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仁義なき対決の始まり
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サイラスは意思も伝えるためにソアリスに、直接届けることにした。
「ララシャからの手紙です」
「まあ、受け取っていいの?」
ソアリスはいずれララシャが何か起こすとは思っていたが、さすがに兄が直々に持ってくるとは思わなかった。
「はい。王妃陛下に渡して欲しいと本人が言い、両親にも私の家族にも話してあります。皆、もういいだろうということだそうです」
「短い生活だったわね」
ソアリスに手紙を渡した時点で、ララシャはロアンスラー公爵邸には居ることは出来なくなる。
「どうして欲しいと思っているの?」
「王妃陛下の思うようにしたらいいと思っています」
「そう…修道院も迷惑でしょうからね…さて、どうするか。入れるにしても、心を完全に折ってしまわないといけませんね。お兄様は何が書いてあるか知っているの?」
「いいえ、感謝するなどとは言っておりましたが」
その言葉に、ソアリスは眉間にしわを寄せた。
「感謝したことは、一度もないのだけど」
「私もない、ただ碌なことが書いていないことだけは分かる」
「違いないわね」
お世辞にも仲がいいとは言えない兄と妹ではあったが、自己肯定感や自尊心が高いララシャへの評価だけは同じであった。
ソアリスは、ララシャの手紙を開いて読み始めた。侍女や護衛は言葉を発することはなかったが、一体何が書いてあるのだろうかと緊張感が走った。
すぐに答えは出た、ソアリスの表情が怒りであったからである。
ということは、ソアリス自身のことではない。ソアリス自身のことであれば、おそらく呆れとなるはずである。
「不愉快なことを書いてやがるな…あと、字が汚ぇな!」
ララシャは幼い少女が可愛さを重視したような、丸みを帯びた字で、読みにくい上に、四十代の女性が書いたとは思えないものだった。
「メディナ、陛下に時間が出来たら、話をしたいと伝えて来てくれる?」
「承知しました」
「ポーリア、ユリウスとルルエにも同じように伝えて、ミソラがいたら、一緒に来るように伝えて来てくれる?」
「承知しました」
メディナとポーリアは、そそくさと出て行った。
「何が書いてあったのでしょうか」
持って来たのはサイラスで、正直知りたくもないことではあるが、今後も対応のためにも何が書いてあったのかは、聞いておかなければならない。
「オードエル公爵の娘、ミーチュアをユリウスの側妃にしなさいだと」
「はあ!?あっ、すまない」
サイラスは思わず大きな声を出してしまい、すぐさま我に返った。
「結婚されたはずなのよね」
「この前、会った際だろうな…」
勿論、サイラスはララシャの行動は、ソアリスに念のために報告してあるので、ソアリスもララシャがファーリンに会ったことは知っている。
「オードエル公爵に、ミクシワ伯爵も呼ばなくてはならないわね。ララシャの周りの夫人を私が屍にしているみたいじゃない…」
ララシャの友人ということで良い印象は持っていなかったことはあるが、別に潰していっているわけではない。
「自業自得ではないか」
「そうだけど、皆に話を付けたら、ロアンスラー公爵邸に行くわ。いいかしら?」
「い、いらっしゃるのですか?」
ソアリスは嫁いでから、一度もロアンスラー公爵邸には帰っていない。
「ええ、何十年振りかしらね」
「承知しました」
決まり次第、連絡をすると伝えて、サイラスは帰り、ララシャにも手紙はきちんと渡したと伝えた。
「喜んでいたでしょう?いい姉を持ったことを感謝していた?」
「…」
「私も王家に貢献が出来て嬉しいわ」
「いずれ、連絡があるだろう」
「ご褒美を貰っていいわね、どうしようかしら?ドレスも良いわね、王家の御用達のところで作って貰おうかしら…ふふっ、楽しみね」
絶望に足を踏み入れていることに気付きもしない、妹に溜息しか出なかった。
「ララシャからの手紙です」
「まあ、受け取っていいの?」
ソアリスはいずれララシャが何か起こすとは思っていたが、さすがに兄が直々に持ってくるとは思わなかった。
「はい。王妃陛下に渡して欲しいと本人が言い、両親にも私の家族にも話してあります。皆、もういいだろうということだそうです」
「短い生活だったわね」
ソアリスに手紙を渡した時点で、ララシャはロアンスラー公爵邸には居ることは出来なくなる。
「どうして欲しいと思っているの?」
「王妃陛下の思うようにしたらいいと思っています」
「そう…修道院も迷惑でしょうからね…さて、どうするか。入れるにしても、心を完全に折ってしまわないといけませんね。お兄様は何が書いてあるか知っているの?」
「いいえ、感謝するなどとは言っておりましたが」
その言葉に、ソアリスは眉間にしわを寄せた。
「感謝したことは、一度もないのだけど」
「私もない、ただ碌なことが書いていないことだけは分かる」
「違いないわね」
お世辞にも仲がいいとは言えない兄と妹ではあったが、自己肯定感や自尊心が高いララシャへの評価だけは同じであった。
ソアリスは、ララシャの手紙を開いて読み始めた。侍女や護衛は言葉を発することはなかったが、一体何が書いてあるのだろうかと緊張感が走った。
すぐに答えは出た、ソアリスの表情が怒りであったからである。
ということは、ソアリス自身のことではない。ソアリス自身のことであれば、おそらく呆れとなるはずである。
「不愉快なことを書いてやがるな…あと、字が汚ぇな!」
ララシャは幼い少女が可愛さを重視したような、丸みを帯びた字で、読みにくい上に、四十代の女性が書いたとは思えないものだった。
「メディナ、陛下に時間が出来たら、話をしたいと伝えて来てくれる?」
「承知しました」
「ポーリア、ユリウスとルルエにも同じように伝えて、ミソラがいたら、一緒に来るように伝えて来てくれる?」
「承知しました」
メディナとポーリアは、そそくさと出て行った。
「何が書いてあったのでしょうか」
持って来たのはサイラスで、正直知りたくもないことではあるが、今後も対応のためにも何が書いてあったのかは、聞いておかなければならない。
「オードエル公爵の娘、ミーチュアをユリウスの側妃にしなさいだと」
「はあ!?あっ、すまない」
サイラスは思わず大きな声を出してしまい、すぐさま我に返った。
「結婚されたはずなのよね」
「この前、会った際だろうな…」
勿論、サイラスはララシャの行動は、ソアリスに念のために報告してあるので、ソアリスもララシャがファーリンに会ったことは知っている。
「オードエル公爵に、ミクシワ伯爵も呼ばなくてはならないわね。ララシャの周りの夫人を私が屍にしているみたいじゃない…」
ララシャの友人ということで良い印象は持っていなかったことはあるが、別に潰していっているわけではない。
「自業自得ではないか」
「そうだけど、皆に話を付けたら、ロアンスラー公爵邸に行くわ。いいかしら?」
「い、いらっしゃるのですか?」
ソアリスは嫁いでから、一度もロアンスラー公爵邸には帰っていない。
「ええ、何十年振りかしらね」
「承知しました」
決まり次第、連絡をすると伝えて、サイラスは帰り、ララシャにも手紙はきちんと渡したと伝えた。
「喜んでいたでしょう?いい姉を持ったことを感謝していた?」
「…」
「私も王家に貢献が出来て嬉しいわ」
「いずれ、連絡があるだろう」
「ご褒美を貰っていいわね、どうしようかしら?ドレスも良いわね、王家の御用達のところで作って貰おうかしら…ふふっ、楽しみね」
絶望に足を踏み入れていることに気付きもしない、妹に溜息しか出なかった。
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