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似たもの母娘3
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「ソアリス様、どういうことですか?」
「カンバス・デラウェースに、聞いたことがあったのを思い出したのよ」
ファシリアは小さな声で、お祖父様と呟いた。
カンバス・デラウェースは、現在はファシリアの兄が継いでいるが、デラウェース前々伯爵にあたり、ファシリアの祖父である。
「妹がアローク様の弟、サイート様にとても迷惑を掛けてしまったとおっしゃっていたのよ。それでもサイート様は、家族を責めることはなかったと」
アロークは前々国王陛下で、ソアリスの叱咤を受けた祖父である。サイート王弟は辺境伯に婿養子に行き、病気で40代で亡くなっている。
「どのような迷惑ですか?」
「ポーリアもよく知っているバート伯爵夫人がアプダード侯爵に、行ったようなことをしていたそうなの。手紙を書くインクに血を混ぜたりとか、クッキーに爪を混ぜるとか、自分の汗で作った塩を混ぜるとか、気が狂っているでしょう?」
皆の鳥肌と嘔気と共に、ファシリアの頭部はどんどん下がり、だが、あの本の持ち主だと思った。
「それでサイート様は、王族だから、食べなかったそうなんだけど、話を聞いただけで、食事が怖くなって、アプダード侯爵のように吐くようになったそうなの。無理もないわよね」
ファシリアは真っ青を通り越して、真っ白になっている。
「父も言っていました、見るだけで嘔気がしたと」
「カンバス様は足を折ってでも、外に出さないようにすべきだったとまでおっしゃっていて、だから出来る限り王家のためにと、長く当主を務めてらしたの」
恨まれるのは息子ではなく、私であるべきだと、早々に当主を譲る者が多い中、当主であり続けた。
「それで引退される時に、お話を聞いたの」
「そうだったのですか…」
「私は、私は、そんなことをしていないわ!」
「メオリール!」
メオリールは一緒にされたくないと叫んだが、バート伯爵に怒鳴り付けられた。
「夢中と言えば、一途で良いように聞こえるけど、自分を見失うほどに、マナーもそっちのけで、一方的に執着するんですって。あなたと同じじゃない」
「でもそれは、話し掛けないと、話して貰えないからで」
「では、あなたは自分が話したいからという理由で、身分も国もマナーも関係なく、話をしていいと思っているのね?」
「はい、その方が平等でいいではありませんか」
自信満々にメオリールは答えた。
「では明日から、下位貴族や平民に、おいお前と話し掛けられても、真摯に対応が出来るのね?」
「そ、それは…」
「それは出来ない?はあ…どこかの誰かと同じね、量産するのかしら…」
年齢は一つ違うが、ミリンティーと同じような考えを持ち、婚約者がいないこともそっくりである。
「レヴィアも本人に拒絶されて、家族からも迷惑だと何度も説明をしても、都合のいいように解釈を変えて、駄目だったそうよ。まるで同じじゃない?」
ソアリスは酷く冷たい目つきで、ファシリアとメオリールを捉えた。
「レヴィア、ファシリア、メオリール。だから誰かのせいではなく、デラウェース伯爵家に一定数、現れるのではないかと言ったの」
レヴィアは、カンバスの妹である。
「カンバス様が生きてらして、バート伯爵夫人のしたことを知ったら、足を折ったかもしれないわね」
「っつ!」
ファシリアの愚行の前に、カンバスは亡くなっており、ファシリアの行いは知らないままである。父親が苦しんでいたことを知っていたファシリアの父は、ファシリアを心の底から嫌悪した。
「ポーリア、私が聞いてもいいかしら?」
「はい、お願いします」
「ねえ、バート伯爵夫人。どうして、そのようなことをしたの?」
「それは…」
今となっては後悔していることだが、どうしてかという明確な説明は出来ない。
「カンバス・デラウェースに、聞いたことがあったのを思い出したのよ」
ファシリアは小さな声で、お祖父様と呟いた。
カンバス・デラウェースは、現在はファシリアの兄が継いでいるが、デラウェース前々伯爵にあたり、ファシリアの祖父である。
「妹がアローク様の弟、サイート様にとても迷惑を掛けてしまったとおっしゃっていたのよ。それでもサイート様は、家族を責めることはなかったと」
アロークは前々国王陛下で、ソアリスの叱咤を受けた祖父である。サイート王弟は辺境伯に婿養子に行き、病気で40代で亡くなっている。
「どのような迷惑ですか?」
「ポーリアもよく知っているバート伯爵夫人がアプダード侯爵に、行ったようなことをしていたそうなの。手紙を書くインクに血を混ぜたりとか、クッキーに爪を混ぜるとか、自分の汗で作った塩を混ぜるとか、気が狂っているでしょう?」
皆の鳥肌と嘔気と共に、ファシリアの頭部はどんどん下がり、だが、あの本の持ち主だと思った。
「それでサイート様は、王族だから、食べなかったそうなんだけど、話を聞いただけで、食事が怖くなって、アプダード侯爵のように吐くようになったそうなの。無理もないわよね」
ファシリアは真っ青を通り越して、真っ白になっている。
「父も言っていました、見るだけで嘔気がしたと」
「カンバス様は足を折ってでも、外に出さないようにすべきだったとまでおっしゃっていて、だから出来る限り王家のためにと、長く当主を務めてらしたの」
恨まれるのは息子ではなく、私であるべきだと、早々に当主を譲る者が多い中、当主であり続けた。
「それで引退される時に、お話を聞いたの」
「そうだったのですか…」
「私は、私は、そんなことをしていないわ!」
「メオリール!」
メオリールは一緒にされたくないと叫んだが、バート伯爵に怒鳴り付けられた。
「夢中と言えば、一途で良いように聞こえるけど、自分を見失うほどに、マナーもそっちのけで、一方的に執着するんですって。あなたと同じじゃない」
「でもそれは、話し掛けないと、話して貰えないからで」
「では、あなたは自分が話したいからという理由で、身分も国もマナーも関係なく、話をしていいと思っているのね?」
「はい、その方が平等でいいではありませんか」
自信満々にメオリールは答えた。
「では明日から、下位貴族や平民に、おいお前と話し掛けられても、真摯に対応が出来るのね?」
「そ、それは…」
「それは出来ない?はあ…どこかの誰かと同じね、量産するのかしら…」
年齢は一つ違うが、ミリンティーと同じような考えを持ち、婚約者がいないこともそっくりである。
「レヴィアも本人に拒絶されて、家族からも迷惑だと何度も説明をしても、都合のいいように解釈を変えて、駄目だったそうよ。まるで同じじゃない?」
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「はい、お願いします」
「ねえ、バート伯爵夫人。どうして、そのようなことをしたの?」
「それは…」
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