を突き合わせている。

「いつもこの調子で、申し訳ありません」

 カイルスが少しすまなそうな顔をして、リズに謝っていた。

「カイルス殿下こそ、大変ですわね」
「いえ、私は二人が言い合っているのが好きなのです」
「まあ、でも分かる気がしますわ。ソアリスが二人いるのか、ケイト殿下が二人いるのか、子どもの頃に本当によく似ているもの」
「お母様のですか」

 今でもソアリスが大好きなカイルスは、ソアリスのことなら何でも聞きたい。

「ええ、ソアリスも子どもの頃は絶対に言い返していたもの。お腹が空いたともよく言っていたわ」
「リズ~余計なこと言わないで、私の威厳がなくなるわ」
「大丈夫よ、あなたの威厳はもうちょっとや、そっとではなくならないわ」

 ソアリスに向かって威厳がないと言うものは、まずいない。

「それもそれで、どうなのかしら…」
「ほうら、おかしゃまもいっちょじゃない」

 ケイトにそう言われて、オルファー皆が私をいじめるわと、お腹に顔をうずめて、グリグリして、たっぷりオルファーを堪能して帰って行った。

 そして、王宮に戻って、アンセムにオルファーを絶賛していると、ユリウスとルルエが訪ねて来た。

「ルルエが妊娠しました」
「おめでとう」
「おめでとうございます」
「「ありがとうございます」」

 ミオスも三歳になり、出来ることも増えている。

「無理はしないように」
「はい!」
「公務は私とエクシアーヌでやりますから、辛いときは休みなさい」

 私が全部とは言わないのが、ソアリスというところである。

「はい、ありがとうございます」
「いいえ、私はプロフェッショナルばあさまですから!いつでもミオスを預かりますわ!とは言っても、前回もそう思っていたのに、自分が妊娠したんですけどね…今回はありませんから、任せなさい」

 皆、あの怒涛の日々を思い出し、何とも言えな気持ちになった。

「ルルエが健康で、子どもも健康で、出来れば私に似ないことを祈るばかりっ!」
「ケイトより似ることはないと思いますよ」
「それは間違いないわね」

 王宮には久し振りの祝事に、お祝いの言葉で溢れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本日もお読みいただきありがとうございます。

本日は17時に、もう1話投稿させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がもらっても構わないのだろう?

Ruhuna
恋愛
捨てたのなら、私がもらっても構わないのだろう? 6話完結予定

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

旦那様、離縁の申し出承りますわ

ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」 大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。 領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。 旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。 その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。 離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに! *女性軽視の言葉が一部あります(すみません)

【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ

リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。 先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。 エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹? 「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」 はて、そこでヤスミーンは思案する。 何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。 また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。 最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。 するとある変化が……。 ゆるふわ設定ざまああり?です。

処理中です...