251 / 348
実りのない茶会1
しおりを挟む
ララシャはファーリンに手紙を書き、オードエル公爵邸に送って欲しいとサイラスに願い出ていた。
「オードエル公爵夫人か?」
「ええ、結婚するまでは親しくしていたの」
娘・ミソラがルルエ王太子妃の侍女であることも知らず、ファーリンが離縁こそされていないが、邸を出されて、ミクシワ伯爵邸にいることも、サイラスは妻から聞いており、それならいいかと了承することにした。
サイラスはオードエル公爵邸ではなく、ミクシワ伯爵家に手紙を送った。
ファーリンもララシャのことは聞いていたが、自身もいつになったらサリエストが迎えに来てくれるのかと、同じような思考を持ち、暇を持て余していたので、ミクシワ伯爵家に招待することにした。
ララシャは返事が来て、今度はちゃんとサリエストと話して、心配して貰えるはずだと、喜びを嚙み締めた。めかし込んで出掛けたが、サイラスにも許可を取っていたので、降ろされたのはミクシワ伯爵家であった。
「え?行き先はオードエル公爵邸よ」
「いえ、ファーリン様はミクシワ伯爵邸にいらっしゃいますので、伯爵家へ行くように言われております。二時間後にお迎えに上がりますので、では」
御者はそう言って、さっさと帰ってしまい、ミクシワ伯爵家でも、ファーリンは現ミクシワ伯爵である兄に黙って招待したために、酷く怒られることになり、追い返すわけにもいかないので、二人は茶会をすることになった。
「どうしてオードエル公爵邸ではないの?離縁されたの?」
「いえ、そうではないのです。邸には息子家族と、夫はほとんど領地にいるものですから、私はこちらにおりますの」
「そうだったの…」
ファーリンは生家に追い出されたなどとは言わず、ララシャも仲のいい夫婦なら、一緒に領地に行けばいいのにと思うところだが、娯楽の少ない領地に行きたくなかったのではないかと考えていた。
そして、自分と同じなのではないかと思うと同時に、クロンデール王国で令息と結婚を考えていなかったララシャには、サリエストが独身だとしたら、再婚を本気で考えているわけではないが、デートしたり、お茶をしたり出来たらと想像したら心躍るものがあり、離縁していないと聞いて残念に思った。
「では夫婦関係は上手くいっているのですね?」
「え、ええ、勿論ですわ。長く一緒にいるものですから、たまには離れてみるのもいいかと思いまして」
末永く別居になる予定ではあるが、ファーリンは義母は元気なのだが、亡くなったらサリエストが迎えに来て、何のしがらみのなく一緒に暮らせるなどと、不謹慎なことを思い描いていた。
ララシャも、同じような考えをしているので、サリエストとはお近づきになりたい気持ちはあるが、妙に納得していた。
「ララシャ様こそ、離縁だなんて驚きましたわ」
ファーリンは明らかに、嫌味も含めて大袈裟に驚いて見せた。
ララシャと親しくしていたのは、クロンデール王国の王太子妃になるからであった。それなのに、ピデム王国、しかも第二王子妃になって、何の得にもならなかったとすら思っていた。
ララシャが王太子妃だったら、自身の娘が王太子妃になることだって、夢ではなかったはずだと何度も考えた。
だからこそソアリスとは何度か会ったことがある程度だったが、サリエストにララシャを通じて親しくしていたからと話して、ユリウス殿下の婚約者候補にミーチュアを入れては貰ったが、選ばれなかった。
それでも何て見る目のない王太子殿下だと思った、さらに年上にはなるがマイノス殿下の婚約者でもいいかと思っていたら、知らない内に他国の王女が選ばれた。
ララシャの周りには、同じような考えを持つ者ばかりだったというわけである。
「オードエル公爵夫人か?」
「ええ、結婚するまでは親しくしていたの」
娘・ミソラがルルエ王太子妃の侍女であることも知らず、ファーリンが離縁こそされていないが、邸を出されて、ミクシワ伯爵邸にいることも、サイラスは妻から聞いており、それならいいかと了承することにした。
サイラスはオードエル公爵邸ではなく、ミクシワ伯爵家に手紙を送った。
ファーリンもララシャのことは聞いていたが、自身もいつになったらサリエストが迎えに来てくれるのかと、同じような思考を持ち、暇を持て余していたので、ミクシワ伯爵家に招待することにした。
ララシャは返事が来て、今度はちゃんとサリエストと話して、心配して貰えるはずだと、喜びを嚙み締めた。めかし込んで出掛けたが、サイラスにも許可を取っていたので、降ろされたのはミクシワ伯爵家であった。
「え?行き先はオードエル公爵邸よ」
「いえ、ファーリン様はミクシワ伯爵邸にいらっしゃいますので、伯爵家へ行くように言われております。二時間後にお迎えに上がりますので、では」
御者はそう言って、さっさと帰ってしまい、ミクシワ伯爵家でも、ファーリンは現ミクシワ伯爵である兄に黙って招待したために、酷く怒られることになり、追い返すわけにもいかないので、二人は茶会をすることになった。
「どうしてオードエル公爵邸ではないの?離縁されたの?」
「いえ、そうではないのです。邸には息子家族と、夫はほとんど領地にいるものですから、私はこちらにおりますの」
「そうだったの…」
ファーリンは生家に追い出されたなどとは言わず、ララシャも仲のいい夫婦なら、一緒に領地に行けばいいのにと思うところだが、娯楽の少ない領地に行きたくなかったのではないかと考えていた。
そして、自分と同じなのではないかと思うと同時に、クロンデール王国で令息と結婚を考えていなかったララシャには、サリエストが独身だとしたら、再婚を本気で考えているわけではないが、デートしたり、お茶をしたり出来たらと想像したら心躍るものがあり、離縁していないと聞いて残念に思った。
「では夫婦関係は上手くいっているのですね?」
「え、ええ、勿論ですわ。長く一緒にいるものですから、たまには離れてみるのもいいかと思いまして」
末永く別居になる予定ではあるが、ファーリンは義母は元気なのだが、亡くなったらサリエストが迎えに来て、何のしがらみのなく一緒に暮らせるなどと、不謹慎なことを思い描いていた。
ララシャも、同じような考えをしているので、サリエストとはお近づきになりたい気持ちはあるが、妙に納得していた。
「ララシャ様こそ、離縁だなんて驚きましたわ」
ファーリンは明らかに、嫌味も含めて大袈裟に驚いて見せた。
ララシャと親しくしていたのは、クロンデール王国の王太子妃になるからであった。それなのに、ピデム王国、しかも第二王子妃になって、何の得にもならなかったとすら思っていた。
ララシャが王太子妃だったら、自身の娘が王太子妃になることだって、夢ではなかったはずだと何度も考えた。
だからこそソアリスとは何度か会ったことがある程度だったが、サリエストにララシャを通じて親しくしていたからと話して、ユリウス殿下の婚約者候補にミーチュアを入れては貰ったが、選ばれなかった。
それでも何て見る目のない王太子殿下だと思った、さらに年上にはなるがマイノス殿下の婚約者でもいいかと思っていたら、知らない内に他国の王女が選ばれた。
ララシャの周りには、同じような考えを持つ者ばかりだったというわけである。
3,223
お気に入りに追加
7,625
あなたにおすすめの小説
「だから結婚は君としただろう?」
イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。
黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。
救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。
プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。
それを。
あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。
アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。
…そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。
けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。
「君を愛することはない」
と。
わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
婚約者の断罪
玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。
見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。
しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。
親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。
ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」
ぱさっ。
伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。
「きちんと目は通してもらえましたか?」
「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」
ざわざわ。ざわざわ。
王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。
「──女のカン、というやつでしょうか」
「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」
「素直、とは」
「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」
カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。
「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」
「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」
カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。
「それではどうぞ、お好きになさいませ」
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる