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陰湿夫人1
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状況が分からないバート伯爵は、ポーリアに訊ねた。
「私の兄に言い寄って、断ったにもかかわらず、体液を練り込んだ食べ物、髪の毛を刺繍したハンカチを渡されましたの」
兄は現在はアプダード侯爵となっており、以前、ポーリアが話していたのが、ララシャのグループのファシリアであった。
「兄があなたを嫌うのも無理もないでしょう?」
「わ、私はそんなこと…」
「していないとでも言うの?証拠を持って、厳重注意したわよね?」
ファシリアの生家のデラウェース伯爵家に、父が怒鳴り込んだはずだ。
「そのような方の娘と縁を繋げば、あなたとも繋ぐことになるのに、受けるはずがないでしょう。今日はそれをお伝えしたかったの」
「申し訳ございませんでした、二度と縁談を送ることはありません」
「あなた…」
「黙れっ!!」
バート伯爵も縁談を申し込んだのは知っているが、まさかそのような過去があったとは知らなかった。
「そうしてください、今日は失礼しますわね」
ポーリアは今日の目的は達成したので、帰ることにした。
問題になったのは、残されたファシリアの方である。夜会が終わるまでは何とか取り繕ったが、バート伯爵はファシリアのしたことに呆れるしかなかった。
「王妃陛下とは何のことだ?」
「それは…」
「ハッキリ言いなさい」
「違うの、ララシャ様が調子に乗っているようだったから、ちょっと躍らせてみようというか…」
「そんなことを考えたのか?」
ラーバ伯爵夫人が言った通りではないかと、バート伯爵は思わざる得なかった。
「だって、あの方はずっと私を馬鹿にして、だから離縁されて、もっと弁えた方がいいと思って」
ララシャは直接は言わないが、婚約者のいないファシリアを下に見ていた。公爵令嬢と伯爵令嬢となれば、自然なことではあるが、ファシリアには納得いかなかった。
大したことがないくせに、公爵令嬢だからって、生まれた場所で王太子殿下の婚約者になれただけだろう。
それなのに、ピデム王国の第二王子に嫁いで行き、腹立たしい気持ちはありながら、仲良くしてあげていたのは、恩恵があるからだと思っていたのに。
「そもそも、なぜ呼んだんだ…」
バート伯爵はララシャを呼ぶことは、事後報告であった。
「可哀想だったから」
「彼女は元々、評判が良くなかった」
「え?」
「君たちは近くに居て、話が入ってこなかったのかもしれないが、王太子殿下の婚約者だった時代から、大丈夫なのかと思われていた」
バート伯爵はファシリアよりも、七つ年上で、ファシリアは後妻であった。
上の世代は近い者よりも、冷静にララシャを判断していた。
「君が親しいと聞いて、まあピデム王国に嫁いだから、関わりがないからいいと思っていたが…」
「評判って…」
「王太子妃教育が進んでいない、共通語が出来ないなどだな。生まれた時から決められた縁談だったから、驕りがあったのかもしれないな」
「ははっ、そうなの?媚びを売る必要もなかったんじゃない」
「笑っている場合か!」
ファシリアはざまあみろと思ったが、今の状況が変わるわけではない。
「でも王妃陛下を貶めるようなことは言っていないわ」
「君がいくら嘘を付いても、ラーバ伯爵夫人が報告されるだろう」
ファシリアはどうララシャを貶めるかを中心に考えており、それを王妃陛下が聞いたら、どう思うかなどと考えて話してはおらず、自覚がなかった。
それはララシャが第二王子殿下に嫁ぐとなり、王太子殿下の婚約者が空くことになった。高位貴族はほとんど婚約者がおり、婚約者がいない者は限られていた。
ファシリアはその中に含まれていると思っていた。ララシャより勉強も出来て、伯爵家から王家に嫁ぐということも、ないことではなかった。
もしかしたらと、希望を持ってしまった。
「私の兄に言い寄って、断ったにもかかわらず、体液を練り込んだ食べ物、髪の毛を刺繍したハンカチを渡されましたの」
兄は現在はアプダード侯爵となっており、以前、ポーリアが話していたのが、ララシャのグループのファシリアであった。
「兄があなたを嫌うのも無理もないでしょう?」
「わ、私はそんなこと…」
「していないとでも言うの?証拠を持って、厳重注意したわよね?」
ファシリアの生家のデラウェース伯爵家に、父が怒鳴り込んだはずだ。
「そのような方の娘と縁を繋げば、あなたとも繋ぐことになるのに、受けるはずがないでしょう。今日はそれをお伝えしたかったの」
「申し訳ございませんでした、二度と縁談を送ることはありません」
「あなた…」
「黙れっ!!」
バート伯爵も縁談を申し込んだのは知っているが、まさかそのような過去があったとは知らなかった。
「そうしてください、今日は失礼しますわね」
ポーリアは今日の目的は達成したので、帰ることにした。
問題になったのは、残されたファシリアの方である。夜会が終わるまでは何とか取り繕ったが、バート伯爵はファシリアのしたことに呆れるしかなかった。
「王妃陛下とは何のことだ?」
「それは…」
「ハッキリ言いなさい」
「違うの、ララシャ様が調子に乗っているようだったから、ちょっと躍らせてみようというか…」
「そんなことを考えたのか?」
ラーバ伯爵夫人が言った通りではないかと、バート伯爵は思わざる得なかった。
「だって、あの方はずっと私を馬鹿にして、だから離縁されて、もっと弁えた方がいいと思って」
ララシャは直接は言わないが、婚約者のいないファシリアを下に見ていた。公爵令嬢と伯爵令嬢となれば、自然なことではあるが、ファシリアには納得いかなかった。
大したことがないくせに、公爵令嬢だからって、生まれた場所で王太子殿下の婚約者になれただけだろう。
それなのに、ピデム王国の第二王子に嫁いで行き、腹立たしい気持ちはありながら、仲良くしてあげていたのは、恩恵があるからだと思っていたのに。
「そもそも、なぜ呼んだんだ…」
バート伯爵はララシャを呼ぶことは、事後報告であった。
「可哀想だったから」
「彼女は元々、評判が良くなかった」
「え?」
「君たちは近くに居て、話が入ってこなかったのかもしれないが、王太子殿下の婚約者だった時代から、大丈夫なのかと思われていた」
バート伯爵はファシリアよりも、七つ年上で、ファシリアは後妻であった。
上の世代は近い者よりも、冷静にララシャを判断していた。
「君が親しいと聞いて、まあピデム王国に嫁いだから、関わりがないからいいと思っていたが…」
「評判って…」
「王太子妃教育が進んでいない、共通語が出来ないなどだな。生まれた時から決められた縁談だったから、驕りがあったのかもしれないな」
「ははっ、そうなの?媚びを売る必要もなかったんじゃない」
「笑っている場合か!」
ファシリアはざまあみろと思ったが、今の状況が変わるわけではない。
「でも王妃陛下を貶めるようなことは言っていないわ」
「君がいくら嘘を付いても、ラーバ伯爵夫人が報告されるだろう」
ファシリアはどうララシャを貶めるかを中心に考えており、それを王妃陛下が聞いたら、どう思うかなどと考えて話してはおらず、自覚がなかった。
それはララシャが第二王子殿下に嫁ぐとなり、王太子殿下の婚約者が空くことになった。高位貴族はほとんど婚約者がおり、婚約者がいない者は限られていた。
ファシリアはその中に含まれていると思っていた。ララシャより勉強も出来て、伯爵家から王家に嫁ぐということも、ないことではなかった。
もしかしたらと、希望を持ってしまった。
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