260 / 395
仁義なき対決6
しおりを挟む
「ララシャ・ロアンスラー、サインした誓約書の内容を守らなかったということを理解していますか」
「…え、何を言っているの?そうじゃないでしょう?」
「いいえ、私は今日が本当に、最期だと思ったからこそ、わざわざやって来て、あなたに事実を話しているのですよ」
「違うわ!側妃の話でしょう!」
その言葉に室内は、ピキっとした冷たい空気が張り詰めた。最大の発生源はミソラとオードエル公爵である。
「王家に関わらないと約束しただろう?しかも、側妃を進言するなどあり得ないことだ。そんなことも分からないのか?」
「何なのよ!話し方も…」
ソアリスは正直、女性らしい話し方よりも淡々と話す方が楽である。
「私はあなたのように、私が王太子殿下の婚約者で、王太子妃だったというあったかもしれない未来ではなく、現実に王妃なのです」
「私が婚約者でなくなったから、王妃になれたのよ!私に感謝するべきでしょう!」
ララシャにはもう過去に手にしていたものしかない。
「私があなたはに感謝したことは一度もない。勿論、憧れたこともなければ、話を一度も面白い、興味深いと思ったこともない」
「は…?」
「あなたの話はクソほど面白くない」
「な、な、な…そんなこと、そもそも関係ないじゃない」
「ああ、関係ない。だが、ずっと思っていて、一度言ってやろうと思っていたからな。言えて良かった」
最期であれば言って置こうと思っていた、一つであった。
幼い頃から、自慢話を主とする自分の話ばかりで、褒められ待ちをされていたのだ。言って置かなければ後悔する。
「性格が悪いわ!」
「ええ、悪いわよ?性格も口も悪いし、頭も大して良くない。だけどね、あなたはそれ以下なの。それってあなたにはとっても恥ずかしいことじゃない?」
ソアリスは自分が優秀で、素晴らしい人間だと思ったことはない。
「私はロアンスラー公爵家の欠陥品だもの。ねえ、お兄様、お父様、お母様?」
「そんなことはない」
「そうだ」
「そうよ!」
昔とはすっかり変わった答えだが、ソアリスは見返したかったわけでなく、冷めた目で見た。お転婆で、暴言を平気で吐く、口の立つソアリスはロアンスラー公爵家では欠陥品扱いであった。
3人はまさか自分たちに振られるとは思わずに、冷や汗をかいた。
「みんな、何を言っているの!ソアリスは不出来で」
「ある意味、あなただけは良くも悪くも、変わらないわね。代わったのは体形だけね、てっきりお父様に似ていると思っていたのよ?両親って、やはり両親なのね」
「うるさい!」
ララシャはついにオードエル公爵を気にすることもなく、喚いた。
「ああ!その体形だけは面白かったわ」
話はいつまで経っても面白くなかったが、マルシャにそっくりな樽型の体形だけは、何度も何度も指摘するほど面白かった。
「おこぼれ婚とは言わないのね?」
「っ」
「ルーエンヌ叔母様に聞いたのでしょう?おこぼれはお前の方が先だと、どう思った?どうせ、私を下に見て、優越感に浸っていたのでしょう?」
「私は違うわ…選ばれたんだから」
「リベル殿下はそうでしょうね、唯一選んでくれた人だったのに。唯一愛してくれる人だったのに。どうしてなの?」
ララシャはアンセムに選ばれたわけではない、だがリベルには選ばれた。ララシャにとって選ばれること、特別であること、愛されることは大事なことであったはずなのに、どう思っているのか聞いてみたかった。
「今でも愛されていることに変わりはないわ」
ララシャがそう言うと、時が止まったのかというほどの静寂だった。ケイトのクッキーのポリポリという咀嚼音が、聞こえるほどであった。
「なるほどね…いつになったら、己を顧みるの?」
ララシャが離縁され、制限されている生活の時間も経っている。にも関わらず、まだ自分の立場を分かっていないのか。
「…え、何を言っているの?そうじゃないでしょう?」
「いいえ、私は今日が本当に、最期だと思ったからこそ、わざわざやって来て、あなたに事実を話しているのですよ」
「違うわ!側妃の話でしょう!」
その言葉に室内は、ピキっとした冷たい空気が張り詰めた。最大の発生源はミソラとオードエル公爵である。
「王家に関わらないと約束しただろう?しかも、側妃を進言するなどあり得ないことだ。そんなことも分からないのか?」
「何なのよ!話し方も…」
ソアリスは正直、女性らしい話し方よりも淡々と話す方が楽である。
「私はあなたのように、私が王太子殿下の婚約者で、王太子妃だったというあったかもしれない未来ではなく、現実に王妃なのです」
「私が婚約者でなくなったから、王妃になれたのよ!私に感謝するべきでしょう!」
ララシャにはもう過去に手にしていたものしかない。
「私があなたはに感謝したことは一度もない。勿論、憧れたこともなければ、話を一度も面白い、興味深いと思ったこともない」
「は…?」
「あなたの話はクソほど面白くない」
「な、な、な…そんなこと、そもそも関係ないじゃない」
「ああ、関係ない。だが、ずっと思っていて、一度言ってやろうと思っていたからな。言えて良かった」
最期であれば言って置こうと思っていた、一つであった。
幼い頃から、自慢話を主とする自分の話ばかりで、褒められ待ちをされていたのだ。言って置かなければ後悔する。
「性格が悪いわ!」
「ええ、悪いわよ?性格も口も悪いし、頭も大して良くない。だけどね、あなたはそれ以下なの。それってあなたにはとっても恥ずかしいことじゃない?」
ソアリスは自分が優秀で、素晴らしい人間だと思ったことはない。
「私はロアンスラー公爵家の欠陥品だもの。ねえ、お兄様、お父様、お母様?」
「そんなことはない」
「そうだ」
「そうよ!」
昔とはすっかり変わった答えだが、ソアリスは見返したかったわけでなく、冷めた目で見た。お転婆で、暴言を平気で吐く、口の立つソアリスはロアンスラー公爵家では欠陥品扱いであった。
3人はまさか自分たちに振られるとは思わずに、冷や汗をかいた。
「みんな、何を言っているの!ソアリスは不出来で」
「ある意味、あなただけは良くも悪くも、変わらないわね。代わったのは体形だけね、てっきりお父様に似ていると思っていたのよ?両親って、やはり両親なのね」
「うるさい!」
ララシャはついにオードエル公爵を気にすることもなく、喚いた。
