270 / 395
仁義なき対決16
しおりを挟む
傷付いていると口にするくらいなら、食べるなとまでは言わないが、少しくらい痩せるだろうとサイラスは思っていた。
「じゃあ、もういい。ロアンスラー公爵家からお前の籍を抜くか?」
「は?」
「自由にしたらいい、平民になってもいい。どこかの貴族に養子にして貰えるならして貰えばいい。夜会だって行けばいい、再婚だって勝手にすればいい。ただし、ロアンスラー公爵家は一切、今後関わりを持つことはない」
何のメリットもなく、いやデメリットしかない中年の女性を養子にするなど、特別な理由がない限り、まずあることではない。
「っな!お父様が許さないわ」
「許可するよ、公爵はサイラスだ」
キリスもララシャの目に余る態度に、ハッキリと言い切った。マルシャも横で苦々しい顔をしながら、頷いている。
「っ!嘘でしょう…」
「お前には認めてくれる者がいるんだろう?その方にでも養子にして貰ったらいいじゃないか」
「…あ、あっ、あのオードエル公爵」
ララシャは縋るような目でまたもオードエル公爵を見たが、オードエル公爵は変わらず、見ようともしなかった。
「オードエル公爵に養子にして貰おうなどと考えているのか?冗談もいい加減にしろ!気色が悪いな」
「ち、違うわ」
「だったら何だ?再婚してくれとでも言うのか?友人の夫だった方に?」
「でも、私だったら…」
ララシャは申し訳そうな顔を作りながらも、見もしないオードエル公爵に、諦めもせずに視線を送った。
「お断りします」
「っ」
「断られたぞ!そもそも、お前のせいで、離縁したようなものなのに、再婚する訳がないだろうが!」
「ロアンスラー公爵、元妻のせいでもありますから、お互い様です」
「申し訳ございません、このような空気の悪い場に」
「ど、ど、どういうこと…?」
ララシャは離縁に、自分が関わっているとは思ってもいなかった。
「元々、おかしいところがある妻ではありましたが、決定的になったのは今回の件です。先程、娘が言った下の娘が言い寄ったことを咎めなかった頃から、いつかこうなると思っておりましたので、清々しております」
「別居は、領地にいるからだと…」
「ええ、別居する際に、丁度良かったものですから」
ファーリンもいずれ迎えに来てくれると思っていたが、今回の件でいい訳はもういい、離縁すると、後はデラウェース伯爵が任せることになった。
「出ていくか?手続きはしておくから、心配は要らない」
「お兄様、そんなことしたら後悔するわ」
「いや、しないが?」
「私だって、王太子様の婚約者にならなかったら、縁談だってあったはずよ」
皆、今更何を言い出すのかと、呆れるしかなかった。
「私は、お前は婚約者が見付からなかったと思うが?」
「そんなはずないじゃない!婚約者が見付からなかったのは、ソアリスでしょう!」
「違うわ!」
声を上げたのは、マルシャであった。
「何よ、お母様…」
「王家から念のために頼まれていたのよ、ララシャが結婚するまでは、ソアリス、いえ、王妃陛下の婚約は待って欲しいと」
ソアリスも薄々そうではないかと思っており、嫁いだ後で、国王夫妻からも、前国王夫妻からも聞かされている。
「私の身代わりみたいなものでしょう!」
「王妃陛下には縁談は…実は、沢山あったのよ。敢えて、言わなかったの、ごめんなさい…」
当時のマルシャは、ソアリスが調子に乗ったら困るからという理由で言わなかったので、言い辛そうにしている。
「別に構いませんわ」
「ソアリスに?どうせ碌な相手ではないでしょう!そんなの縁談とは呼べないわ」
「いいえ、他国の王家も、公爵家も、侯爵家もあったわ」
「はあ?王妃になったからって、嘘を言わないでっ!」
ララシャは当時のソアリスより劣っていたと思われることが、許せなかった。
「じゃあ、もういい。ロアンスラー公爵家からお前の籍を抜くか?」
「は?」
「自由にしたらいい、平民になってもいい。どこかの貴族に養子にして貰えるならして貰えばいい。夜会だって行けばいい、再婚だって勝手にすればいい。ただし、ロアンスラー公爵家は一切、今後関わりを持つことはない」
何のメリットもなく、いやデメリットしかない中年の女性を養子にするなど、特別な理由がない限り、まずあることではない。
「っな!お父様が許さないわ」
「許可するよ、公爵はサイラスだ」
キリスもララシャの目に余る態度に、ハッキリと言い切った。マルシャも横で苦々しい顔をしながら、頷いている。
「っ!嘘でしょう…」
「お前には認めてくれる者がいるんだろう?その方にでも養子にして貰ったらいいじゃないか」
「…あ、あっ、あのオードエル公爵」
ララシャは縋るような目でまたもオードエル公爵を見たが、オードエル公爵は変わらず、見ようともしなかった。
「オードエル公爵に養子にして貰おうなどと考えているのか?冗談もいい加減にしろ!気色が悪いな」
「ち、違うわ」
「だったら何だ?再婚してくれとでも言うのか?友人の夫だった方に?」
「でも、私だったら…」
ララシャは申し訳そうな顔を作りながらも、見もしないオードエル公爵に、諦めもせずに視線を送った。
「お断りします」
「っ」
「断られたぞ!そもそも、お前のせいで、離縁したようなものなのに、再婚する訳がないだろうが!」
「ロアンスラー公爵、元妻のせいでもありますから、お互い様です」
「申し訳ございません、このような空気の悪い場に」
「ど、ど、どういうこと…?」
ララシャは離縁に、自分が関わっているとは思ってもいなかった。
「元々、おかしいところがある妻ではありましたが、決定的になったのは今回の件です。先程、娘が言った下の娘が言い寄ったことを咎めなかった頃から、いつかこうなると思っておりましたので、清々しております」
「別居は、領地にいるからだと…」
「ええ、別居する際に、丁度良かったものですから」
