私のバラ色ではない人生

野村にれ

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実りのない茶会1

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 ララシャはファーリンに手紙を書き、オードエル公爵邸に送って欲しいとサイラスに願い出ていた。

「オードエル公爵夫人か?」
「ええ、結婚するまでは親しくしていたの」

 娘・ミソラがルルエ王太子妃の侍女であることも知らず、ファーリンが離縁こそされていないが、邸を出されて、ミクシワ伯爵邸にいることも、サイラスは妻から聞いており、それならいいかと了承することにした。

 サイラスはオードエル公爵邸ではなく、ミクシワ伯爵家に手紙を送った。

 ファーリンもララシャのことは聞いていたが、自身もいつになったらサリエストが迎えに来てくれるのかと、同じような思考を持ち、暇を持て余していたので、ミクシワ伯爵家に招待することにした。

 ララシャは返事が来て、今度はちゃんとサリエストと話して、心配して貰えるはずだと、喜びを嚙み締めた。めかし込んで出掛けたが、サイラスにも許可を取っていたので、降ろされたのはミクシワ伯爵家であった。

「え?行き先はオードエル公爵邸よ」
「いえ、ファーリン様はミクシワ伯爵邸にいらっしゃいますので、伯爵家へ行くように言われております。二時間後にお迎えに上がりますので、では」

 御者はそう言って、さっさと帰ってしまい、ミクシワ伯爵家でも、ファーリンは現ミクシワ伯爵である兄に黙って招待したために、酷く怒られることになり、追い返すわけにもいかないので、二人は茶会をすることになった。

「どうしてオードエル公爵邸ではないの?離縁されたの?」
「いえ、そうではないのです。邸には息子家族と、夫はほとんど領地にいるものですから、私はこちらにおりますの」
「そうだったの…」

 ファーリンは生家に追い出されたなどとは言わず、ララシャも仲のいい夫婦なら、一緒に領地に行けばいいのにと思うところだが、娯楽の少ない領地に行きたくなかったのではないかと考えていた。
 
 そして、自分と同じなのではないかと思うと同時に、クロンデール王国で令息と結婚を考えていなかったララシャには、サリエストが独身だとしたら、再婚を本気で考えているわけではないが、デートしたり、お茶をしたり出来たらと想像したら心躍るものがあり、離縁していないと聞いて残念に思った。

「では夫婦関係は上手くいっているのですね?」
「え、ええ、勿論ですわ。長く一緒にいるものですから、たまには離れてみるのもいいかと思いまして」

 末永く別居になる予定ではあるが、ファーリンは義母は元気なのだが、亡くなったらサリエストが迎えに来て、何のしがらみのなく一緒に暮らせるなどと、不謹慎なことを思い描いていた。

 ララシャも、同じような考えをしているので、サリエストとはお近づきになりたい気持ちはあるが、妙に納得していた。

「ララシャ様こそ、離縁だなんて驚きましたわ」

 ファーリンは明らかに、嫌味も含めて大袈裟に驚いて見せた。

 ララシャと親しくしていたのは、クロンデール王国の王太子妃になるからであった。それなのに、ピデム王国、しかも第二王子妃になって、何の得にもならなかったとすら思っていた。

 ララシャが王太子妃だったら、自身の娘が王太子妃になることだって、夢ではなかったはずだと何度も考えた。

 だからこそソアリスとは何度か会ったことがある程度だったが、サリエストにララシャを通じて親しくしていたからと話して、ユリウス殿下の婚約者候補にミーチュアを入れては貰ったが、選ばれなかった。

 それでも何て見る目のない王太子殿下だと思った、さらに年上にはなるがマイノス殿下の婚約者でもいいかと思っていたら、知らない内に他国の王女が選ばれた。

 ララシャの周りには、同じような考えを持つ者ばかりだったというわけである。
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