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対面
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王宮ではアリルの出産に沸き、皆が時間を見付けてはお祝いに訪れていた。
勿論、ケイトも1歳ではあるが、ソアリスとカイルスと共に、叔母として向かった。リズには予め、食べ物は隠しておくようにと言われていた。
「カイルス、ケイトよく来てくれたわね」
「お姉様、お疲れさまでした。おめでとうございます」
「おめでとう、ごじゃいます」
「ありがとう、可愛い弟と妹に祝われて、嬉しいわ。オルファーに会ってあげて」
アリルは初めての育児に疲弊しながらも、夫も義両親も率先して参加して、乳母もいるので、何とかやっていた。だがルルエとエクシアーヌのぐったり具合を、ようやく理解したところであった。
同時にソアリスの化け物に関しては、見る目を加速させていた。
そして、ソアリスと共にカイルスとケイトはベビーバスケットで、もぞもぞしている甥と初対面した。
「カイルス、ケイト。こちらはオルファー・バーセム。アリルお姉様とルーファお義兄様の息子よ、あなたたちの甥っ子。自分より小さな子には優しくですよ」
ソアリスはきっちりと説明し、バーセム公爵家の面々は、カイルスはともかく、ケイトにはさすがに難し過ぎるだろうと思っていた。
「初めまして、オルファー。小さいなぁ、抱っこしてもいいですか?」
「してあげて」
「カイルス、ケイトより優しくね」
「はい」
早くに首の座ったケイトは扱いが少々雑になっていた。それでも、カイルスは慣れた手つきで、オルファーを抱き上げた。
「すっかりカイルスも、扱いが上手ね」
「私より上手いよ」
ルーファはその姿にしょんぼりしたが、まだ父親になって時間が経っていない。それよりも、一年以上ケイトの面倒を看ているカイルスの方が先輩である。
「お母様の言う通り、立派な面構えですね」
目力の強い、堀の深い顔立ちである。
「でしょう?将来有望よ」
カイルスの目標は、ソアリスの憧れのミオト・バーセムであるが、精悍なアンセムにそっくりなカイルスには、なかなか厳しい道となっている。
カイルスはソファに座って、ケイトにオルファーを見せた。
「おるふぁー」
「そう、オルファーよ、いい男になるわよ」
ソアリスの押しがとても強い。
「ありるおねえしゃまと、るーふぁのこども。けいとのおいっこ」
「ルーファお義兄様ね」
「るーふぁおにいしゃま」
ルーファはその言葉に、可愛いと言いながら、胸をぐっと押さえている。
「そう、分かった?」
「うん、まかせて」
「本当にしっかり喋るのね」
アリルも話だけは聞いていたが、話し始めてから、会っていなかったので、目にするのは初めてであった。
「ベラベラとね。ケイト、リズ夫人は分かる?」
今日はミオトは仕事で、リファラは学園、リズとアリルとルーファだけである。
「リズ・バーセムです」
「うん、わかる。おかあしゃまのゆうじんで、れもんのまどれーぬ」
その言葉にリズは、素直に驚いた。
「まあ、そこまで理解が出来ているの?」
「そうみたいね。この前、貰ったのを一つだけあげたのよ」
「おいちかった、ありがとう」
ケイトはリズに向かって、にこっと微笑みの爆弾を放り投げた瞬間だった。
「あああ!これはあげちゃうわね、すぐさま用意してと言いそうになったわ」
リズは実は可愛いらしいものに弱い。おかげで頭を抱えてしまっている。
「ソアリスの表情だし、話し方も似ているのに、いえ、似ているから世話したい気持ちが沸くのかしら…どっち?」
「リズ夫人、おそらく後者だと思います」
答えを出したのはカイルスであった。すっかり小さな王女様に、せこせこと世話を焼いているのは、ソアリスに似ているせいだと思っている。
「やはりそうでしょうか」
「私はそう思っています」
二人はしっかりと頷きあった。
「おやつ、ほちいなぁ」