「ああ!その体形だけは面白かったわ」
話はいつまで経っても面白くなかったが、マルシャにそっくりな樽型の体形だけは、何度も何度も指摘するほど面白かった。
「おこぼれ婚とは言わないのね?」
「っ」
「ルーエンヌ叔母様に聞いたのでしょう?おこぼれはお前の方が先だと、どう思った?どうせ、私を下に見て、優越感に浸っていたのでしょう?」
「私は違うわ…選ばれたんだから」
「リベル殿下はそうでしょうね、唯一選んでくれた人だったのに。唯一愛してくれる人だったのに。どうしてなの?」
ララシャはアンセムに選ばれたわけではない、だがリベルには選ばれた。ララシャにとって選ばれること、特別であること、愛されることは大事なことであったはずなのに、どう思っているのか聞いてみたかった。
「今でも愛されていることに変わりはないわ」
ララシャがそう言うと、時が止まったのかというほどの静寂だった。ケイトのクッキーのポリポリという咀嚼音が、聞こえるほどであった。
「なるほどね…いつになったら、己を顧みるの?」
ララシャが離縁され、制限されている生活の時間も経っている。にも関わらず、まだ自分の立場を分かっていないのか。
4,308
お気に入りに追加
8,469
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木あかり
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
さげわたし
凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。
今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。
だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。
実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。
そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。
※こちらも不定期更新です。
連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。
相手不在で進んでいく婚約解消物語
キムラましゅろう
恋愛
自分の目で確かめるなんて言わなければよかった。
噂が真実かなんて、そんなこと他の誰かに確認して貰えばよかった。
今、わたしの目の前にある光景が、それが単なる噂では無かったと物語る……。
王都で近衛騎士として働く婚約者に恋人が出来たという噂を確かめるべく単身王都へ乗り込んだリリーが見たものは、婚約者のグレインが恋人と噂される女性の肩を抱いて歩く姿だった……。
噂が真実と確信したリリーは領地に戻り、居候先の家族を巻き込んで婚約解消へと向けて動き出す。
婚約者は遠く離れている為に不在だけど……☆
これは婚約者の心変わりを知った直後から、幸せになれる道を模索して突き進むリリーの数日間の物語である。
果たしてリリーは幸せになれるのか。
5〜7話くらいで完結を予定しているど短編です。
完全ご都合主義、完全ノーリアリティでラストまで作者も突き進みます。
作中に現代的な言葉が出て来ても気にしてはいけません。
全て大らかな心で受け止めて下さい。
小説家になろうサンでも投稿します。
R15は念のため……。
【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした
まほりろ
恋愛
【完結済み】
公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。
壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。
アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。
家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。
修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。
しかし仔猫の正体は聖獣で……。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。
・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。
2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!!
アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。
傷物にされた私は幸せを掴む
コトミ
恋愛
エミリア・フィナリーは子爵家の二人姉妹の姉で、妹のために我慢していた。両親は真面目でおとなしいエミリアよりも、明るくて可愛い双子の妹である次女のミアを溺愛していた。そんな中でもエミリアは長女のために子爵家の婿取りをしなくてはいけなかったために、同じく子爵家の次男との婚約が決まっていた。その子爵家の次男はルイと言い、エミリアにはとても優しくしていた。顔も良くて、エミリアは少し自慢に思っていた。エミリアが十七になり、結婚も近くなってきた冬の日に事件が起き、大きな傷を負う事になる。
(ここまで読んでいただきありがとうございます。妹ざまあ、展開です。本編も読んでいただけると嬉しいです)
婚約者からの断罪が終わったので北の修道院へバカンスに行ってきます。
四折 柊
恋愛
嫌いな婚約者から冤罪により婚約破棄をされたアンジェリカは北の修道院に送られることになった。その企みは知っていたのでそれを利用することにした。先に手を打って快適に過ごせるように修道院を改修して準備万端にしてバカンスに行く。そこで大好きな人と楽しく過ごすことにしたアンジェリカのお話。
(断罪シーンはありません)前編:アンジェリカ(公爵令嬢) 後編:ラフェエル(従者)となります。※8/6に後日談2を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる