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招かれざる夜会1
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「あなたは何をしているの!友人とお茶すると嘘を付いたの?」
「夜会に参加したかったの…」
ララシャはぐすんと言わんばかりに、得意のおちょぼ口を披露した。
「あなた、まだ自分の立場が分かっていないの?」
「お義姉様、この子は全く理解していないわよ。離縁も不運であっただけで、悲劇のヒロインとでも思っているようよ」
「…申し訳ありません」
マルシャはルーエンヌが苦手であり、今までは義姉であることから、虚勢を張っていたが、ソアリスとのことを知られてからは、常に低姿勢で過ごしている。
「現実を見せるためにも、参加させてもいいわ。息子夫婦にも話してあるから」
「だが」
「いいの?やった」
ララシャは若い娘のように喜んでおり、サイラスにはドレスの色も相まって、痛々しい中年にしか見えなかった。
「ただし、少しでも迷惑行為や、不愉快な思いをさせたら、問答無用で追い出すわ」
「そんなことしないわ」
「そして、お兄様かお義姉様、どちらかが一緒に付いて頂戴」
ルーエンヌは責任のある両親をお目付け役にするつもりだった。これは二人への罰であり、現実を見せるためでもある。
「そんな!それでは相手が話し辛いわ」
「だったら帰りなさい!今日の夜会に来る人間は、あなたに会いに来たわけではないの。滅茶苦茶にされては堪らないわ」
「わ、分かったわ…」
参加しなければ意味がないララシャは、渋々従うしかなかった。
「お兄様、お義姉様、よろしくお願いしますね」
「あっ、ああ…」
「はい…」
既に入場が始まっているので、ララシャを返すとしても目に付いてしまうので、キリスとマルシャも了承するしかなかった。
「大人しくしていなさいよ」
「分かっているわ」
マルシャは楽しめると思ってきたわけではないが、まさかララシャの面倒を看なくてはいけないとは思わず、既に疲れた気持ちになった。
サイラスは両親にちゃんと見張っているように言って、妻のところへ向かった。
会場に入ると、ララシャは久しぶりに華やかで、豪華なジルアス伯爵家に興奮した。ララシャはロアンスラー前公爵夫妻と一緒にいることから、周りは『まさかあれって…』と、肥え太ったララシャに驚いた。
ララシャは若い頃は可愛らしさ持っていた、絶世の美女というわけではなかったが、まさに見る影もないという状態である。
特にバート伯爵家とは違って、参加者は高位貴族ばかりであるために、よく参加が出来るわねと、冷めた目で見つめた。
そして、夜会は始まった。一度はララシャに目をやるが、その後は関わりたくもないと、話題は続くことはなかった。
「お父様、お母様、ちょっと声を知り合いに掛けてきますわ」
「大人しくしていなさいと言ったでしょう」
「クラスメイトがいたのよ」
「だから何?いい加減にしなさい、あなたに話し掛けられても、困るだけよ」
「そんなはずないじゃない」
顔もよく似た、同じ体形の中年と高年の女性が、言い合いをしている。キリスは加齢でさらに痩せているので、しょぼくれて、可哀想な家族の姿にしか見えない。
「もう帰る?一緒にいないと参加させないと言われたでしょう…いいおばさんがいい加減にして頂戴」
「おばさんって、お母様と一緒にしないでよ」
「ではもう挨拶して、帰りましょう。サイラスたちだけ残ればいいわ」
言い合いを続けるわけにはいかないことは、マルシャにも分かった。
「そうだな、そうしよう」
「ま、待ってよ!大人しくしているから。でも話し掛けられたら、話してもいいでしょう?」
「ああ、話し掛けられたらな」
それからキリスとマルシャとララシャは、軽食を摘まみながら、お酒を飲んでいたが、誰も近付いて来る者はいない。ロアンスラー公爵とお近づきになりたいのなら、サイラスに話し掛ければいい。
「夜会に参加したかったの…」
ララシャはぐすんと言わんばかりに、得意のおちょぼ口を披露した。
「あなた、まだ自分の立場が分かっていないの?」
「お義姉様、この子は全く理解していないわよ。離縁も不運であっただけで、悲劇のヒロインとでも思っているようよ」
「…申し訳ありません」
マルシャはルーエンヌが苦手であり、今までは義姉であることから、虚勢を張っていたが、ソアリスとのことを知られてからは、常に低姿勢で過ごしている。
「現実を見せるためにも、参加させてもいいわ。息子夫婦にも話してあるから」
「だが」
「いいの?やった」
ララシャは若い娘のように喜んでおり、サイラスにはドレスの色も相まって、痛々しい中年にしか見えなかった。
「ただし、少しでも迷惑行為や、不愉快な思いをさせたら、問答無用で追い出すわ」
「そんなことしないわ」
「そして、お兄様かお義姉様、どちらかが一緒に付いて頂戴」
ルーエンヌは責任のある両親をお目付け役にするつもりだった。これは二人への罰であり、現実を見せるためでもある。
「そんな!それでは相手が話し辛いわ」
「だったら帰りなさい!今日の夜会に来る人間は、あなたに会いに来たわけではないの。滅茶苦茶にされては堪らないわ」
「わ、分かったわ…」
参加しなければ意味がないララシャは、渋々従うしかなかった。
「お兄様、お義姉様、よろしくお願いしますね」
「あっ、ああ…」
「はい…」
既に入場が始まっているので、ララシャを返すとしても目に付いてしまうので、キリスとマルシャも了承するしかなかった。
「大人しくしていなさいよ」
「分かっているわ」
マルシャは楽しめると思ってきたわけではないが、まさかララシャの面倒を看なくてはいけないとは思わず、既に疲れた気持ちになった。
サイラスは両親にちゃんと見張っているように言って、妻のところへ向かった。
会場に入ると、ララシャは久しぶりに華やかで、豪華なジルアス伯爵家に興奮した。ララシャはロアンスラー前公爵夫妻と一緒にいることから、周りは『まさかあれって…』と、肥え太ったララシャに驚いた。
ララシャは若い頃は可愛らしさ持っていた、絶世の美女というわけではなかったが、まさに見る影もないという状態である。
特にバート伯爵家とは違って、参加者は高位貴族ばかりであるために、よく参加が出来るわねと、冷めた目で見つめた。
そして、夜会は始まった。一度はララシャに目をやるが、その後は関わりたくもないと、話題は続くことはなかった。
「お父様、お母様、ちょっと声を知り合いに掛けてきますわ」
「大人しくしていなさいと言ったでしょう」
「クラスメイトがいたのよ」
「だから何?いい加減にしなさい、あなたに話し掛けられても、困るだけよ」
「そんなはずないじゃない」
顔もよく似た、同じ体形の中年と高年の女性が、言い合いをしている。キリスは加齢でさらに痩せているので、しょぼくれて、可哀想な家族の姿にしか見えない。
「もう帰る?一緒にいないと参加させないと言われたでしょう…いいおばさんがいい加減にして頂戴」
「おばさんって、お母様と一緒にしないでよ」
「ではもう挨拶して、帰りましょう。サイラスたちだけ残ればいいわ」
言い合いを続けるわけにはいかないことは、マルシャにも分かった。
「そうだな、そうしよう」
「ま、待ってよ!大人しくしているから。でも話し掛けられたら、話してもいいでしょう?」
「ああ、話し掛けられたらな」
それからキリスとマルシャとララシャは、軽食を摘まみながら、お酒を飲んでいたが、誰も近付いて来る者はいない。ロアンスラー公爵とお近づきになりたいのなら、サイラスに話し掛ければいい。
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