私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
225 / 350

黒歴史1

しおりを挟む
 バート伯爵とファシリアの娘であるメオリールは、またアプダード侯爵令息に、縁談を申し込んで欲しいとファシリアに言い出した。

 断られた理由がただお断りするというものだったが、ファシリアとメオリールが今はまだ決めないということだろうと、何度か申し込むことになっていた。

 まさか関わりたくないと思っていたのなら、迷惑だっただろう。

 ポーリアにあれだけ言われたファシリアも、さすがにメオリールの要求を了承することは出来ずに、今はどうかしらと誤魔化すしかなかった。

 ファシリアの煮え切らない態度に、メオリールは父に頼むことにした。バート伯爵は、諦めさせるために事情を話すことにした。

 勿論、ファシリアの生家であるデラウェース伯爵家に確認を取り、謝罪と共に事実だと認めている。

 ファシリアのしたことを告げると、メオリールは半狂乱になった。

「何よそれ!お母様のせいじゃない!」
「だから、縁談の申し込みは二度と出来ない。一度断られているのに、何度も申し込む方がおかしかったんだ。もう諦めなさい」
「お母様と私は違うわ!関係ないじゃない」

 納得の出来ないメオリールは、首を振って、嫌だ嫌だと子どものようだ。

「落ち着きなさい」
「嫌よ…そんなの」
「嫁ぐ形になるのだから、ファシリアが関わらないならと言って貰えるならいいが、そのような関係でもないのだろう?」

 ファシリアの兄となる息子は前妻との子どもで嫡男である、メオリールはファシリアの子どもで、自ずと嫁に行くしかない。

「話もして貰えないんだもの!それがお母様のせいだったなんて…」
「潔く諦めなさい」
「どうにかならないの!」
「ならないさ、過去に戻ってなかったことになんて出来ないだろう?」

 なかったことにはならないから、アプダード侯爵は今でも嫌悪している。若気の至りなんて話ではない、恐い話である。

「どうにかしてよ!」
「余計なことをすれば、嫌われていくだけだ。大人しくしていた方がいい」

 最悪の印象を植え付けている以上、これ以上、嫌われないことくらいしか出来ることはない。

「嫌よ!彼と結婚するって決まっているの!お父様、お母様と離縁にして、もう関係ないって言ってよ!」
「はあ…」

 確かに離縁は頭を過ったが、もしも結婚してもいいという意思があるのであれば、あちらからファシリアとの関係は切らせてもらうなどと、言うことも出来たはずだ。それもないということは、その程度の存在だということだろう。

「そうしたところで、あちらが了承するとは限らない」
「そんなことないわ、関係ないと分かったら受けてくれるはずよ」

 あちらは侯爵家で、しかもまだ17歳である。一体どんな自信がどこにあるのか分からないが、話し方を間違えたのかもしれないと後悔していた。

「何度も縁談を申し込んだことも、不愉快に思ってらっしゃる。メオリールも望んだことだろう?」
「それは、まだお決めになっていないから…アプローチしてもいいじゃない。一度断られたからって、諦められないもの…」

 ある意味、ファシリアの血筋というところだろう。

「ファシリアの二の舞になりたいか?」
「え?」
「これ以上、押し進めても、ファシリアと同じだと言われるだけだぞ?」
「それは、嫌よ…」
「では、諦めなさい。それがお前のためでもある」

 アプダード侯爵令息ではない相手にはなるが、結婚するためにも、これ以上イメージを悪くするわけにはいかない。今ならば、ファシリアのせいということに出来る。

「これ以上、余計なことをすれば、あちらから正式に苦情が入ることになるだろう。そんなことにはなりたくないだろう?」
「それはそうだけど、このままなんて…」
「正式に苦情が入ったら、庇えない…だから諦めなさい」

 メオリールは納得が出来ないまま、絶望して部屋に戻るしかなかった。ファシリアにも伝えたことが知らされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後妻を迎えた家の侯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
 私はイリス=レイバン、侯爵令嬢で現在22歳よ。お父様と亡くなったお母様との間にはお兄様と私、二人の子供がいる。そんな生活の中、一か月前にお父様の再婚話を聞かされた。  もう私もいい年だし、婚約者も決まっている身。それぐらいならと思って、お兄様と二人で了承したのだけれど……。  やってきたのは、ケイト=エルマン子爵令嬢。御年16歳! 昔からプレイボーイと言われたお父様でも、流石にこれは…。 『家出した伯爵令嬢』で序盤と終盤に登場する令嬢を描いた外伝的作品です。本編には出ない人物で一部設定を使い回した話ですが、独立したお話です。 完結済み!

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

公爵令嬢の立場を捨てたお姫様

羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ 舞踏会 お茶会 正妃になるための勉強 …何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる! 王子なんか知りませんわ! 田舎でのんびり暮らします!

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

【完結】殿下の本命は誰なのですか?

紫崎 藍華
恋愛
ローランド王子からリリアンを婚約者にすると告げられ婚約破棄されたクレア。 王命により決められた婚約なので勝手に破棄されたことを報告しなければならないのだが、そのときリリアンが倒れてしまった。 予想外の事態に正式な婚約破棄の手続きは後回しにされ、クレアは曖昧な立場のままローランド王子に振り回されることになる。

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです

天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。 魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。 薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。 それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

処理中です...