二人の間にひょっこり顔を覗かせたケイトが、首を傾けながら言い、リズの限界に達して、おやつが用意されたのは言うまでもない。
勿論、ケイトも1歳ではあるが、ソアリスとカイルスと共に、叔母として向かった。リズには予め、食べ物は隠しておくようにと言われていた。
「カイルス、ケイトよく来てくれたわね」
「お姉様、お疲れさまでした。おめでとうございます」
「おめでとう、ごじゃいます」
「ありがとう、可愛い弟と妹に祝われて、嬉しいわ。オルファーに会ってあげて」
アリルは初めての育児に疲弊しながらも、夫も義両親も率先して参加して、乳母もいるので、何とかやっていた。だがルルエとエクシアーヌのぐったり具合を、ようやく理解したところであった。
同時にソアリスの化け物に関しては、見る目を加速させていた。
そして、ソアリスと共にカイルスとケイトはベビーバスケットで、もぞもぞしている甥と初対面した。
「カイルス、ケイト。こちらはオルファー・バーセム。アリルお姉様とルーファお義兄様の息子よ、あなたたちの甥っ子。自分より小さな子には優しくですよ」
ソアリスはきっちりと説明し、バーセム公爵家の面々は、カイルスはともかく、ケイトにはさすがに難し過ぎるだろうと思っていた。
「初めまして、オルファー。小さいなぁ、抱っこしてもいいですか?」
「してあげて」
「カイルス、ケイトより優しくね」
「はい」
早くに首の座ったケイトは扱いが少々雑になっていた。それでも、カイルスは慣れた手つきで、オルファーを抱き上げた。
「すっかりカイルスも、扱いが上手ね」
「私より上手いよ」
ルーファはその姿にしょんぼりしたが、まだ父親になって時間が経っていない。それよりも、一年以上ケイトの面倒を看ているカイルスの方が先輩である。
「お母様の言う通り、立派な面構えですね」
目力の強い、堀の深い顔立ちである。
「でしょう?将来有望よ」
カイルスの目標は、ソアリスの憧れのミオト・バーセムであるが、精悍なアンセムにそっくりなカイルスには、なかなか厳しい道となっている。
カイルスはソファに座って、ケイトにオルファーを見せた。
「おるふぁー」
「そう、オルファーよ、いい男になるわよ」
ソアリスの押しがとても強い。
「ありるおねえしゃまと、るーふぁのこども。けいとのおいっこ」
「ルーファお義兄様ね」
「るーふぁおにいしゃま」
ルーファはその言葉に、可愛いと言いながら、胸をぐっと押さえている。
「そう、分かった?」
「うん、まかせて」
「本当にしっかり喋るのね」
アリルも話だけは聞いていたが、話し始めてから、会っていなかったので、目にするのは初めてであった。
「ベラベラとね。ケイト、リズ夫人は分かる?」
今日はミオトは仕事で、リファラは学園、リズとアリルとルーファだけである。
「リズ・バーセムです」
「うん、わかる。おかあしゃまのゆうじんで、れもんのまどれーぬ」
その言葉にリズは、素直に驚いた。
「まあ、そこまで理解が出来ているの?」
「そうみたいね。この前、貰ったのを一つだけあげたのよ」
「おいちかった、ありがとう」
ケイトはリズに向かって、にこっと微笑みの爆弾を放り投げた瞬間だった。
「あああ!これはあげちゃうわね、すぐさま用意してと言いそうになったわ」
リズは実は可愛いらしいものに弱い。おかげで頭を抱えてしまっている。
「ソアリスの表情だし、話し方も似ているのに、いえ、似ているから世話したい気持ちが沸くのかしら…どっち?」
「リズ夫人、おそらく後者だと思います」
答えを出したのはカイルスであった。すっかり小さな王女様に、せこせこと世話を焼いているのは、ソアリスに似ているせいだと思っている。
「やはりそうでしょうか」
「私はそう思っています」
二人はしっかりと頷きあった。
「おやつ、ほちいなぁ」
二人の間にひょっこり顔を覗かせたケイトが、首を傾けながら言い、リズの限界に達して、おやつが用意されたのは言うまでもない。
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