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仁義なき対決17
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「嘘じゃないわ」
「お前は、生まれただけで婚約者になれて、ラッキーだったんだよ。そうでなかったら、婚約者もいなかっただろう」
「そんなこと絶対にありえないわっ!」
何処までも自己評価の高いララシャに、そろそろ皆、疲れを感じていた。
「私の周りの令息は、上の妹はガリガリで気持ちが悪いと、よく言われていたよ。だから、痩せていると言われたいから、食べないんだと答えていた。今となっては面影もないがな」
「っな!食べていたわ」
見る影がなくなっても、あの頃のララシャにとって痩せていることが、周りから素敵だと思われていると信じて疑うことはなかった。
だが、食べても太らないのであって、食べていないというのは屈辱であった。
「私の周りでも、同じように言われておりましたよ」
「やはり、そうですか」
オードエル公爵までもが、答え始めた。
「貴族令嬢は重いドレスや、危険な目に遭うこともあるから、健康的である方がいいのに、勘違いしているとよく話していました。そして、王太子殿下ははずれの婚約者を引かされて、どうにかならないのかと気を揉んでおりました」
こういった時、同じ女性の意見よりも、ララシャにとっては男性の内緒話のような意見は聞くことがないので、生々しく突き刺さった。しかも、勝手にあわよくばと思っていた相手ならば、尚刺さる。
「そうですよね、私も申し訳ない気持ちでおりました」
ララシャは、あまりにショックで固まってしまった。そこでようやく、黙ってお茶を飲んでいたソアリスが、口を開いた。
「領地で得意の王子様が、来るのを待てばいいじゃない。そうでなかったら、お兄様、修道院に行くことになるでしょう?」
「ああ、バート伯爵の元妻と同じところがいいか?」
「嫌よ、修道院なんて…」
「私はどうしてか、愛されてしまうの、でしょう?」
結婚前にララシャが、誇らしげにソアリスに言っていた言葉であった。
「それとも、愛されることはないと認める?」
「そんなこと、認めないわ」
ソアリスはララシャが絶対に認めないことで、仕留めることにした。
「どんな場所でも、どんな姿でも、あなたなら愛されるのでしょう?それとも、ララシャには無理かしら?」
「そんなことはないわ」
「ララシャを求めて、男性が訪ねて来たら、領地にいると言ってくれますわよ?ねえ、お兄様?」
「ああ、居場所を教えるさ」
「ほら、何も問題ないじゃない?大人しく去るのも、美しいのではなくて?」
「…」
黙ったララシャを確認して、ソアリスは終わりにしようと立ち上がった。
「さあ、これでお別れね。お元気で。皆様、お疲れさまでした。お兄様、後はよろしくお願いしますわね」
「はい、承知しました」
「さあ、皆様、帰りましょう」
「「「はい」」」
オードエル公爵、メディナ、ミソラが返事をし、ケイトもきっちり食べ終えて、ソファから降りて、ソアリスの手を握った。
「おひりゅごはん」
「ええ、帰って昼食を食べましょう」
「あい!」
ケイトは満面の笑みで答えて、皆の疲れが和らいだ。
「王妃陛下…」
声を掛けたのは、マルシャであった。
「何かしら?子どもがお腹を空かせているのですが」
菓子をたらふくとは言わないが、食べていたので、完全に嫌味である。
「分かっております。今日はありがとうございました。ララシャのことは責任を持って、対処いたします」
「ええ、そうしてください」
「本当に、申し訳ございませんでした…私は間違っておりました。あなたが王妃になっていた良かったと、私たちも心から思っております」
「そう?」
「はい…また来ていただけたら、嬉しく思います」
オードエル公爵とミソラは、あまり関係は良くないと聞いていたが、何とも言えない会話に冷たさを感じた。
「お前は、生まれただけで婚約者になれて、ラッキーだったんだよ。そうでなかったら、婚約者もいなかっただろう」
「そんなこと絶対にありえないわっ!」
何処までも自己評価の高いララシャに、そろそろ皆、疲れを感じていた。
「私の周りの令息は、上の妹はガリガリで気持ちが悪いと、よく言われていたよ。だから、痩せていると言われたいから、食べないんだと答えていた。今となっては面影もないがな」
「っな!食べていたわ」
見る影がなくなっても、あの頃のララシャにとって痩せていることが、周りから素敵だと思われていると信じて疑うことはなかった。
だが、食べても太らないのであって、食べていないというのは屈辱であった。
「私の周りでも、同じように言われておりましたよ」
「やはり、そうですか」
オードエル公爵までもが、答え始めた。
「貴族令嬢は重いドレスや、危険な目に遭うこともあるから、健康的である方がいいのに、勘違いしているとよく話していました。そして、王太子殿下ははずれの婚約者を引かされて、どうにかならないのかと気を揉んでおりました」
こういった時、同じ女性の意見よりも、ララシャにとっては男性の内緒話のような意見は聞くことがないので、生々しく突き刺さった。しかも、勝手にあわよくばと思っていた相手ならば、尚刺さる。
「そうですよね、私も申し訳ない気持ちでおりました」
ララシャは、あまりにショックで固まってしまった。そこでようやく、黙ってお茶を飲んでいたソアリスが、口を開いた。
「領地で得意の王子様が、来るのを待てばいいじゃない。そうでなかったら、お兄様、修道院に行くことになるでしょう?」
「ああ、バート伯爵の元妻と同じところがいいか?」
「嫌よ、修道院なんて…」
「私はどうしてか、愛されてしまうの、でしょう?」
結婚前にララシャが、誇らしげにソアリスに言っていた言葉であった。
「それとも、愛されることはないと認める?」
「そんなこと、認めないわ」
ソアリスはララシャが絶対に認めないことで、仕留めることにした。
「どんな場所でも、どんな姿でも、あなたなら愛されるのでしょう?それとも、ララシャには無理かしら?」
「そんなことはないわ」
「ララシャを求めて、男性が訪ねて来たら、領地にいると言ってくれますわよ?ねえ、お兄様?」
「ああ、居場所を教えるさ」
「ほら、何も問題ないじゃない?大人しく去るのも、美しいのではなくて?」
「…」
黙ったララシャを確認して、ソアリスは終わりにしようと立ち上がった。
「さあ、これでお別れね。お元気で。皆様、お疲れさまでした。お兄様、後はよろしくお願いしますわね」
「はい、承知しました」
「さあ、皆様、帰りましょう」
「「「はい」」」
オードエル公爵、メディナ、ミソラが返事をし、ケイトもきっちり食べ終えて、ソファから降りて、ソアリスの手を握った。
「おひりゅごはん」
「ええ、帰って昼食を食べましょう」
「あい!」
ケイトは満面の笑みで答えて、皆の疲れが和らいだ。
「王妃陛下…」
声を掛けたのは、マルシャであった。
「何かしら?子どもがお腹を空かせているのですが」
菓子をたらふくとは言わないが、食べていたので、完全に嫌味である。
「分かっております。今日はありがとうございました。ララシャのことは責任を持って、対処いたします」
「ええ、そうしてください」
「本当に、申し訳ございませんでした…私は間違っておりました。あなたが王妃になっていた良かったと、私たちも心から思っております」
「そう?」
「はい…また来ていただけたら、嬉しく思います」
オードエル公爵とミソラは、あまり関係は良くないと聞いていたが、何とも言えない会話に冷たさを感じた。
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