ファーリンもいずれ迎えに来てくれると思っていたが、今回の件でいい訳はもういい、離縁すると、後はデラウェース伯爵が任せることになった。
「出ていくか?手続きはしておくから、心配は要らない」
「お兄様、そんなことしたら後悔するわ」
「いや、しないが?」
「私だって、王太子様の婚約者にならなかったら、縁談だってあったはずよ」
皆、今更何を言い出すのかと、呆れるしかなかった。
「私は、お前は婚約者が見付からなかったと思うが?」
「そんなはずないじゃない!婚約者が見付からなかったのは、ソアリスでしょう!」
「違うわ!」
声を上げたのは、マルシャであった。
「何よ、お母様…」
「王家から念のために頼まれていたのよ、ララシャが結婚するまでは、ソアリス、いえ、王妃陛下の婚約は待って欲しいと」
ソアリスも薄々そうではないかと思っており、嫁いだ後で、国王夫妻からも、前国王夫妻からも聞かされている。
「私の身代わりみたいなものでしょう!」
「王妃陛下には縁談は…実は、沢山あったのよ。敢えて、言わなかったの、ごめんなさい…」
当時のマルシャは、ソアリスが調子に乗ったら困るからという理由で言わなかったので、言い辛そうにしている。
「別に構いませんわ」
「ソアリスに?どうせ碌な相手ではないでしょう!そんなの縁談とは呼べないわ」
「いいえ、他国の王家も、公爵家も、侯爵家もあったわ」
「はあ?王妃になったからって、嘘を言わないでっ!」
ララシャは当時のソアリスより劣っていたと思われることが、許せなかった。
4,183
お気に入りに追加
8,468
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されないあたしは全てを諦めようと思います
黒幸
恋愛
ネドヴェト侯爵家に生まれた四姉妹の末っ子アマーリエ(エミー)は元気でおしゃまな女の子。
美人で聡明な長女。
利発で活発な次女。
病弱で温和な三女。
兄妹同然に育った第二王子。
時に元気が良すぎて、怒られるアマーリエは誰からも愛されている。
誰もがそう思っていました。
サブタイトルが台詞ぽい時はアマーリエの一人称視点。
客観的なサブタイトル名の時は三人称視点やその他の視点になります。
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木あかり
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
従姉の子を義母から守るために婚約しました。
しゃーりん
恋愛
ジェットには6歳年上の従姉チェルシーがいた。
しかし、彼女は事故で亡くなってしまった。まだ小さい娘を残して。
再婚した従姉の夫ウォルトは娘シャルロッテの立場が不安になり、娘をジェットの家に預けてきた。婚約者として。
シャルロッテが15歳になるまでは、婚約者でいる必要があるらしい。
ところが、シャルロッテが13歳の時、公爵家に帰ることになった。
当然、婚約は白紙に戻ると思っていたジェットだが、シャルロッテの気持ち次第となって…
歳の差13歳のジェットとシャルロッテのお話です。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
相手不在で進んでいく婚約解消物語
キムラましゅろう
恋愛
自分の目で確かめるなんて言わなければよかった。
噂が真実かなんて、そんなこと他の誰かに確認して貰えばよかった。
今、わたしの目の前にある光景が、それが単なる噂では無かったと物語る……。
王都で近衛騎士として働く婚約者に恋人が出来たという噂を確かめるべく単身王都へ乗り込んだリリーが見たものは、婚約者のグレインが恋人と噂される女性の肩を抱いて歩く姿だった……。
噂が真実と確信したリリーは領地に戻り、居候先の家族を巻き込んで婚約解消へと向けて動き出す。
婚約者は遠く離れている為に不在だけど……☆
これは婚約者の心変わりを知った直後から、幸せになれる道を模索して突き進むリリーの数日間の物語である。
果たしてリリーは幸せになれるのか。
5〜7話くらいで完結を予定しているど短編です。
完全ご都合主義、完全ノーリアリティでラストまで作者も突き進みます。
作中に現代的な言葉が出て来ても気にしてはいけません。
全て大らかな心で受け止めて下さい。
小説家になろうサンでも投稿します。
R15は念のため……。
【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした
まほりろ
恋愛
【完結済み】
公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。
壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。
アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。
家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。
修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。
しかし仔猫の正体は聖獣で……。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。
・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。
2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!!
アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる